ドイツで活躍する日本人ホッケー選手がSXLPから学んでいること(SXLP受講生インタビュー①)
Sports X Leaders Program(以下、SXLP)第3期がスタートしてはや1ヶ月。Phase1が終了しました。
ここまでの受講を終えた感想を、受講生である飯高悠貴さんにお聞きしました。
――現在の飯高さんの活動について教えて下さい。
ドイツのハンブルクにあるTHK Rissen(Bundesliga2部)というチームで、ホッケー選手をしています。
海外でプレーしているとやはり様々な面で常識が異なります。ホッケーの世界では日本は潮流に乗らないといけない立場ですが、日本にいてはやはりわからないことがたくさんあります。私のような海外でプレーしている選手が増え、日本にいては気づけない常識を持って帰って日本にインストールする役割をになっている、と思っています。
――どういったきっかけでSXLP受講を考えたのでしょうか?
第2期を受講された細田真萌さんに教えて頂いたのがきっかけです。コロナの期間にホッケー選手たちでオンラインサロンをやっており、そこで細田さんと知り合いました。
私はドイツをはじめ、ヨーロッパで導入され、浸透している”フェライン(※1)”の仕組みにとても興味を持っており、日本のスポーツ界でも必要な仕組みだと考えています。フェラインをどう導入するか、身近にいる方たちと議論してもなかなか行き詰まっていたところ細田さんからSXLPの話を聞き、「これだ」と思いました。必ずプラスのことを得られると思い、応募しました。
※1 フェライン:ドイツ語で「協会」、「同好会」、「NPO(非営利法人)」などを意味する。スポーツクラブとしていろいろな競技チームが所属している総合クラブの形をとるところもあれば、純粋に「サッカークラブ」としてサッカーだけの活動を行うクラブがあるなど、その在り方は様々な形態がある。「地域のコミュニティの場」としても機能している。
――ここまでのSXLPを終えて、どのような印象を持っていますか?
想像していたとおり、様々なバックグラウンドを持つ方が受講されているので、とても面白いです。同じスポーツと言ってもマーケティングや、障がい者スポーツ、部活動などの観点で関わっている人たちがいて、関心の幅が広いと感じています。
第3期はオンラインがベースですが、平日夜間だとドイツでは夕方なので受講はしやすいですね。「全員がオンラインで参加」というのも平等でいいと思っています。「みんなが集まっている場に、数名だけリモート参加」だと参加者の様子や反応が知られないときもありますから。
土日は試合があり参加できなかったときもありましたが、事務局がアーカイブを残してくれているので助かっています。
――飯高さんにとっては、SXLPとは「フェラインを展開するための手段の一つ」なんですね。
ここまでPhase1を受講し、システムで物事を捉えて、一つのアクションだけじゃなくて「全体的に捉えないといけない」という体系的なことは学べたと感じています。フェラインの実現には、多くのステークホルダーが関わります。単に形を作る、ではなくて様々な既存のステークホルダーの考え方や仕組みを変えていかなければなりません。
例えば中体連や高体連の試合をオープン化するとか、フェラインに参加するように社会人が夜間にもっと時間を確保できるようにしないといけないとか、夜練習しても地域に怒られない社会にする、など。まさにSXLPで学んでいるシステムデザインの思考は活かされてくると感じています。
――フェラインへの思い入れは、どこからくるのでしょうか?
日本でもいろいろなスポーツの課題がありますよね。部活や地域コミュニテイが成り立たない、デュアルキャリアの問題、競技力がつかないなど、多くの課題があります。ただ、それらは個人の努力が足りないとか、日本人の遺伝子が弱いとかそういうことではないです。残念ながらシステムで負けてしまっていると思っています。そのシステムの差がなにかというと、私の答えはフェラインという仕組みです。
ドイツでは5歳でホッケーを始める選手がいます。私のチームにも18歳のチームメイトがいるのですが、14年という競技歴が私と同じなんです(笑)。それってすごいことですよね。フェラインがきっかけでホッケーを始め、14年間試合に出続けているんです。
例えば日本でサッカーの強豪校というと、100人くらい部員がいます。でもそのうちでトップチームの試合に出ているのはせいぜい15人程度。つまり85人は試合に出ずに引退してしまっています。
一方ドイツでは、試合には基本全員が出られる仕組みになっています。同じクラブ内に複数チームがあるし、移籍も自由です。オランダやベルギーは国の人口が少なくても、全員が試合に出場できるから強い。日本の場合、試合に出場できる選手がほんの一部に限られ、これが競技力が上がらない一因になっていると考えています。
日本に生まれてしまったから競技が強くならないというのは不平等です。自分の子どもや孫の世代には同じものを残すような無責任なことはしたくないので、なんとかしたい。システムとしてなんとか正しいものを残したいと思います。その解決策が、私にとってはフェラインの仕組みです。
――今後のSXLPに期待することは?
私が考えているフェラインのシステムや魅力、ストーリーがどれくらいの人たちに伝えられるか、ここにかかっています。
またSXLPを通じて、そこにコミットしてくれる人とつながりを持っていかねばと感じています。自分が描いているフェラインの仕組みをリードして、SXLPで学んだことがそこにプラスアルファとして肉付けしていけたらいいなと思っています。
受講生たちの積極性にも毎回刺激をもらっています。受け身な姿勢の方は誰ひとりいません。
早くFace to faceでみなさんに会うのが楽しみですね。
飯髙 悠貴(いいたか ゆうき)
1990年 福島県/いわき市生まれ→東京都/大田区育ち。中学受験で慶應義塾普通部に入学し、その後大学まで一貫して慶應。中学は野球、高校・大学でホッケー(フィールド)とスポーツ漬けの青春を送る。
卒業後は大手総合商社に入社。東京(リサーチ業務)、インド/ニューデリー駐在(総務)、大阪勤務(営業支援/新規事業開発)を経験する。
27歳の時に退職。ホッケー選手として、個人で活動する道を選ぶ。
現在はドイツ/ハンブルクでBundesliga2部のTHK Rissenに所属。
トレーニングとドイツ語の習得に励みながら、試合結果や日々の活動を発信中。
Web: https://yiitaka-hockey.com/
Twitter:https://twitter.com/IitakaYuki
(取材・構成:SXLP1期/太田光俊)
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