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変なホテルとの遭遇

常夏の南の島へ向かう前夜、朝早いフライトを選んだウサギは、空港近くのホテルを予約していた。そのホテルはまるで未来から切り取られたかのように、ロボットと対話するところだった。

ホテルのフロントでは、現実を逸脱したかのような恐竜型ロボットが二人を迎えた。ロビーでは火山が噴火しており、ウサギは、映画の世界に迷い込んだような感覚を覚えた。隣で佇むカメは、「なんか凄いね。いきなり異世界に迷い込んだようだね」とウサギに呟いたが、彼女は恐竜から視線を外せずに言葉を失っていた。

なんとか恐竜ロボットとの会話を成立させたウサギとカメは、部屋の鍵を受け取り、エレベーターで階を上がった。隣り合う部屋へと進む廊下は静寂に包まれ、清掃をしているロボットのほか、誰一人出会うことはなかった。

カメの部屋で簡単な夕食を共にしたウサギは、部屋の大きなスクリーンに映る南の島の映像に見とれていた。「いよいよ明日は、暖かい南の島ね」と眠そうにつぶやいたウサギを、彼女の部屋まで送ったカメは、「明日は早起きだから、もう休もうね」と言い残し、ゆっくりと自分の部屋へと戻った。

ウサギはベッドに飛び込み、スクリーンに映っていた白砂の海岸を思い浮かべながら、静かに目を閉じた。

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