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いい歳した大人がバレンタインに振り回される話。#2
「…別にいい。もう用事済んだから帰っていいよ。」
そう吐き捨てた私に、『言い方うざ。』と言って彼は出て行った。
いつも私がイライラしても当たり散らしても泣いても喚いても(←
八の字にした眉毛を触って(困るとやるRくんの癖)『あらら。』とか言うくらいの彼がこんなことを言うことは滅多になくて、まして本当に帰ることもほぼなくて、私は一人残った部屋で今日の彼がいかに不機嫌なのかを思い知らされた。
しばらくそうしていると、Rくんが戻ってきた。
手には私の好きなアイスを持っている。
『ごめん。』そう言ってアイスを差し出す。
「えっ…買ってきてくれたの…?」
『…ん。』
「…ありがとう。私今日いつにも増してうざいね。当たってごめんね。…嫉妬。」
『いや、全部おれが悪い。ごめんね。』
ものの10分で彼は切り替えて私の好きなアイスまで買って、全部おれが悪いと言って謝ってくれた。本当に優しいと思う。
Rくんは、女の子は謝らなくていい。
女の子にこんなこと言ってごめん。
女の子はこんな時間に外出ちゃだめ。
等、“女の子だから” とよく言う。
男尊女卑のそれではない。
バリバリの女尊男卑。
男卑も違うかもしれない。女尊が過ぎる。
女性扱いが嬉しくないと言えば嘘になるけれど、それより圧倒的に恥ずかしいからやめてと言ったところ、“ 人間は皆んな女の人から生まれるんだから女の人を敬え ” との彼のお母さんの教育だから仕方ないと言っていた。(素晴らしい教育)
更には妹がいることもあってか、年上の私にでさえこの徹底ぶり。
ごめんね。
そう言い合って、ソファーに座っていた私の左下に彼が座る。
いつも決まって床。床で十分。と変なところで体育会系。
すっかり冷えた紅茶を『おれ猫舌だからちょうどいいな。』と言って飲むRくん。
仲直り…したのかな?
なんとなく気まずい。
………
珍しく沈黙。
彼も気まずいのかな?と思ってRくんに目をやると、ユラユラ揺れている。
寝てる。。
どこでも寝る。一瞬で寝る。
気まずいの私だけ?
私も眠い。一気に来た眠気。
眠気で思考回路が停止して、バレンタインデーなどというイベントに自ら振り回されにいった自分自身に呆れた。
同時に、私達は今日、よっぽど疲れたんだなと何だか笑えた。
彼があまりにユラユラするから、いつテーブルに頭をぶつけるか気になって寝落ちしなかった。
仕方なく(仕方なく。強調。笑)彼の頭を自分の膝に乗せた。
また勝手に髪をさわる。
パーマが少し残った長めの黒髪は、会わない間にサラサラの金髪ツーブロックになっていた。
そんなことをしていたら、すぐに彼が起きた。
『……え、ごめん…』
「短いのかっこいい。金髪にしたのね。」
咄嗟に何でもない風を装って言うと、
『え、今更!?え、これ金髪!?』
と言うから、どう見ても金髪でしょと言って、二人で笑った。
………
『…おれさ、今日イライラしちゃって…』
膝枕状態のまま彼が言う。
拒否されると思ったから驚いた。
『あのさ…もし嫌じゃなければ、しばらくこのまま…』
………
「い、いいよ!嫌じゃない、全く。」
『…ありがと。』
このままがいいって言った?と、更に驚いた。
こういう甘え方するんだ。知らなかった。可愛い。。
「あの『さっき
『あ、ごめん!何?』
「あ、ううん!先言って!」
…………
to be continued.
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