見出し画像

私にとっての当たり前は当たり前ではない事を、いつも彼が教えてくれる。


長いタイトルですみません。
本文も長いですが、読んで頂けたら嬉しいです。


一番の悪は無知


私の好きな人。Rくん。
彼はFTM当事者だ。

彼と出会うまで、恥ずかしながら私はFTMという言葉さえ知らなかった。

性同一性障害?聞いた事ある。
大変そうだなぁ。

漠然と。それくらいにしか考えた事がなかった。


あまりの無知に、今なら恥ずかしいとさえ感じるけれど、当時の私は正直にその程度だった。

それでも私は、自分が差別や偏見を持っている側ではないと思っていた。

その思い込みこそが、当事者を生き辛くする全てに繋がっているような気がする。

もしかすると、一番の悪は無知かもしれない。



私の中の固定観念


そもそも、普通や常識とは何だろうか。

人間は男性と女性しかいない。
男性はこういう身体だから男性。
こういう考えでこういう行動をし、恋愛対象は女性。
よって男性だ。
(逆も然り)

本当にこんなに単純なのだろうか。
もっと複雑で、多様なものではないのか。

普通と言う言葉を使うのであれば、男性の身体が女性で生まれてきてしまう事だって普通にありそう。と思う。

女性の恋愛対象が女性。
うん。普通にありそう。


普通はそんな事は起こらないと、どうして言えるのだろう。


私の中に、無意識に固定観念が存在している事にさえ、気付いていなかった。


Rくんとの出会い


Rくんと出会った経緯等はここでは省略するが、Rくんは中性的な少年、といった感じだった。

本人と直接話す前に、共通の友人から彼がFTMだと教えて貰った。


誤解がないように付け足しておくと、色々と面倒だからと紹介する時に一緒に付け加えておいてほしいと彼自身から言われた、との事だった。


本人が承諾していないのに他人に勝手に話す行為は、絶対にしてはいけない。
アウティングという言葉は後から知ったが、言われなくても至極当たり前だ、と思う。

これまた詳細は省くが、私も過去に精神を病んだ経験があって、そんな事でさえ私が知らない所で勝手に話されたら良い気はしない。

LGBTだからとかではなく、誰であっても他人の個人情報を勝手に明かすなんて、プライバシーの侵害も甚だしい。


彼はその共通の友人を信頼し、その友人である私をも教えていい対象に含んでくれたからこそ、教えてくれた。


まぁ後に彼は「そんなに深い意味はないよ。」と言って笑うのだけれど。

そして、こうも付け加えた。


「なんとなく、長い付き合いになりそうってビビッときたから。(笑)」



Rくんが教えてくれた事

  • 大変な事はあるけれど、不幸ではない。

  • 当事者でさえ、同じ考え方とは限らない。

  • 人はみんな違って当たり前。

  • それぞれの考え方や生き方を尊重し、自分の意見を押し付けない。

  • 正解などない。


FTMだからといって、特別な事はないんだと知った。
誰にでも当て嵌まる事だ。



「左利き、AB型、未婚、そんな事でもマイノリティと言えばマイノリティだよ。」

彼の言葉にハッとした。

「マジョリティだったとしても、別の環境では簡単にマイノリティにもなる。」

彼は言った。

「結局誰もが何かのマイノリティだよ。」


本当だ。
ならば、私はどうしたいのか。


社会と言うと大きいし、知らない誰かの事はどうしても想像しにくい。

けれど、もしそれが自分の大切な誰かだったら。

家族、友達、恋人、大切なたった一人に向けたものならば。


私は、マイノリティが直面している不都合から目を逸らさず、理解しようとし、関係性を築きたいと思う。


彼は言う。

「最近は声を上げるマイノリティが好戦的だと言われてしまうけど、そうでもしないと状況が変わらない現実もあるよね。

困っているから助けてくれと言うのは、本来とても難しいことだから。
彼等がそういう役割を担ってくれるおかげで、何もしないくせに利益だけを得ておれが生きやすくなってるのもまた事実なんだよね。」


ジェンダーの枠ではマジョリティ側にいる私が、彼のためにできる事は何だろう。

「いつでもわかろうとしてくれる姿勢にどれだけ救われてるか。ありがとう。」

そう言ってくれる彼に、私が返せる事は何だろう。


彼が生きやすい世界はきっと、私も生きやすい世界だ。

私がマイノリティ側に立った時、私が生きやすい世界はきっと、彼も生きやすい世界だ。


FTMの彼と出会ったからこそ見えたもの。

それは、他者を尊重し、想像力を働かせ、手を差し伸べ、互いに助け合いながら生きるという、人として当たり前の事だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?