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アサナのトリセツ03: ヴィーラバッドゥラーサナ(勇者のポーズ)II 前編

ヨガの実践方法はアサナだけではありません。ポーズが取れることよりも、そのプロセスでの逡巡、そして気づきこそが重要でありパワフルです。

とはいえ、少しでもアサナを洗練させていきたいのが人の常。このコラムでは、基本のポーズの基本のアプローチを、わかりやすく、少しだけマニアックに説明します。

すべてのアサナの原則は「安定していて快適」であること。

日常生活では行うことのない不思議な姿勢ばかりのヨガポーズを安定させ快適に行い、そして心身への効果を最大限にするためにはどうしたら良いのかについて解説します。



ヴィーラバッドゥラーサナとは

日本語名は「勇者のポーズ」「英雄のポーズ」などと訳されます。ヴィーラとは勇者・英雄の意味。ヴィーラバッドラはヒンズー教の神であるシヴァの化身のひとつです。

この記事のタイトルではサンスクリットの発音に近くなるようにヴィーラバッドゥラーサナと書いたけど、カタカナ表記でが音引きや小さいツがウが入ったり入らなかったり…と「ヴィラバドラーサナ」と書くのが最も日本語っぽく文字数も少なく、それでも長いのでインストラクター同士で話すときには「ヴィラツー」と呼んでいることも多いです。英語名からWarrior2と呼ぶことも。

初心者の方は「ん?」と思う時もあるかもしれませんよね。ごめんね、統一表記がないので、雰囲気で「あれか〜」と覚えちゃってください。

日常動作にはない、股関節周りのストレッチとパワーを要しますが、とても難易度が高いというわけではありません。しかしCMなどでミスアラインメントを見かけることが非常に多いポーズでもあります。

アラインメントについての理解を深めたい方はこちらも

生徒さん役だから別に完璧でなくてもいいんですけどね〜


ビギナークラスからアドバンスまで相当な確率でレッスンに組み込まれるポーズです。2と言うからには1もあるのですが、1は2よりも柔軟性とパワーが求められるため、ビギナークラスで行われるのは2がほとんどです(そして3もある)。

早めにポイントを押さえることで怪我を防ぎ、効果を高めましょう。

Benefit ポーズから得られるもの


臀筋、内腿と外腿、足首といった下肢および背筋を中心にした全身を強化するポーズです。腕を上げた状態で股関節を屈曲させる姿勢は、体側から背面、腿をあらゆる角度からストレッチします。姿勢改善のほか、意識するポイントが多いため繊細さと集中力を培います。

注意と禁忌


これといった禁忌はありませんが、足首、膝、股関節のアラインメントが重要なポーズです。これらの部位に故障や不調がある場合は独学で行うのは中止し、信頼できる講師の指導を受けてください。

ヴィーラバッドゥラーサナIIへのアプローチ

【写真B】右つま先が外に、左足はカメラに向けて正面orやや右足側になってるのお見逃しなく

①足のスタンスを決める(写真A)
タダーサナ(山のポーズ)で立ち、腕を横に開いたときの手首の真下に足首を配置する

②つま先の角度を決める(写真B)
右足のつま先をマットの短い縁へ向ける。左足は右足のかかとの真後ろにかかとを配置し、つま先は右足に対し90度以下になるようにする。このとき、右足はつま先と膝の向きを揃えておくことが望ましい。

③膝を踏み込む(写真C)
右かかとの上まで右膝を踏み込む

そこまで踏み込めない時は左足を前に移動して膝が曲がる余裕を確保する。

膝が内側に倒れてしまう場合は両足の小指側をしっかりと踏み、それでも膝が入る場合は左足を右足のかかとの真後ろよりも外側に移動し、膝の位置を安定させる。

④ポーズを完成させ、呼吸を保持
息を吸いながら腕を肩の高さまで持ち上げ、首を長く伸ばしてから右手の先に視線を向ける。そのまま3~5呼吸行う

⑤左右を逆にして反対側も
左足をマットの短い縁に向けたら、その後は全てのプロセスを左右逆にしてポーズを行う


ヴィラIIの最大のポイントは膝の位置

このアサナにおいて最重要項目は土台のアラインメント。特に前足の膝の位置はかかとの真上、それより前でも後ろでもありません。また左右にブレるのもご法度です。しっかりとキメていきましょう。

これは効果を高めるためにもケガを防ぐためにも理解しておきたい原則です。そして、簡単そうで意外と「あれれ?」となってしまいがち。

うまくいかないパターンごとに対処方法を見ていきましょう。

土台のミスアラインメント①膝がかかとより後ろにある


踏み込みが足りません。踏み込んでも膝がかかとの上まで届かない場合は、足幅が広すぎる場合もあります。

手首の下に足首というスタンスは理想的ですが、初心者さんのうちはちょっと厳しい方も多いはずです。もし膝がかかとの上に届かないなら足幅を狭めましょう。足を移動させるときは、かかとの大きさを1単位として、少しずつ動くようにします。

かかとの上に膝が来たら、膝の真後ろを目指して腰を落としていきます。その時に、腿の内側に伸びを、お尻の筋肉が頑張ってる感覚があれば実際に真後ろでなくてもOKです。

繰り返して練習することで股関節周りの筋肉がストレッチされ、また必要な筋肉が備わっていきます。まずは足幅を見直して、膝の位置を整えましょう


土台のミスアラインメント②膝がかかとより前にある

ちなみにこの写真撮る時、前足の脛と前ももがめちゃ痛くて辛かったです


これは足幅が狭すぎです。後足を移動して少し左右の足のスタンスを広げましょう。このとき、踏み込んでいる足の方が安定しているため、足を移動させるときは後ろ足を動かすのがベターです。


土台のミスアラインメント③膝がかかとより内側に入る

前後の調整が出来たら、膝が左右にぶれていないか確かめます。多くの人は少しでも気をゆるめると膝が内側に入ってしまいます。

膝が内側に入ってしまう場合の対処法は、後足の位置の再調整をすること。具体的には後脚をやや外側に、つま先をやや前側に持ってきましょう。これでほぼ解決することがほとんどです。

本来あるべきポジションはココ。後脚を少し外に出して調整しました


このポーズでは股関節を横に開くのと同時に大腿を外側にぐるっと回していることにお気づきでしょうか。この動きは解剖学的には「外旋」と呼んでいます。

股関節外旋は片足につき大体45度くらい、両足だと90度くらいは開く方がほとんど。両足が離れていてピンと来にくいかもしれませんが90度以上に開くと膝は後脚に引っ張られてしまって膝が内側に入ります。後脚を外に出しているのも、やはり前膝が後脚に引っ張られるのを防ぐためです。

後脚を斜め前あたりに少しずつ動かしていくと引っ張られてアラインメントが乱れることなく、内腿にストレッチを感じる適切なポジションが見つかるはずです。

土台のミスアラインメント④膝がかかとより外を向いてしまう

これは長年ヨガの指導をしてきたけれど実は見たことがない…。とはいえ、もしそうなってるとすると小指の付け根に乗りすぎているかも。このままだと捻挫しやすいので足裏のどこか一箇所だけで床を押すのではなく、全体で押して下さいね。

それでも、どうしても膝が入ってしまう人へ


ここまで読んで後脚の工夫をしたんだけど「どうしても膝が入ってしまう」という方もいらっしゃると思います。股関節の構造上、あるいは脛骨の捩れが大きい等、理由によって対策が変わるのでここで言えることは少ないのですが…それでもひとつだけ声を大にして言いたいことがあります。それは…

かかとの真上に膝を持ってこようとする、その意識だけはポーズを行なっている最中はずっと持っていてください。抜けたらまた入れる、その繰り返しです。

これは根性論ではなくて運動はイメージが重要だから。意識さえしておけば完璧なアラインメントではなくとも、本来はポジションキープのために使う筋肉と同じ筋肉が使われます。一方、諦めてしまうと代わりに別の部位に体重が乗ってしまうことになります。股関節や膝、足首への負担になるのはそのせいです。

土台が整ったら上半身をのびやかに

では、土台が整ったら骨盤を立てて(鼻骨・肛門を真下に向けるイメージ)、その上に上半身を伸ばしていきます。腕は肩の高さに持ち上げたら指先まで長く伸ばしましょう。視線は前の腕の指す先です。

と、簡単そうに書きましたがこれが割と難しいんですよ。すでにまあまあの文字数になってしまったので、この記事は後編に続きます。

後編では上半身のアラインメントのコツ、全身のエネルギーの方向、そして上手くアサナが決まらないという方のためのワークのご紹介、の予定です。

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