9月

どの先生たちも「あとは出席点で卒業」と言って、私たちはテストの端に書かれた赤い数字を紙の中に含めて恥にした。夏の終わる香り。うろこ雲はまだ無いし、後ろの友人の手汗は未だ酷いけど。

行っては帰ってくる残暑のせいで銀杏が割れる。割れた銀杏から自分を守るために日傘が必要で、だから日焼け止めは必要がなかった。縦に並んだ社用車。やっとうの涼しさにほっと出る9月の裏切りがペットボトルのお茶を揺らす。誰にも見られないようにLINEを開いて好きと送れば生きていけたさ。幸せの形を雲に求めてる。

かしわ飯の匂いがして、改札の音がモゾモゾと動けば朝で、どっかの僧侶はそれはつまり、手の静脈が透けて見えれば朝らしい。朝は何よりも深く、暗闇にあるというのに。ああ、9月だ。夏を探せと誰かが言ったか



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