【短編小説】8月32日の人魚
蝉がチクショウと呟いて墜落した。
ノストラダムが 証明できなかった夏、ジョナサンが音速の壁を越えて夢になり、夕陽に向かって鬼蟲が飛んでいって水平線が緑色に染まった頃、犬吠埼の海辺に美しい金髪の女性が現れた。
彼女は沈没船から拾い集めた西洋の鎧をまとい、夕焼け色の海と似た光を放つ鎧兜の隙間から透き通るような美しい歌声を響かせていた。
そして長い槍で岩や水面を叩くと、溶け落ちるように暗くなった海へと流れ出て行った。
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