「私はグレーゾーンの一番白いところを拾って話すのをやめられない 分かっているのに」
同性の兄弟(姉妹)は、競う傾向にあったりする。弟(妹)が世渡り上手だったりすることがある。たいていの場合、それは弟(妹)が負けず嫌いという性質が強かったりするものだったりする。
私もそうだ。
そして負けず嫌いが功を奏して、ちょっと頑張ると平均値を超え、姉を超えたりしてしまった。姉も十分立派なのだが。
しかし、そんな私も姉に勝てないことがある。
パズルだ。
ジグソーパズル。
いや、その他がすべて勝ってるという自慢話ではない。
あの、パズルの繊細な作業がダメだ。その一方で、姉は小さいピースでも数日でパッケージの絵を完成させてくる。
パズルのピースというのは、色々な表現に顔を出す。わかりやすい。
あの、単純な作業と忍耐が、一種の競技や訓練、辛抱…そんなことに変換しやすい。そして誰しもがわかる共通項だ。
身の回りすべてのことが、すべてパズルのように出来上がっている。
毎日口にしている水、毎日使うスマホのアプリ、自分自身の身体…すべてがそうやってできている。
そうすると、想像は容易いと思うが、漫画という作品作りも一つのパズルだ。
絵、セリフ、ストーリー構成、コマ割、キャラクター設定や役割…すべてがパズルのピースであり、完成して一つの作品を作り出す。
「東京タラレバ娘」で、お茶の間の認知度をより確実なものにした東村アキコ先生のエッセイ漫画をご存知だろうか。
先生が漫画家になる道のりが、絵の恩師とのエピソードとして描かれている。読んでいて途中で「これは…」と先が読めたりするが、先が読めても同じ。笑えるし、泣ける。そんな作品だ。
漫画の表現をピックアップすると、うまく伝わらないことは重々承知だが、ぐっとくる表現がある。
私は グレーゾーンの一番白いところを 拾って話すのを やめられない
分かっているのに
色の表現を使い、若い頃の先生を表現しているコマがある。
見開きの左下最後のコマに。2つの吹き出しに分けて表現している。
厳しい恩師のゼロかイチか(先生の表現だと、白か黒か)に対して、いつも曖昧な返答(グレーゾーン)をする先生。そして、そのグレーゾーンでも恩師が白だと思うような白に近いところを話すという。
その話のテーマをうまく使った表現で、なおかつ、「分かっているのに」を別の吹き出しで書くことによる後ろめたさの表現。
リズムと言葉のバランス、テーマとの関連性、そんな表現が日常の会話でも取り入れられたらお洒落だ。
忘れていた何かを思い出させてくれる先生のエッセイ作品。まだ読まれていない方は是非。
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