時間の謎を追いかけて
その日、ウサギは図書館の分類番号449の書架の前で、「時法・暦学」の本を静かに見つめていた。「最近、時間が風のように過ぎ去っていく気がするわ。まるで誰かに急かされているみたいに…」
ウサギのそばを、カメがゆっくりと歩いて通り過ぎた。「時間の不思議が気になるなら、その秘密を探しに行こうか?」カメは静かにそう言うと、そっと彼女の手を取った。
「これが…世界最古の時計なの?」
静まり返った館内に足を踏み入れた瞬間、ウサギの瞳は不思議な石に吸い寄せられた。
「これは、紀元前5000年頃に使われていた日時計だね」カメは静かに説明した。
「そしてこれは水時計。水が一定の速度で流れる仕組みを利用しているから、夜間や室内でも時間を測れるんだよ」
「自然の力を借りて時を測っていたのね…」 ウサギの声は、静かな夜に溶けていく水の波紋のようだった。
ふと耳を澄ますと、時計の歯車がギシギシと音を響かせている。その隣では、大きな振り子が悠然と行き来していた。
「時の流れを、こうして耳や目で感じられるなんて不思議だわ。マイスター・ホラの部屋も、きっとこんな感じなんでしょうね」
時代ごとの最先端技術が息づく時計に見入っていた二人は、ふと足を止めて、江戸時代の和時計に目を向けた。
「江戸時代は一日を昼と夜に分け、さらに六つに区切り、『一刻』と呼んでいたんだ。昼の長さは季節によって変わるから、一刻の長さも季節ごとに違っていたんだね」
「江戸時代の中頃までは、一日二食が一般的だったから、午後3時にあたる『昼八つ』に間食をとる習慣があって、それが『おやつ』という言葉の語源になったんだよ」
「つまり、三食きちんと食べて、さらにおやつまで楽しめる今の私は、とても幸せってことなのね…」和時計を見つめるウサギの瞳には、時を越えた輝きが宿っていた。
「時が移ろい、時計の姿がどれほど変わろうとも、一日の長さは変わらず24時間か…。やっぱり時間は大切に使わくちゃね!」