見出し画像

アサナのトリセツ第0回:アラインメントについて

アラインメントという言葉をご存知でしょうか。最近はビジネス用語やプログラミングで同じ言葉を知ったという人もいらっしゃると思います。とはいえ、ここにアクセスしている人はヨガの文脈での「アラインメント」の語意について調べてる人が多いでしょうか。

ご期待通り(?)この記事では、ヨガの文脈におけるアラインメントとは何か、そしてその意義について述べていきますね。

その前に、まずは基本的なヨガの語句を説明しておきましょうか。ヨガとはインド起源の心身の鍛錬法です。ハタヨガというのはその1種で、ヨガのポーズを行う身体的を伴うものすべてを指します。ヨガのポーズはサンスクリット語でアサナといいアーサナと発音・表記する例も多く、どちらも誤りではありません。この記事ではポーズのことを主にアサナと表記します。

では、前置きはこれくらいにして本題に入りましょう!


アラインメントとは

アラインメント、英語表記だとAlignment。元々は「整列する」とか「一列に並べる」とかという意味を持ちます。ヨガの文脈で使う場合は、アサナを行う際の身体の各部、主に関節の理想的な配置を指します。

膝や骨盤の向き、肩や腕の高さなど…細かく身体各部を整えているうちに疲れてしまって「辛いな」「面倒だなあ」「先生細かすぎるのでは」と感じる方も多いのでは。ひとつひとつ行っているうちに最初に整えた部位がゆるんでしまって、やり直しすることになったり…

でもね、それでいいんです。何度やり直してもそれは無駄ではありません。アラインメントの意識は、アサナによる心身への効果を高め、練習の中で起こり得るケガのリスクを軽減するために必要かつ重要なのです。


ミスアラインメント

推奨されないアラインメントは「ミスアラインメント」と呼びます

この写真のポーズ(ヴィラバッドーラーサナ2)は、それほど難しいポーズには見えないかもしれません。しかし気をつけることはたくさんあります。

例えば、この写真は2人とも両手の指先までしっかり伸びてて、その点はとても良いです。特に後ろの腕は見えないため意識が向きにくいため、下がってしまったり手首から先が丸まりがちです。

注意点としては骨盤が前に倒れ、膝も内側に入っていることが挙げられます。両足のスタンスを大きくして片膝を曲げた時にはよほど気をつけていないと起きやすいありがちなミスアラインメントです。

奥のモデルさんは骨盤が腹側に倒れているだけではなく前脚側にも傾いており、膝が踵より前にあります。こちらもビギナーさんには一般的なもの。

これらのミスアラインメントについての詳しい解説は次回以降に譲りますが(必ず!)そうなってしまうことはあまり気にしないで、修正されたり、修正された後も気づいたら出来る範囲で正しい姿勢を目指しましょう。

自然に身体はミスアラインメントに向かおうとしますが、この「自然」には抗うくせをつけましょう。こういったミスアラインメントをそのままにしておくと身体への負担が蓄積して前脚の足首や膝の痛みやケガのリスク要因になるだけでなく、変なクセがついてしまい後で修正するのが難しくなってしまうからです。

アサナはどれも日常生活にはない不自然な姿勢です。最初は柔軟性や筋力の問題で出来ないことがたくさんあるかもしれませんが、この「出来る範囲」というのがとても大切です。


ヨガの目的とアラインメントの存在意義

簡単そうに見えても実はなかなかこうはいかない、というポーズ


「出来る範囲」の範囲がどの程度なのか。これを見極めるのが練習ではとても大切です。身体の限界以上のことを求めればケガや痛みに繋がり、しかしいつも通りのことをしているだけでは成長しません

現存する最も古いヨガの聖典である『ヨーガ・スートラ』ではヨガの目的を「心のはたらきを鎮めるもの」とし、アサナの条件を「安定して快適であること」としています。

つまりアサナはヨガのゴールに向かうための手段。安定して快適に行うことによって、心のはたらきを鎮めることに貢献しようとしているのです。不安定で不快ではヨガの目的に適いません。

そのためには、どの程度の負荷をかければ良いのか、どこまでなら苦痛や負担なく行えるかの注意、「出来る範囲」のうちの最適な強度を探すことがとても重要です。アラインメントの意識は身体各部にバランス良く身体各部へ導き、呼吸への意識は夢中になりすぎないクールさを保つために欠かせないエッセンスです。


アラインメント、どのくらい意識するのが正しいの?


一概には言えないのですが、アラインメントの意識は丁寧に整えてもアサナを維持している途中でフッと抜けてしまうもの。好きなだけ丁寧にやるのが望ましいと個人的には考えています。

とはいえ、あまりに額面通りに受け取ってしまうと「形」として自分の身体を捉えてしまい、感覚への意識が散漫になってしまう場合もあります。内側から沸き起こる感覚への意識は残しつつ、俯瞰で身体を見る意思は残しておいて下さい。

アサナを行うときに大切なのは、意識のバランス感覚です。内と外の両方の感覚、見えてる側と見えてない側、複数あるポイントのいずれかに注目しすぎることなく意識を広げることが大切です。アラインメントの注意点は相反する要素の2つのポイントが対になっていて、いずれかに偏らないようにバランスを求められるものが多いのです。

例えば、アンジャネアーサナ。足を前後に大きく開いて身体を起こすと、どうしても腰椎が反り過ぎたり肋骨が左右に開きすぎる傾向があるため、それを防ぐアクション(具体的には腹筋への意識など)が求められます。

左は後脚への意識が抜け気味、右は禁止事項を意識しすぎて体の声を聞けてない時に起きやすい

腰を反りすぎて痛めてしまうのは良くありませんから、この点は特にグループレッスンでは必ず指摘するポイントです。しかし、ここで身体の感覚よりも「腰を反ってはいけない」という言語的な指示の方に意識が向きすぎると可能性を閉じ込めてしまうことになりかねません(写真右の例)。

禁止事項を守れること自体は悪いことではないので、もし「これではちょっと伸びが足りないな…」と感じたら少し踏み込んでポーズを行い、やりすぎたと感じたらすぐに戻るようにすればケガを防ぎつつ、より爽快感を高めてくれるでしょう。

ついやりすぎてしまう人も同様です。深めすぎたと気づいたら、いつでも戻る勇気を持つこと。どこまで戻ればいいか、どこまで進めばいいか。それがアラインメントの示すところです。

窮屈すぎず奔放すぎず、適切なアラインメントの意識を伴った練習ができると、程よい運動量が確保できます。1回の体験レッスンでスッキリした!と感じた方は、この点が上手くいったということです。次回からも無理せず、楽に流されず、ちょうど良い出来る範囲を探ってください。

さて、次回からは基本のアサナをひとつひとつ安全に深めるコツを検討していきましょう。やってみて迷ったら、何度でもこの記事を読んでみて身体の声と相談してみてくださいね。

この記事を書いたのは…
津野千枝(SVAHA YOGA well-being studio ディレクター)
自分軸を育てるヨガをがレッスンテーマ。自分自身の心身に向き合い、学び、育てたい人を応援します。

SVAHA YOGA well-being studio

豊かな指導経験から得た現場の知恵と、科学的な見地に基づいたアプローチに基づく現代的なハタヨガスタイルのレッスンが受けられます。ビギナーには取り組みやすく、長年のヨガ実践者にも実りある練習ができる環境を提供しています。東京都中央区、茅場町駅・八丁堀駅徒歩5分
https://svaha-yoga.com

サポートありがとうございます。 スタジオ・オンラインクラスの運営費や、女性支援の活動に使わせていただきます