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ギリシャの兵士のように

その日、ウサギとカメは駒沢公園のランニングコースを軽やかに走っていた。二人は一心不乱に5周回した後、給水のために小さな休憩を取ることにした。ウサギがペットボトルのキャップを開ける音が静かな公園に響く中、ふと彼女は話し始めた。

「ねえ、マラソンの原点って知ってる? 私はマラソンの始まりの地を走りたくて、アテネにある古い競技場へ行ってきたのよ。それはもう、歴史を感じる神聖な場所だったわ」とウサギは目を輝かせながら語り、カメは静かに水を飲みながら、その話に耳を傾けた。

カメは静かに記憶を辿った。「紀元前490年、ギリシャのマラトンという場所でギリシャ軍がペルシャ軍を破ったとき、その勝利を伝えるためにギリシャ軍の1人の兵士がマラトンから約40キロメートル離れたアテネまで走り続けた。確か、それがマラソンの語源と言われているんだよね?」

ウサギはこくりと頷くと続けた。「そう。だから私はどうしてもアテネを走りたかったの。アテネにはパナシナイコスタジアムという競技場があるわ。そこは第1回近代オリンピックの会場でもあり、トラックは1周330メートル。直線が極端に長くて、コーナーはヘアピンカーブなの。そして、スタンドは全て大理石で出来ている。私は古代ギリシャの兵士の気持ちで走ったわ」

「ウサギさんならギリシャ兵士のようにマラトンからアテネまで走ったのかと思ったよ」とカメが言うと、ウサギは苦笑いをしながらゆっくりと首を振った。「気持ちはギリシャ兵士だったけれどアテネはとにかく暑すぎた。トラックを一周しただけで十分だったわ」

春の柔らかな風が二人の間を優しく抜けていった。ウサギが確かな意志を込めて言った。「さあ、ギリシャの兵士のように、もう5周するわよ!」その言葉に励まされるように、カメも微笑みを返しながら、再び走り始めた。二人の足取りは軽やかで、まるで時間を忘れるかのように春の中を駆け抜けた。

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