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[音楽キュレーター雑記] U&DESIGN

U&DESIGN、綾部健司

初めて彼のギター演奏を聴いたのは、U&DESIGNの前身ともいえるバンドであるSTAY wander aroundのライブで演奏された「奇跡」のイントロのギターリフでした。
演奏技術はもちろんサウンドメイクのセンスが抜群で、プロのライブでもなかなか見ることができない程の圧巻のギターパフォーマンス。最初のワンフレーズだけで聴く人を虜にしてしまう魅力があります。

STAY wander aroundの解散とほぼ時を同じくして結成されたのが、ギタリスト・綾部健司を中心に結成されたスリーピースバンド U&DESIGN です。2007年にUNISON SQUARE GARDEN主催のイベントで演奏された楽曲はどれも秀逸で、自身のリーダーバンドということもあり自由に紡ぎ出されるギターリフやギターソロが今でも耳に焼き付いて離れません。
結成当初は、STAY wander aroundのドラム・鈴木浩之とのコンビでスタートしたインストゥルメンタルが中心のバンドでしたが、初期段階から自身がボーカルを取るようになり、ほどなくしてベースに須藤優が正式に加入しました。

活躍の絶頂期には、まだYouTubeやサブスクなどの音楽視聴ツールも充実していなかったのが悔やまれますが、下北沢・渋谷を中心に精力的に活動していて、ライブ会場に足を運んだ人は普段音楽を聴かない人であっても魅力を感じ取っていたことをよく覚えています。

私の知る限りで発売されたCDは、後述する2作品のみでどちらも希少版となっています。

FELT'S(ライブ会場限定販売:ミニ・アルバム)

 #1 K
 #2 小説の最後に
 #3 DADGBE
 #4 U and I
 #5 百年の孤独
 #6 どれほど時間を失っても

1. K
ライブで定番となっている曲で、数々のアレンジバージョンが存在します。Aメロのクリーントーンのギターの繰り返し、ささやき声とギターのネックスライド音をコラージュする点など芸術性が高い楽曲です。

2. 小説の最後に
出だしから感じ取れる歌詞のセンス、アコースティックギターのバッキングとのバランスが素晴らしい作品です。静謐な前半から後半の情熱的な盛り上がりまでのストーリー展開が素晴らしいです。

5. 百年の孤独
エレクトリック・ギターのディストーションをフィーチャーしたインストゥルメンタル曲。イントロの機械的なギターリフと、中盤のギターソロが圧巻です。この曲は特にライブでの演奏が魅力的です。

1/3 1/3 1/3(フル・アルバム)

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 #1 I think
 #2 Frozen
 #3 7
 #4 ☑
 #5 Rain ~Sympathy~
 #6 Sun St.
 #7 花匂う
 #8 Over U
 #9 シャリマティー

1. I think
アコースティックギターのイントロからさわやかなボーカルで始まるオープニング曲です。サビのメロディと裏で鳴っているバッキングがお洒落です。

2. Frozen
エレキギターとエレクトリックピアノの掛け合いが絶妙のバッキングに支えられていて、比較的テンポの早いダンサブルな曲です。Bメロの転調も効いています。初めて聴いたのは綾部健司の渋谷のライブハウス・屋根裏でのソロライブで、アコースティックギターひとつで歌う姿が凄く格好良かった。このアルバムに収録されたことで、また聴けて嬉しいです。

6. Sun St.
U&DESIGNの中で私が一番好きな曲です。エレキギターとボーカルだけの出だしから、ベースとドラムか絡まりながら始まるAメロ。2コーラス目からリズムが安定してきてエンディングに向けてボーカルの感情が爆発していく構成は良質な映画を観たときのような深い感動が残ります。

8. Over U
海風のように爽やかな楽曲です。イントロからAメロまで繰り返されるギターサウンドが印象的。サビのバックコーラスも綺麗に重なっていて、アルバム中で一番映える曲になっています。

U&DESIGNのアートワーク

U&DESIGNはジャケットのアートワークもかなり洒落ていて、ミニアルバムは不織布に茶色のアート紙が縫い込まれたハンドメイド品。当時はバンドの自主製作音源はCD-Rを無機質なプラスチックケースに入れて配布・販売するのが一般的でしたが、包装紙ひとつひとつにも手間をかけていたのが印象的でした。アルバムCDは、紙ジャケットを採用しデザインにイラストレーターの小林達介を起用。ジャケット表紙の切り抜きが窓になっていて、メンバー3人の顔が覗いている仕様になっています。歌詞カードの順番を入れ替えて収納すると、表紙の切り抜き窓から見れる景色の絵が変わるという凝った作りになっています。量産型のCDジャケットデザインに一石を投じるアートワークに感銘を受けました。近年、音楽は配信が主流となっていて物理的に邪魔になるCDは手元に置かない人が増えていると思いますが、このようなCDはみんな手放さずに大事にされると思います。

U&DESIGN、ギター演奏&作詞の世界感

これまで近くで見た中で、彼ほどの魅力を兼ね備えたギタリストに出会ったことがありません。アコースティックギターもエレキトリックギターのどちらのテクニックも素晴らしいですが、特筆すべきはライブにおけるサウンドメイクです。特にエレキギターのサウンドは、ロックミュージシャンに多いディストーションの騒がしさが全く無くて、歪み音一つとっても彼にしか出せない独特の品格があります。

さらに、歌詞のセンスがとにかく素晴らしい。詞というよりは詩に近いというのが私の印象です。読書家というバックグラウンドを聴いて納得しましたが、まさに西洋の小説の様な世界観です。世に出ているどのポップスにもない彼にしか作れない歌詞で、詩だけ単独で読んでも人々のセンチメンタリズムをくすぐる作品として成立しています。
元チャットモンチーのドラム・高橋久美子の歌詞も素晴らしいですが、同年生まれの彼らは意気投合して、朗読会「金夜に会いましょう」を開催しています。良質な歌詞を生み出す者同士が共鳴するのも納得できます。

ライブに足を運ぶと、いつも取りつかれたような表情でギターをかき鳴らし、笑顔で楽しそう演奏する綾部健司の姿はその場にいるオーディエンスを幸せな気分にしてくれます。是非、ライブで万人に聴いてほしいバンドですが、残念ながら2019年4月に須藤優(ベース)・鈴木浩之(ドラム)の脱退に伴い休眠(事実上の解散)となってしまいました。とても残念です。いずれどこかで、どんな形でもよいので、またU&DESIGNの楽曲の生演奏を聴けることを願って止みません。


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