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大阪大学外国語学部にはどんな人が進学するのか

はじめに


前回、「大阪大学外国語学部という選択肢」という記事を書きました。


今回はそちらの続きです。

ターゲット


4月から大阪大学に入学する人、大阪大学を志望している高3生、浪人生など。

予備知識:メジャー語とマイナー語


学部内には25専攻あります。

中国語・朝鮮語・モンゴル語・インドネシア語・フィリピン語
タイ語・ベトナム語・ビルマ語・ヒンディー語・ウルドゥー語
アラビア語・ペルシャ語・トルコ語・スワヒリ語・ロシア語
ハンガリー語・デンマーク語・スウェーデン語・ドイツ語
英語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語
日本語(特殊な専攻につき説明は省略)

これらの言語は、なかばスラングのような形で「メジャー語」、「マイナー語」として区分され、学生に語られることがあります。
後で私も使用するので、この言葉の定義と簡単な説明をしておきます。

明確な定義はありませんが、おおまかにメジャー語としては以下があげられます。

中国語・アラビア語・ロシア語
ドイツ語・英語・フランス語
イタリア語・スペイン語・ポルトガル語


おおよその言語の特徴としては以下のようになると思います。

1.話者人口が多い
2.
話される国・地域も広範である
3.話される国・地域の国際的プレゼンスが高い
4.言語の学術的価値が高い

上記の理由から言語の国際的プレゼンスが高く、学内偏差値も概して高い

2については、宗主国による植民地支配が主な要因ですね。
4については、特定分野の学問がその言語の著作・話者集団によって確立・発展した歴史があることを指します。

マイナー語はおおまかに以下。

モンゴル語・インドネシア語・フィリピン語
タイ語・ベトナム語・ビルマ語
ヒンディー語・ウルドゥー語
ペルシャ語・トルコ語・スワヒリ語


マイナー語の定義は「メジャー語でないこと」(メジャー語に定義される要件を満たさないこと)だと思っています。

なお、朝鮮語・ハンガリー語・デンマーク語・スウェーデン語については個人的にどちらとも言えない言語です(笑)

どんな人が進学するのか


1.4年間かけて外国語をきっちりやりたい人
いわゆる第一志望として入学してくるというパターン。
ただし、専攻言語によるが、このように進学してくる人は肌感覚として多くない。

英語や中国語のように、すでに学校教育で習った身近な言語や、近年国際的プレゼンスが拡大している国の言語は例外として
大半の専攻言語については、そもそも高校卒業(あるいは浪人)段階で興味・関心を抱くような糸口が皆無に等しいためですね。簡単に言うと、18歳である「わたし」と「スペイン語」あるいは「ウルドゥー語」や「スワヒリ語」に何の接点があるのか?ということに帰結します。普通ないんです。

それでもその専攻には募集枠があり入試がある。その結果として、大半の外国語学部入学者は何かしらのすべり止めや、「大阪大学」というブランド欲しさによってこの学部にやってくることが多いです。(後述します)

なお、東日本出身で言語をきっちりやりたい人は、ここではなく東京外国語大学に行く印象。
(大阪大学外国語学部は2008年に大阪大学が旧大阪外国語大学を吸収することで創設。ということで東京外大とはもともと姉妹のような存在)
なお東京外大においては、言語文化学部という外国語学部ににた学部のみならず、国際社会学部という社会学寄りの学部もあります。

しかし大阪大学の方が就活における学歴上のイメージが良いので、
最近では東日本出身者も増えているそうです。

まだ大阪大学で後期入試があった時期(2017年度に廃止)には
前期は東京外大、後期は外国語学部志望なんて人も一定数いました。

2.大阪大学(他学部)志望者(すべり止めとして)
一番多いです。

前回の記事で紹介している通り、外国語学部は同大学の文系学部よりも平均して4-5ほど偏差値が低いです。

このため、入試の最終目標が「阪大に合格すること」であり、かつセンター試験点数などで第一志望の厳しい場合、例として以下のような選択を取ります。

第一志望:法学部
受験学部:外国語学部ドイツ語(外国語学部だか難易度高めの専攻)

言語の選択としてはメジャー語を選択するパターンが多いです。

また、絶対に浪人を避けたい場合には、例として以下のような選択をします。

第一志望:人間科学部
受験学部:外国語学部ベトナム語(外国語学部で難易度低めの専攻)


言語の選択としてはマイナー語を選択するパターンが多いです。

3.京都大学志望者(絶対落ちないすべり止めとして)
前提として、大阪大学は文理や学部を問わず、京都大学のすべり止めによく使われます。地域や入試問題のタイプが近いため。

このため、人数こそ多くありませんが「死んでも浪人できない」京大志望者はセンター試験後にこちらの受験に変更することもあります。
偏差値は7~9ほど違います。よほど実力を客観視できていない場合を除けば、外国語学部には大抵の専攻にすんなり入学することが多いです。

なお、大学1年の春から夏にかけて「俺は京大が第一志望だった。なんで今こんな言語の勉強をしているのか分からない」のようなことを言ってしまい、
第一志望として入学してきた同期の反感を買うのも彼らです(笑)

4.大阪大学というネームバリューが欲しい人
いいか悪いかは別にして割と多いです。特にマイナー語に顕著。

志望度はほぼ皆無で、とにかく最小限のリスクで阪大に入学するのが目的。
わざわざリスクをつかむ理由もないため、志望先はマイナー語の中から選ぶ。

実際のところ、大阪大学に入学してしまえば
どこの学部だろうがどの言語専攻だろうが「阪大生(はんだいせい)」だし、大学3年以降から本格化する就職活動においても上位大学としての扱いを受け、エントリーシート段階で落とされることはほぼありません。

そうした利点をすでに理解しているという意味では、情報を集めるリテラシーや戦略的思考、コストパフォーマンス意識はかなり高く、クレバーだと思います。

ある種の好感も抱けるんですが、実際に話すとあまり思考力や教養や自分の考えを持っている人が多くはなく、個人的には嫌いな部類です(笑)


おまけ:メジャー/マイナーという区分

21世紀はアジアの時代です。

特定の言語へのこだわりがなく、かつ卒業後はサラリーマンとして働くことを前提とすれば、
偏差値の高さや言語の雰囲気だけで「メジャー語」である欧州言語を選ぶよりは「マイナー語」と揶揄されるアジア言語を専攻する方が
国内における希少価値や就職後のリターンがはるかに高いと考えます。

例えば、経済的発展による今後の国際プレゼンスの増加という観点で考えると、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)という言葉は有名ですが、他にもVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)やネクスト11(ベトナム、韓国、インドネシア、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、イラン、エジプト、トルコ、ナイジェリア、メキシコ)という言葉もあります。
ぶっちゃけマイナー語の方が需要があると思うんです。特にこれを見る限り、ベトナム・インドネシア・トルコあたりは国際的に伸びる確率が高いですよね。

前述しましたが、普通に学校教育を受けているだけでは、たとえ偏差値が上がっても18歳の段階でこのように考える思考体系は得にくいのが現状です。
在学中は塾講師をやっていて外国語学部志望の子も指導しましたが、みんな専攻言語については英語専攻と「その他」のような括りでしか捉えておらず、当然ながら前者にしか興味を持っていませんでした。

とはいえ、現実にはマイナー語にはメジャー語よりもモチベーションの低い学生が多数を占めるのが現状です。主観で申し訳ありませんが、学部共通授業などでは授業態度も悪い人が多かったです。第一志望で入学した学生はどうやってやる気を維持しているんだろうと思います。

在学中、外国語学部について考えてみるといつも矛盾や違和感を感じていました。

次回以降はそうした「マイナー語」が外国語学部に存在する意味についても書いていきたいと思っています。

読んでも入試の役には立たないでしょうが(笑)

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