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『あぶない法哲学 常識に楯突く思考のレッスン』

 今回は『あぶない法哲学 常識に楯突く思考のレッスン』(講談社現代新書)を紹介します。

 青山学院大学での講義を基に,書籍化された本のようです。タイトルに「あぶない」とありますが,別に「あぶない」ものではないので安心してください(笑)。

 「法哲学」はご存知でしょうか。本書の「はじめに」の部分から引用します。

 そもそも哲学とは,既成の知を徹底的に疑い,<存在すること>の根拠は何であるのかを探求し続ける思考だ。私たちが自明としている常識を問い直し,思い込みを問い質し、そして真理の探究へと向かう。
 法哲学は,法律に対してその思考を向ける。つまり,人間社会のさまざまなルールの中で,なぜ法律だけが国家権力による強制力をもつことができるのか、そのような法律を成立させ存在させるものは何なのかを問う。また,はたして議会で制定される法律だけが法なのか,制定法を凌ぐより高次の法があるのではないか,あるいは制定法よりも人間社会の多様な営みの中で自生する法こそ重要なのではないか,などと考えたりもする。古代ギリシアに起源をもちヨーロッパで発展した,歴史のある学問なのだ。(pp.5-6)

 「哲学」という名がつくくらいですから,「現在当たり前だと考えていることに対して揺さぶりをかける」わけです。その対象が「法」ということになります。

 常識だと考えていたことを「本当にそうなのか?」と問いかけることによって,「考えるきっかけ」を与えてくれます。「自由とは」「平等とは」「正義とは」「功利主義」など倫理における主要トピックについて日常的な事柄を取り上げているため,興味を持って「『あたりまえ』は『あたりまえ』なのか」を考え直すことができます。最後に読書案内もついていて,さらに興味のあるところを広げるきっかけにもなる点もおすすめです。

 目次(章立て)は以下の通りです。

第一章 社会が壊れるのは法律のせい?ー法化の功罪
第二章 クローン人間の作製はNGか?ー自然法論 vs. 実証主義
第三章 高額所得は才能と能力のおかげー正義をめぐる問い
第四章 悪法に逆らうワルになれ!ー遵法義務
第五章 年頃の子に自由に避妊させようー法と道徳
第六章 大勢の幸せのために,あなたが犠牲になってくださいー功利主義
第七章 人類がエゾシカのように駆逐される日ー権利そして人権
第八章 私の命,売れますか?ーどこまでが「私の所有物」か
第九章 固化kがなくても社会は回るーアナルコ・キャピタリズムという思想
第十章 不平等の根絶は永遠に終わらないーどこまで平等を実現できるのか/するべきか
第十一章 私には「誰かに食べられる自由」がある?ー人はどこまで自由になれるか

こんな人にオススメ!!
① 最新の倫理的テーマに興味がある人
② これを見て「法哲学って面白そう」って思った人
③ 法学部をはじめとした社会学系の学部に進みたい人または現在勉強している人
④ 「こうやって決められているんだから守らないとね」とか「法律で決められているからね」などという,いまいち納得できないけれど納得せざるを得ない文言に対して子供の頃に疑問を抱いたことがある人

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