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【自己組織化したチームを導く】今まで自己組織化チームでカバーされていなかった「ソリューションオーナー」の重要性

原文 : Leading a Self-Organizing Team
作者:Andy Whitehouse
日本語訳:Haruka Makabe

https://medium.com/slalom-technology/leading-a-self-organizing-team-90f07bbbb699

はじめに、ソフトウエア開発の歴史について簡単に説明させてください。1986年、竹内弘高氏と野中郁次郎氏は、ハーバード・ビジネス・レビューの有名な論文「新たな新製品開発競争(The New New Product Development Game)」を発表し、その中で「スクラム」をそれまでのスポーツ用語ではないものとして紹介しました。

その論文の中で書かれている重要な考え方の1つが、「チーム全員で目標を達成すること」です。プロジェクトの成果に対して、1人のチームメンバーが他の誰よりも大きな責任を負ってはいけないという事です。

もちろん、スクラムのフレームワークにはスクラムマスターが存在します。しかし、スクラムマスターはスクラムセレモニーを取り仕切るのが役目ではありますが、セレモニーの主役ではありません。スクラムマスターは、ミーティングやディスカッションを促進し、チームがそのルールを守るように促します。しかし、スクラムマスターは、定義上、チームをリードできません。

このやり方にはメリットがあります。研究によると、人は仲間で構成されたチームではより創造的になり、自虐的になることも少なくなるそうです。トップダウンのリーダーシップがないことは、確かにスクラム本来の精神に合致していますよね。しかしながら、同時にその限界もあります。チームの現在のプロセスが劣悪なコードを生み出していることに気づいたスクラムマスターが、解決策を提案し、チームを指導して遵守させることは、おそらく悪いスクラムマスターで、踏み込み過ぎかもしれません。良いスクラムマスターは、促進はしますが、指導はしません。

このようなタイプの変更は、プロダクトオーナーに任せるのがベストかもしれません。なぜなら、プロダクトオーナーは、ビジョンを設定し、チームが何をすべきかを知っていることを保証する責任があるからです。プロダクトオーナーにスクラムチームの軌道修正を依頼することの問題点は、プロダクトオーナーがチームの外部に存在しなければならないことです。そうでなければ、ビジネスの窓口として、またエンドユーザーの味方として、その重要な役割が失われてしまいます。自分の仕事をうまくこなしているプロダクトオーナーは、問題の近くにいてそれを見ることはできません。

では、スクラムマスターに権限がなく、プロダクトオーナーに専門知識がないとしたら、より良いスクラムチームを作るのは誰の仕事なのでしょうか?スクラムからSAFe、カンバンまで、従来のアジャイルフレームワークでは、その答えは、チーム自体が継続的な改善に責任を持つというものです。これは、人々の仕事のやり方ではありません。未来の職場は平等主義のユートピアになるという多くの予測にもかかわらず、人間のヒエラルキーに対するニーズは根強く残っています。経験の浅い人は、より経験のある人に指導を求めます。ソフトウェア開発の方法論は、人々の集団が自然に行わない方法で行動するようチームに要求してはいけません。サーバントリーダーシップに焦点を当てたスクラムは、人々の管理のための余地が与えられていませんが、管理されるべきです。

スクラムは新しい役割を必要にしているのです。スクラムマスターでもなく、プロダクトオーナーでもなく、プロジェクトマネージャーでもなく、3つの特徴とスキルを持ち、何よりもまず人々に焦点を当てたリーダーである人が必要なのです。

Slalomでは、この役割の人を「ソリューションオーナー」と呼んでいます。ソリューションオーナーはSlalomの造語ですが、成功したソフトウェアの開発チームにも必ず存在する役割です。

2年ほど前、私がソリューションオーナーとして働き始めて1年がたった頃、"ソリューションオーナーの5つの役割 "というブログを書きました。最初のブログで、私はソリューション・オーナーの役割のさまざまな側面を、翻訳者、外交官、セラピスト、航空管制官、そして親という5つの他の仕事と比較しました。

翻訳者としてのあなたの仕事は、法務担当者からDevOpsまで、すべての人が何が起こっているのかを共有理解できるようにすることです。外交官としてのあなたの仕事は、さまざまな利害関係や議題を持つ、これらすべてのグループを気持ちよく進行させることです。セラピストとしてのあなたの仕事は、人々が現状を良く思っていないことを特定し、それに介入することです。航空管制官としてのあなたの仕事は、"今何をすべきか "という問いに答えることです。そして、親としての仕事は、手出しをせずに、プロジェクトに関わるすべての人がベストを尽くせるようにし、何か問題が起きたら、サポートすることです。

2年たった今でも、その通りだと思っています。しかしながら、まだそれらだけが全てではないとも思っています。良いソリューションオーナーは、欠けているアジャイルの役割を果たす人であり、また、作家であり、モラルオフィサーであり、哲学者であり、教師であり、俳優であり、もしかしたらマジシャンであるかもしれないのです。しかしほとんどの場合、ソリューションオーナーは宇宙船の船長なのです。

イメージ:ピカード艦長は、なぜ自分のバーンダウンチャートが上がっているのか不思議に思っていました。

10代の頃、私はUSSエクスカリバーの乗組員の冒険を描いたスタートレック((英: Star Trek)は、ジーン・ロッデンベリーの製作したSFテレビドラマシリーズ)のシリーズに深く夢中になっていました。ある回では、船長が宇宙艦隊アカデミー時代を回想する場面があり、そこで彼と数人のクラスメイトは、勝ち目のない宇宙戦に勝つことを課せられていました。スタートレックの世界の価値観では、それはいつか士官となることを目指す宇宙艦隊士官候補生に対する心理実験であり、最終試験でもあるものでした。私が惹かれているのは、勝てない戦いに挑むという点ではありません。その試験のやり方です。この試験では、役割分担はランダムに行われます。なぜなら「艦橋では、いざという時、誰もが他の誰かの仕事をこなせるべきである」からです。

アジャイルには、スターシップの船長役が必要です。コースを設定し、平静を装い、判断を下し、自分の周りで起きていることすべてに責任を負う人。ライトが点滅し始めたら、シールドは30%、エンジンはインパルスパワーまで低下していると人々に叫ばせながら、今まさに発射し始めた未知の船を呼び、物事を解決する方法を話そうとします。

しかし、この神話上の第3の役割に必要な最も重要なスキルは、船を空中に保つために必要なことは何でもできる能力でしよう。スクラムマスターやプロダクトオーナーの理想像をはるかに超えた役割なのです。そして、プロジェクトの全領域を理解し、物事がうまくいかないときにチームとそのアプローチに責任を持つ権限を与えられたと感じる人がいることが、現実の世界では成功と失敗を分けることになるのです。

Thanks to Omar Galeano and Keijiro Kuribayashi!

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