文豪たちのドタバタを眺めながらカクテルを煽った話
文壇バー木馬暮
『文壇バー木馬暮(きまぐれ)』なるものを御存じだろうか。
新宿三丁目にある、とあるバーで不定期で開催される催しだ。
遡ること1ヵ月前、Twitterのタイムラインを眺めていたら、突然このイベント目録が目の前に飛び込んできた。
僕は最近、日本近代文学を読むのにハマっている。
芥川龍之介、太宰治、種田山頭火、武者小路実篤、等々、とにかく19世紀から20世紀にかけて書かれた近代の古典を、通勤時間に、昼休みに、就寝前に、貪るように読み耽っている。完全に活字中毒だ。
そんな自分にとって、『文壇バー木馬暮』は正にタイムリーな催しだった。これはもう行くしかない。
元々観劇が好きだったのもある。行かない理由はない。
この手のサブカルに理解のある友人を誘って行くことにした。
余談だが、僕は以前より「文豪缶詰プラン」という、これまた面白そうな存在の名前は既に知っていた。まさか主催者が同じ会社だったとは……。
いざ『文壇バー木馬暮』へ
今回の舞台は昭和98年だ。
昭和の文豪=和装という固定観念に囚われているので、今回は二人して和装で挑んだ。
天気は生憎の雨だったが、花園神社で待ち合わせをし、それから会場へと向かった。
今回の会場は「ナドニエ」というバーだ。ロシア語で「どん底」という意味らしい。
(この日の数日前にドストエフスキーを読み終えたのでテンションが上がった)
階段をのぼっている最中に「もう既に雰囲気がいいよね」という話をしていたが、内装もアンティーク調で、雰囲気が最高だった。レトロモダンという言葉がとてもよく似合う。
会場に入った時点で既に「劇」は始まっていた。
申し込みの時、僕らは「作家仲間」という設定でいたせいか、受付をしていた「編集者」たちに「先生」と呼ばれる始末だ。
少しばかりの気恥ずかしさを胸に抱きながら、指定された席へと向かう。
そこで配られたのが、『東京鳳明新聞』。
その1枚の新聞記事には、本日登場する文豪のモデルやハプニングの元ネタの紹介などがミッチリと記載されていた。もうこれを読むだけで既に面白い。
その日用意されたオリジナルカクテルは3種類。
しかし、僕は諸事情あってお酒が飲めない。
が、ノンアルコールカクテルが1品だけあったので、それをずっと飲んでいた。
名前は「蜜のあわれ」。非常に情緒がある名前だ。うろ覚えだが、金魚をイメージしているとかなんとか……。
振舞われた料理
振舞われた料理はコース料理で、前菜のサラダから始まり、デザートのチーズケーキで締められた。
メインメニューであるパスタを撮りそびれたのはご愛嬌ということで…。
(このチーズケーキがまた甘くなくて美味しかった。なにせ飲み物はカクテル系が多いため、口の中が甘くなっているからだ)
料理はどれも美味しく、ハプニングとハプニングの間に振舞われる。
これらの料理とカクテルを13時から15時にかけてチマチマと食べながら観劇をするというわけだ。
突然始まるハプニング
特に「何時に何が始まる」とは言われておらず、巻き込まれ型の寸劇は突然始まる。
登場人物一覧は是非公式HPを見てほしい。一覧を見ているだけでも面白い。僕は腹を抱えて笑った。
このバーで繰り広げられるハプニングは様々。
痴情のもつれ、泥酔した文豪の乱入、編集者同士の文豪の取り合い、等々……。
ネタバレになるので詳細は省くが、日本近代文学に詳しくても詳しくなくても「クスッ」と笑えるような寸劇…コメディが繰り広げられる。
※出演者の写真撮影はOK
そして、ハプニングがひと段落する度に、そこに居合わせた我々観客に文豪や編集者、そしてバーのママから名刺が配られる。
こうして並べてみるとさながらトレーディングカードのようだ。
そして、個人的に一番良かったと思ったのは、しっかりと「オチ」が用意されていること。
次々と現れる文豪と編集者たちのハプニングは、なんとなく始まってなんとなく終わるのかと思っていたら、しっかりと群像劇的な舞台になっていて、とても面白かった。
観劇しながら食事ができるイベント
この『文壇バー木馬暮』は「観劇しながら食事ができるイベント」。
舞台が好きな人は勿論、日本近代文学に親しみを持っている人にはお勧めの催しだと思う。
スケジュール等諸々都合があう人は是非一度行ってみてほしい。