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山の上の食事は美味いか?

よく、山小屋のごはんは美味しいと言う人がいる。
俺は登山をするんだが、山小屋で夕食を摂るとき、「わー、美味しそう」などと特に女性が言うのを何度も耳にしてきたが、俺は山小屋の食事が美味そうに見えたことは一度もなかった。なんとなく安っぽく見えたからだ。どうせ冷凍して山に運んだもんだろ?などとヒネった見方で見ていた。それでも、山小屋で食べると、たしかにありがたみがあった。しかし、俺の中では、山小屋のごはんは美味しいという感想を持ったことはなかった。
しかし、去年、奥穂高岳に登ったとき、雨の中、前穂高から吊り尾根という道を通って奥穂高岳を越えて穂高岳山荘に泊まったのであるが、その吊り尾根が自分にとってはソロ登山を始めて以来一番の難所で、命を賭けて踏破した。そのとき、「山小屋に着いたら、ラーメンを食べよう」ということだけ考えていた。そして、命からがら山小屋に着いて、豚骨ラーメンを注文した。

穂高岳山荘の豚骨ラーメン

これがメチャクチャ美味かった。人生で過去に食べてきたラーメンで一番美味かった。どうせ、山小屋だから出汁を取るところから作っているわけではあるまい。そう思いながらも最高だと思った。俺は地元ではラーメン屋を巡るのを好む人間だったが、この穂高岳山荘の豚骨ラーメンを食べてから認識が変わった。
山の上の食事は美味いのだ。
特に生きるか死ぬかの冒険をしたあとの食事は美味いのだ。
以来、俺はラーメン屋に行くよりも、近場の低山の山頂でカップラーメンを食べるのを好むようになった。
ラーメン屋は千円くらいのカネがあれば楽に行ける。しかし、低山でも山は自分で歩いて登らねばならない。お楽しみのカップラーメンを目指して、俺は自分に試練を与えることを好むようになった。


山の上で湯を沸かしカップラーメンを食べる

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