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[読書メモ] アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る / 藤井保文、尾原和啓

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

デジタル化社会の到来で日本企業が持つべきマインドセットを、ビフォアデジタルとアフターデジタルの対比によって明示している。オフラインの延長にオンラインがあるのではなく、デジタル基盤の内側にオンラインとオフラインが存在するという発想や、ユーザの良質な体感やサービス価値を継続し続けることが重要という観点にはとても共感できる。

ある日本人ビジネスマンがエストニアを視察で訪れたとき、滞在中、<中略>エストニア出身の力士の個人情報がオンライン上のデータとして見ることができたそうです。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.13

これが事実だとすると、個人情報のオープン化に踏み切った国が存在することになる。個人の購買行動や趣味嗜好などの情報は既にメガクラウドが保有していることを考えると、個人情報を守る理由を改めて再考しデータ主権に基づく仕組み作りが必要な時期にきている。

中国では、モバイク買収のようにリアルを活用したオンラインサービスが発展したのですが、その背景には、オンライン上での顧客獲得単価が上がり過ぎてしまい、リアルの顧客データのほうが効率的になった、という事情があります。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.22

デジタルを前提としつつも、オフライン(現実の社会)で顧客獲得する方が難易度が低いということ。マイナンバーのようなデジタルIDの普及に関しても、オンライン受付よりもオフライン受付の方が利用者の理解コストが低いことと似ている。

先進企業とこうしたアイデアを話すとき、いつも「それは、買い手と売り手にとってどんなメリットがあるの?」という質問が出てきます。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.33

プラットフォームビジネスの最重要な成立条件のひとつ。買い手と売り手の片方ではなく、両方にメリットが無ければならない。

完全なオフラインはもはや存在せず、デジタルが基盤になるという前提に立った上で、いかに戦略を組み立てていけるかという思考法が必要不可欠になります。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.47

オンラインとオフラインはシームレスになって溶け合い、顧客はその瞬間において最も便利な方法で買いたいだけなのでそれを提供する

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.62

リアル店舗の販路を拡大するためにオンラインショップをするのではなく、デジタル基盤を前提としてリアル店舗(オフライン)とオンラインの顧客タッチポイントがあるという考え方が必要ということ。

オンラインが無くなると考えた時、ユーザーの購買行動のデータや知見の蓄積で優位に立てると考え、実店舗での人の行動を無人コンビニですべて解析しようとしているわけです。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.86

・デジタライゼーション(Digitalization):デジタル化の意味。アナログで処理されていたものをデジタル化して利便性向上や効率化を図ること
・デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation):デジタルを手段とした変革のこと。製品やサービス、ビジネスモデルの変革のみならず組織や企業文化も改革することが含まれる

無人店舗化は人件費削減が目的ではなく、購買行動のデジタルデータを獲得することが目的ということ。この感覚で事業検討できるかどうかがデジタライゼーションで終わるか、デジタルトランスフォーメーションできるかに関わってくる。

属性データだけではなく行動データも含め、購買習慣を全面的にデータ収集できるかどうかが、これからのビジネスの鍵を握ります

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.88

・マルチモーダル(multimodal):複数の形式(テキスト・画像・音声・映像など)や手段(センサー、マイク、カメラなど)を組み合わせること

性別や年齢層などの属性データに加えて、状況や時間によって変化するデータの収集が重要。必然的に、リアルタイム・データやマルチモーダル・データの収集が必要となる。

物理的制約を前提として企業はサービス設計を行うため、ユーザーはそれに合わせる必要がある、というのがビフォアデジタルのビジネスの姿です。企業側の理屈が優先されているのです。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.92

特定の場所に利用者に来てもらうホテルなどがビフォアデジタルの例。ほぼ同じタイプのホテルがユーザの近い場所でいつでも泊まれるように設計したアパ・ホテルのような顧客体験・価値の提供は、アフターデジタルに近い戦略と言える。

「顧客にとって最も便利な体験」を提供することで、さらに行動データがたまり、「自分に合ったものをいつでも提示してくれる」「最適なタイミングで連絡をくれる」という、さらに便利な状況を生んでいくのです。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.93

このような継続的なループを成立させるためには「顧客にとって最適な体験」という点が重要。「提供者にとって都合のよい押し売り」では、継続的なループが成立しない。

我々はNPS(ネット・プロモーターズ・スコア。顧客満足度のような不満解消ではなく、顧客にプラスの感情、つまりロイヤルティを発生させられているかどうかを測る指標)をつかっているのですが、これはエコシステムにおけるサスティナビリティを見るためです

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.107

・ロイヤルティ(Loyalty):特定の企業やブランドに対する信頼、愛着心、帰属意識のこと
・ロイヤリティ(Royalty):「特許権」「商標権」「著作権」など権利の使用料のこと
・NPS(Net Promoter Score):顧客が企業や製品・サービスをどれだけ強く支持しており、それを他者にどれだけ積極的に推薦するかを示す数値

他者にどれだけ積極的に推薦するかは、知人に推薦するといった特定の他者ではなく、不特定の他者に推薦するかという観点で見ると良い。例えば自身のSNS等で発信したいかどうかといった、具体的な行為で指標を測るとより正確に測定できるかもしれない。

「無人化」というとどんどんサービスが機械化していく印象がありますが、実際には従業員とよりコミュニケーションを取り、より人間的な温かいサービスを提供するプレイヤーが生き残っています。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.123

レジが無人化している実店舗に従業員が多くいるという状況を作っているパターンがこれを物語っている。

日本は現場における接客レベルは高いのですが、目の前にお客様がいるときの「一期一会のみ」に偏り過ぎる傾向にあるのではないでしょうか。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.133

日本も、オンラインとオフラインの両方で接客レベルが高い状態を継続的に維持できると良い。

変化が速く、流動的な時代において、顧客のニーズを理解して個別対応や高速反映ができるプレイヤーが強くなってしまう可能性も十分にある

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.137

デジタル基盤を活用して接客レベルを常に高い状態で維持し続けることで、個別対応や高速反映は自ずと実現可能。

「実は不便で、顧客をだまし、お金がちゃりんちゃりんと入ってくるサービス」は、高頻度接点と高付加価値をもたらすアフターデジタル時代のサービスに淘汰されていくでしょう。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.150

効率的に報酬成果を出すことのみを目的化したアフィリエイト活動もいずれ淘汰されそう(淘汰されてほしい)。健全なアフィリエイト活動において、広告紹介する人自身が本当に価値を認識していることが大事。

昔は、金融はもちろん、電力会社・通信会社・エネルギー会社が社会的な基盤企業であり、それらの企業の上で様々な経済活動が行われるという構造でした。アフターデジタル社会になると、「デジタル行動データのやり取り自体」が社会インフラのような役割を持っていて、このデータが、あらゆるサービスが成立するための基盤となります。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.159

これまでのインフラは、水道・ガス・電気・交通などのハードウェアインフラが主流だったが、これからはデジタルインフラ、ソフトウェアインフラの基盤が重要になる。

「マクドナルドの競合は誰か」といった話がよくあります。モスバーガーやバーガーキングのようなハンバーガーチェーン店だけでなく、観点を変えれば、手軽に食事ができるコンビニや牛丼屋、時間つぶしや勉強が長時間できる図書館やファミレスが競合になります。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.164

業種・業界という属性情報だけで判断すると競合を見誤るということ。ある状況や視点では、様々な競合が浮かび上がってくる。同時に、競合と思っていた企業が、共創パートナーになることもありえる。

新しい時代においては「行動データから体験を企画する」というケイパビリティが必要です。ここで重要となるのが、「行動データとは何か」という捉え方を変えることです。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る|P.183

「行動データから体験を企画する」作業は、定量的な行動データ(行動ログ)の数値から、定性的な行動を導いたり類推したりする作業ともいえる。この新しい定性的な体験が価値に繋がる。


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