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【短編小説】さようなら、あした

 時間は垂直にやってこないと力説したところで時計の針は垂直なんだ。
 新しい日だとか新しい年と言う概念が世界を覆う。
 窓の外は温暖な月明かりが溢れている。
 公共ニュースによると次の氷河期までは折り返しを過ぎたらしい。
 コミュニストと白痴が並ぶ御めでたい景色が鳥居の中に吸い込まれていく。
 親切な解説をつけるとすればアカとシロの横断幕って言う話だ。
 別に笑わなくていい。
 しかしそいつが自動なら別だ。
 恥ずかしがり屋の現実主義者aka単なる酔っ払いが踏む千鳥ステップの後に蟻が群がる。
 俺の個体番号は更新されず、自他の境界が曖昧な猫の背中に毛と自我を植え続けていた。
 涙は流れない。
 忘れ物が何だったかも思い出せない。
 去年と言う籠から出忘れた奴らが俺を指差して笑う。
 過去と言う檻から出られない奴も俺を指差して笑う。
 俺は陽出づる國の中心にある緑色をした円環の理に乗って動く点P。
 夜色like a Los ingobernables nocheの制服を着た警察官たちの指先確認。
 俺は無実だ。だがハスラーだ。
 山手線から黒塗りの高級車へ。
 足を洗う。
 Fuck袋。売れ残りマンコの詰め合わせ。
 噴く梟。
 回らない首。
 社会人としてはまだ赤ちゃんの新人たち。
 座らない首。
 その首に掛けた輪が誇り。
 埋もれていく。
 輪を以て尊し、と茄子。
 その馘に宴もたけなわが埃。
 パーティーは続けるか抜け出すかの二択。
 どちらにせよ中出すか外出すかの二択。
 冷えていく精子たちは恨めしそうに俺を見る。
 俺の精子たちに未来はない。
 ヒロシ長田の定理を使うと猫にも未来は無い。
 つまり俺の精子は猫だ。
 未来は無い。今を可愛がれ。
 無数の白いオタマジャク痴がアカい太陽に向かう。
 だがその前に死ぬ。
 奴らに初日の出は無い。
 俺たちは幾千の手淫を乗り越えてマンコに辿り着く。
 だがパイパンじゃなけりゃ絡みつかれて死ぬだけだ。
 願え。
 祈れ。
 だがそこには到達できない。
 精子は水平に飛んでいく。
 だが終了が垂直にやってくる。
 グッドバイ。その繰り返し。
 恥の多い人生。へっぽこ色の珍生。
 俺は正装をして外に出る。
 それが精巣でも星霜でも構わない。似たようなものだ。
 そうしてアカとシロの横断幕に加わる。
 シロい方だよ、言わずもがなだろ。
 手を洗う。小銭を投げる。手を合わせる。
 観音様。
 御来光。
 御開帳。
 俺は白い谷間から顔を出す。
 アカい舌が出迎える。
 俺は水平に笑い垂直な時間を過ごす。
 それはそのまま現実に持ち越される。
 東京のマンコ I mean 山手線はぐるぐると回るし俺はその陰唇のフチを動く点Pそして覗き込む深淵からこちらを見返すLast Emperorの眼差しが苦しい。
 さようなら。
 さようなら。
 さようなら。
 俺たちに老いた後は無くつまり猫であり精子であるところのシロい奴らとして水平に飛んでその柔らかい乳房の上で冷えて死ぬんだ。
 さようなら。
 さようなら。
 さようなら。

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