【小説】錯乱ズブロッカ読経BOYユビキタス脳死
「ポットパイ宇宙論」
生物と言うのはあまりにも大きい対象を知覚する事が出来ないと言う。
ミトコンドリアが人間を知覚していないように、地球を顕微鏡で観察するようなサイズの生き物を人間は知覚する事ができない。
もしかしたら地球や宇宙は何か巨大な生物のシャーレの上にあるものかもしれないし、沸騰寸前の海に漂う生物を形成する細胞に込められた情報の一つかもしれない。
俺は穴の開いたプラスチックスプーンで目の前のパイを崩した。
銀色の器に張られたパイ生地は音を立てて砕けた。何層にもなった生地が器の中に落ちていく。
もしも地球がこのパイに包まれたスープの具材だとかのひとつだとすると、いつか空を割ってスプーンが浚いにくるかも知れない。
宇宙が剥がれて落ちる。
巨大な宇宙の破片が地球に降り注ぐ。ゆっくりと掻き混ぜられた地球は宇宙の片鱗と共に飲み込まれる。
もしかしたらもう胃袋の中にいるのかも知れない。
俺は空を眺めながらパイ生地を全てスープの中に落とした。匙が見える事はなかった。
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「メリタ式ブレーンバスター」
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