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茹でガエルジャパン。円安貧乏化が止まらない。Weak Yen Poor Japan.

いやぁ、円ってなんでこんなに弱くなっちゃったの??? 2022年以降の円安傾向、まったく止まりませんね~。2024年4月19日なんと1ドル154円をつけちゃった。34年ぶりの災厄的低レート。2022年末までは1ドル120円未満でしたから、日本人はこの1年半で3割がた貧乏になりました。近年日本人の年収の中央値は400万円です。しかも、円安がどこまで進むかは誰にもわからない。(なお、東アジア他国の通貨もまた連動して対ドルレートが下がっています。)



アメリカによって変動相場制が導入されたのは1970年。そのときから各国通貨は投機の対象になった。こんな荒唐無稽な事態はありえないことだった。しかし、そのときから世界は賭場のなかに叩き込まれた。そのうえ通信ネットワークの高速化がこれを加速していった。しかも各国の金融市場はロンドン、ニューヨーク、香港、東京と順送りで24時間開いています。相場を動かしているのはアメリカの大手銀行、各国中央銀行、投資マネージャー、ヘッジファンド、企業、そして個人トレーダーたち。為替市場取引は1日5兆ドル越え。毎分毎秒トレーダーたちはギャンブルに命懸け。昼食にハンバーガーを喰ってるあいだに、わちゃー、巨億の損失を出しちまった、なんて話はざらにあります。しかも為替相場は(実態経済をも反映しているとはいえ同時に)心理戦でもあって。もしも外国人トレーダーたちが「日本、終わったな」とおもいはじめ、いまその認識が蔓延しはじめているとしたら、このまま円がどこまで下がってゆくかはわからない。



余談ながら、あのヴィム・ヴェンダース監督、微妙な表情を巧みに演じ分ける役所広司主演の、映画『PERFECT DAYS』は心優しく寡黙で知的な初老の、墨田区の木造モルタルアパートに住む公共トイレ清掃員の、極端なまでにミニマリスティックで形式化された、貧乏ながらも毅然と美的な生活を描く、美しくかけがえのない文芸作品ではある。しかし他方で、たとえばこの映画がまた、円安貧乏に耐え忍ぶけなげなプア・ジャパンのイメージを世界中に広めてしまう。なるほど、たしかにこれが日本の(きわめて理想化された)ひとつのファンタジーではあるとしても。しかし、日本人はPERFECT DAYSという言葉が強烈な反語であることをも理解すべきでしょう。いいえ、円安ジャパンの話に戻りましょう。



他方、アメリカ人はウハウハでしょう。韓国製電化製品も、中国産の繊維製品も安く手に入る。これでトヨタのカムリ(26,000ドル)も安くなったらなおいいな、ってことですよ。いいえ、ざんねんながらアメリカトヨタはすでにアメリカ企業ですから、けっしてアメリカ人にとってトヨタ車は安くなりませんけれど。


もっとも、円安は自動車産業、機械、精密機器などの輸出中心のメイカーにとっては結構なことでしょうが、しかし大多数の在日日本人にとってはきわめて悲劇的です。後期昭和の経済成長、そしてその果ての1984年からのバブル、1990年末までの奇跡はもはや夢まぼろしとなり果てた。いま誰も止めることのできない円安は、原油をはじめ輸入品の価格を押し上げ、インフレがはじまって、生活費を上昇させるでしょう。じっさい気がつけばスーパーマーケットでのタコ、エビ、イカの値段も急上昇。USビーフもオージービーフも同様です。都心部のランチ価格も1600円以上があたりまえ。それが嫌なら立ち喰い蕎麦か、ハンバーガー、弁当屋の弁当、コンビニ飯しかありません。今後は光熱費の高騰もありえるでしょう。そのうえ外国人労働者たちにとって日本の経済的魅力も下がり放題。かれらはとっとと日本から去ってゆくでしょう。介護労働市場は崩壊。コンビニ業界もバイト労働者が激減。また日本人のグルメたちにとって、「東京は世界各国のおいしい料理が食べられて超ハッピー♡」、そんな話も早晩過去のものになりかねません。


他方、欧米諸国の人たちにとって日本観光はめちゃめちゃ楽しい。豊洲、築地、銀座、新宿、渋谷、秋葉原、はたまた京都、沖縄、冬の北海道・・・ガイジン天国です。サーヴィスを提供するのは日本人と発展途上国の人たち、ウハウハで遊び騒ぐのは為替メリットのある外国人たち。いまや東京の星つきホテルを使えるのはほぼ外国人だけ。哀しすぎます。でも、これ現実ですものね。


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