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孤独の時間 Being Alone

思想家・吉本隆明の著書に『ひきこもれ』という一冊があります。サブタイトルに「ひとりの時間をもつということ」とあるように、本のメッセージは至ってシンプル。「一人でこもって過ごす時間」、つまり「分断されない、ひとまとまりの時間」を持つことが大切だといいます。そして、それは「孤独」を自分の中に呑み込み、つきつめていくことであり、本当の「価値」というものは、そうした時間から生み出されるのだと語られています。

コロナの影響でリモートワークが日本でも急速に広がりはじめた昨年、「シンプルでこだわりのある生き方」を志す読者の方々の中には、自分自身の「時間の使い方」について改めて考えた人も多かったのではないかと思います。通勤時間がなくなったことと、ZoomやSlackといったデジタルツールが浸透したことにより、私たちは不意に「時間的ボーナス」を獲得することになりました。

当初、それによって生まれた「空白の時間(=時間的ボーナス)」は、吉本隆明が言うところの「分断されない、ひとまとまりの時間」に充てられるはずだと、誰もが思っていたと思います。しかし、リモートワークそのものに人々が適応してくると、恐ろしいことに「空白の時間」を埋めるためにデジタルツールが活用される、という矛盾へと発展しました。蓋を開けてみたら、仕事の絶対時間が逆に増えていたという冗談のような現実や、チャットの返信とミーティングだけで一日が終わってしまうというような悲劇すら生まれています。

「こまぎれの時間」の集積は、「仕事した感」を生み出すことができても、本質的な「価値」を生み出すことはできません。世界的なプロジェクト管理ツールを提供するBasecamp社の創業者ジェイソン・フリードは、その著書『小さなチーム、大きな仕事』の中で、「ひとりきりモード」という表現を使っています。「ひとりだけの長い一続きの時間」の価値を強調し、電話・会議・チャットなど、まとまった時間を分断するようなコミュニケーションへの依存から脱却すべきである、という一貫したメッセージを主張しています。

デジタルツールの進化によって、いつでも誰とでも気軽に連絡を取ることも、「空白の時間」を埋めることも、想像以上に簡単になりました。だからこそ、誰かと会いたい、話したい、という気持ちをぐっと我慢し、「孤独」と向き合う時間を捻出していくための努力が、今私たちに求められているのかもしれません。

NOTES:
・「ほぼ日刊イトイ新聞」に、吉本隆明の183もの講演が音声でアーカイブされています(全文テキストも掲載されています)。
ジェイソン・フリードの哲学の一端を、WEB上の記事でも読むことができます。

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「孤独」と向き合う時間に飲みたいのは、SIPSMITHをソーダとトニック・ウォーターのハーフ&ハーフで割ってつくるジン・ソニック。トニックの甘みと苦味を感じながらも、ソーダの爽やかさも楽しめる一杯は、誰かに会いたい気持ちと一人を受け入れる気持ちの間で揺らぐ心に、そっと寄り添ってくれます。
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