涙の意味は変わることなく
昔、知り合いに誘われてライブを観に行ったことがある。私が好きな歌手のライブだ。
ライブ中、私はどこか空っぽだった。音はたしかに聞こえていたけれど、何も聞こえていないような感覚。
思考が邪魔をしていた。私はなぜこの場所にいるのかと考えていた。ステージに立つ彼らを見て、私もそちら側にいたいと思った。決して歌手になりたいわけではない。多くの人から支持されているその姿に憧れたのだ。
それから興味を持ったものに挑戦してみた。けれど何をやってもうまくはいかない。
どうして何もできないんだと涙を流した。当然といえば当然だ、明らかに努力が足りていない。落ち込む資格すら私にはなかったはずだ。
憧れが原動力になってくれたらよかったのに。段々と別世界を示す境界線になってしまった。夜になると、思い描いてしまう理想に泣かされていた。
現実を受け入れようとした。今の自分に納得しようとした。きっと私は恵まれているほうだし、これで幸せなんだ。
それでもふとした瞬間に思い出してしまう。
そしてまた何かに挑戦し始める。新しいことも始めたし、一度諦めたものにも手をつけた。だけど何も成果を残せない。そんなことの繰り返しだ。
新年になると毎年思う「今年こそは」と。だけど中途半端な挑戦をして気づけば何もできないまま年末を迎える。
8年前に思い描いた8年後の自分は、もっと進んでいると思った。けれど実際はあの頃と大して変わってはいない。
今日もまたあの頃と同じ涙を流す。嬉し涙に変わることもなく。