何故、「雪見だいふく」のパッケージから特許番号の表示が消えたのか?
日々報道されるニュースの中から皆さんのビジネスに役立つネタ、知的財産に興味を持ってもらえそうなネタを紹介します。
今日のネタは、「雪見だいふく」です。
■ 「雪見だいふく」のパッケージから特許番号の表示が消えた?
最近、特許界隈で、「雪見だいふく」のパッケージから特許番号の表示が消えたらしいということが話題になっています。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ロッテは「雪見だいふく」に関して特許を取得しています。
このため、「雪見だいふく」のパッケージには「特許第4315607号」という表示がされていました。この表示が消えてなくなったことが話題になっているわけです。
これは、この「特許第4315607号」についての特許権の存続期間(権利期間)が満了し、特許権が消滅したことによるものです。
特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもつて終了します(特許法第67条第1項)。
「特許第4315607号」については、平成13(2001)年3月19日に特許出願がされていますので、今年、令和3(2021)年3月19日をもって特許権が消滅したということです。
■ 特許権が消滅した後、特許番号を表示したままだとどうなるか?
今回、ロッテは特許権の消滅に伴って、パッケージから特許番号の表示を削除しました。では、特許番号をそのまま表示していたらどうなるんでしょうか?
このような行為は「虚偽表示行為」として禁止されています。
何人も、特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為をしてはならない、と定められているからです(特許法第188条第1号)。
特許製品だと信じて購入した人を騙すことになるからです。
「特許に係る物以外のもの」とは、特許権の対象となっていない製品のことで、以前は特許権の対象となる製品だったけれども特許権が切れてしまったものも含まれます。
「特許表示」とは、特許番号の表示等です。
虚偽表示をすると、「虚偽表示の罪」として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となります。
■ 「雪見だいふく」の特許はどんな内容なのか?
ところで、「特許第4315607号」の内容はどんな内容なんでしょうか?
「特許第4315607号」の特許発明の名称は「冷菓及びその製造方法」です。
そして、特許権の内容を定める出願書類の一つ「特許請求の範囲」にはこんな記載がされています。
【請求項1】
もち米:うるち米が略100~85:0~15で構成されるでん粉と糖類と水との混合加熱により得られる粘弾性物にて冷菓類を被覆する被覆冷菓からなり、
前記粘弾性物が、でん粉を3~55重量%、砂糖と麦芽糖が1:0.5~2の比率で全糖類量の50重量%以上を占める糖類を20~70重量%、水を25~40重量%含有することを特徴とする被覆冷菓。
(※ 読みやすくするため、スペースと改行を挿入しています。)
ちょっと難しいですが、要は「雪見だいふく」のモチモチした皮の部分に関する特許です。
「粘弾性物」が皮、「冷菓類」がアイス、「被覆冷菓」が「雪見だいふく」のことですね。
あの皮はでん粉と糖類と水を混ぜ、加熱して作ったものです。
これらの成分の比率を特許請求の範囲に記載された範囲にコントロールすることで、例えば、
●冷菓保存時の低温(-15℃位)においても固化せずに柔らかさを保つ
●食するに当たって適当な歯切れを与える
等の効果を得る事ができます。
もっとも、「雪見だいふく」に関する特許はこれが最初ではありません。
最も古いと思われる特許が「特許第1537351号」です。
「特許第1537351号」の特許発明の名称は「被覆冷菓およびその製造方法」です。
そして、「特許請求の範囲」にはこんな記載がされています。
【特許請求の範囲】
1 略アミロペクチンより構成されるでん粉と糖類と水との混合加熱により得られる粘弾性物にて冷菓を被覆することを特徴とする被覆冷菓。
「特許第4315607号」と比べると、限定条件が少ないですね。
成分の種類だけが記載されていて、比率等の数値は記載されていません。
「特許第4315607号」より広い範囲で特許を認められていたということです。
こちらは昭和56(1981)年5月29日に特許出願されていて、今から約20年前の平成13(2001)年5月29日をもって特許権が消滅しています。
実はこの特許、日本弁理士会が発行している小冊子「ヒット商品はこうして生まれた! ヒット商品を支えた知的財産権」の一番最初の事例として取り上げられています。
web版もありますので、ご興味のある方は読んでみて下さい!
■ まとめ
今日のまとめです。
●「雪見だいふく」のパッケージから特許番号の表示が消えたのは特許権の権利期間が満了し、特許が切れたから
●特許権が消滅した後、特許番号を表示したままだと、虚偽表示罪として懲役又は罰金の対象となる
● 「雪見だいふく」の特許は、「雪見だいふく」の皮の成分に関するもの
くれぐれも特許切れの製品に特許表示をつけっぱなしにしませぬよう。
では今日はこの辺で。
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