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【短編小説】Misaki of Se7en

 アキオはため息をついてスマホをポケットに押し込んだ。
「どうしたよアキオ」
 マサトがコーヒーの空き缶に唾を垂らしながら訊いた。そのマサトが持っている煙草から火種を貰いながらカズナリが嗤う。「どうせ彼女のアキラだろ?」吸っているのか吹かしているのか、大量の煙がぐるぐると回りながら空に昇っていく。
 ファミリーレストランと言うパラダイスを失ってからはコンビニの駐車場くらいしか行く先が無い。そりゃあ敵対チームと店内でケンカをすれば出入り禁止にもなるし、それでも店に入れば通報もされるだろう。
 フランチャイズ店のコンビニで何回か店長に通報された後、あまりやる気の無い直営店コンビニを見つけて屯すようになった。相変わらずアキオたち不良に居場所なんてのは無い。
「いや、アキラじゃなくて」
「じゃあなによ」
「まぁいいじゃねぇか」
「暇つぶしになりそうな事をね、探してんのよ。マサトは」
「カズだってそうだろ」
 二人が肩を叩きあっているとやたら騒々しいバイクに乗ったセブンが到着した。
「やー、まいったまいった。親父がうるさくてよ」
「うるせぇのはお前のバイクだ。まだチャンバーの割れ、直してねぇのかよ」
「金がねーんだもの」
 セブンはサイドスタンドを立ててバイクを停めると輪に入って座り込んだ。
「親父がうるさいって、なによ」
「マスク外せってさ」
「あぁ、まぁお前はな……」
 セブンはマスクを下げると、アンパンで細くなった歯を見せてニヤリと笑った。「やめらんねーのよ、スコーンと気持ちよくなるからさ」セブンは再びマスクを戻した。こんなご時世になってマスクで隠せるものがあるとはな、と思ったが知っている人間は全員知っているので隠す意味も無いのかも知れない。

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