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引き継がれる陰の立役者

本コーナーでは、ニュースレター編集部がSwan Labをより深く楽しむためのさまざまなコンテンツをコラム形式でお届けしていきます。

前回はSIPSMITHの始まりについてお話ししました。今週は、その職人技を可能にするSIPSMITHの名プレーヤーたちをご紹介します。SIPSMITHの歴史を知り、知識を深め、もっとSIPSMITHを味わってみてください。

初代「プルーデンス」
SIPSMITHを初めて完成させた時に使用した第一号の銅製蒸溜器「プルーデンス」は、SIPSMITHを語る上でなくてはならない存在です。SIPSMITHの職人技の核であり、精神そのものなのです。
SIPSMITHのロゴデザインは、蒸溜器「プルーデンス」の“白鳥の首”のようなパイプからインスピレーションを受けています。彼らの最初の蒸溜器であるプルーデンスが有するしなやかな曲線は、1869年から蒸溜器を製造しているドイツ最古のChristian Carl(クリスチャン・カール)がデザインしました。このようなデザインを持った蒸溜器は世界でたった一つしかないそうです。
プルーデンス(Prudence)という名前は、イギリス人が大好きな皮肉に由来します。イギリスが不況に見舞われたある時代、当時の英国首相であるGordon Brown(ゴードン・ブラウン)氏が、“もっと倹約(prudent)であるべきだった”と非難されました。そんな時、SamとFairfaxは蒸溜器を作るために家を売ろうとしていました。“倹約”とは真逆の行動を取っていたのです。

第二号、第三号の誕生
その後4年間、プルーデンスは来る日も来る日も蒸溜を続けました。そしてついに、プルーデンスに妹分が誕生します。その名も、「ペイシェンス(Patience)」。この言葉には、“忍耐”という意味があります。ペイシェンスはまず、マセラシオンタンク(醸し)からキャリアをスタートしました。6ヶ月後、彼らはロンドン西部のチズウィックにある大きな家に引っ越し、ペイシェンスが蒸溜の力を存分に発揮できるようカーターヘッドを取り付けました。
そしてペイシェンスの次に登場したのは、SIPSMITHの蒸溜器の中で最も大きい「コンスタンス(Constance)」です。伝統的なロンドンドライジンの製造に専念し続けるコンスタンスは、まさにその英語の語源である“継続”を体現しています。ちなみに今現在、第二号器のペイシェンスは休止しており、第四号の蒸溜器、“真実”という意味を持つ「ヴェリティ」が代わりに稼動しています。
プルーデンス、ペイシェンス、コンスタンス。どれも銅から手作りされているため、ベーススピリッツとボタニカルから不純物をすべて取り除き、本当に飲みやすいスピリッツを作ることができるのです。

SIPSMITHの美味しさを最大限に引き出す名プレーヤー。それがこの蒸溜器たちだったのです。彼らは我が子を育てるかのように一台一台を大切にし、共に歴史を刻んできました。仲間たちと掲げたビジョンと、信じ続けた伝統的な製法。そして、彼らの努力が本当の意味で形になったのはこれらの蒸溜器のおかげだったのです。
共に歩んできた仲間、そして最初に使っていた道具や機械を愛でるSIPSMITHの姿勢は、ものづくりを生業にする人にとって共感できるものだと思います。皆さんは、初めて何かを作った時に使った道具は今でも使っているでしょうか?昔聴いていた音楽や嗅いでいた匂いが、当時感じていた気持ちを運んでくるように、始めた頃に使っていた道具をたまに見返したり、触ってみるのも、いい刺激になるかもしれません。


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