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【小説】Fight 4 the 脳 Future(女子高生仮面)

 それは紛うことなき女子高生であり俺の敵であった。
 茶髪に金のメッシュ、線の様に細い眉毛、付けまつげ、目元のラインストーンや眉ピアス、色の薄い口紅、ベージュ色のベストと緩く結ばれたチェックのリボン、短いスカート、ルーズソックス、ローファー。
 背にはラクガキだらけのスクールバッグ。ほどよく焼かれた肌は艶よく光っている。

 俺はその女子高生と戦っていた。
 女子高生が持つ携帯電話のアンテナが光ってビームが出て俺の足元を抉る。土埃が舞う。飛び上がった俺の影が地面に薄く写る。
 女子高生は愉しそうに笑っている。
 竹刀を二刀に構えた俺は大刀を振り回しながら小太刀で追撃をする。
 しかし女子高生は上手く躱してかすりもしない。

 時折、女子高生が宙がえりをした時に蛍光色の下着が見える。
 俺は唾を吐き捨てようとして、間違えて舌なめずりをしてしまった。
「また見たでしょ」
 女子高生が楽しそうに訊いた。
「冗談じゃあない、俺は武士だ」
 二刀をベルトに差して、学ランの内ポケットから煙草を取り出しす。金色のパッケージには峰と印刷されている。
 最後の一本を取り出し、100円ライターで火を点けた。

「ジッポとか使わないんだ」
「高くて買えないんだよ」
「ゲーセンで取れるじゃん」
「あれはジッポ風ライターだ」
「詳しいね。取った事あるでしょ」
「500円かけてな」
 俺は思い切り吸い込んだ煙草を女子高生に向かって吹き飛ばすと、砂を蹴り上げて煙幕を作った。
 右に回って左手の大刀で足を払い、間髪入れずに右手の小太刀を振り下ろした。

 しかし両方の竹刀が空を斬った。
 殺気を感じ取って飛び退くと、寸前まで俺が立っていたところにはハイビスカスの首輪が突き刺さっていた。
「ダメじゃん、煙草捨てちゃ」
 女子高生が俺の吸っていた煙草を咥えている。手には空き箱まで握られている。
「しかもまだ高校生っしょ、吸うのもダメ」
「自分だって高校生じゃんか」
「あたしは良いの」
「どういう理屈だよ」
「だって私はあなたの理想だから」
 そういうと女子高生は飛び上がって満月を背にして影になった。

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