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メガネ朝帰り  企画参加作品 カバー小説


私は目が悪い。
性格も悪い。

ちょっとしたことで
彼と喧嘩した。
本当に些細な事で
それが何だったのか
思い出せない。

今は、私の一言で彼の罵声が
酷くなった事と、それと
同時に私も大声を上げて
しまった事を反省している。

泣いた時に落ちたメガネ。
彼の家にあるだろう。

取りに行かなきゃ
いけないのに、
意地と後悔で
帰りたいのに帰れない。

両目合わせても
0.1にならない視力でみる世界。

何もかも、くっついて見える。
色の区別がつくだけ良いかと
諦めて交差点を渡る。

肩が痛い。
腕が重い。

クリスマスに
買ったペアリングを
両手で握りしめる。

「朝」か「夜」か分からない。

「空腹」か「満腹」か分からない。

「悲しい」か「哀しい」か分からない。

「クッキー」か「ビスケット」か分からない。

「赤」か「朱」か分からない。

「卵」か「玉子」か分からない。

「恋」か「愛」か分からない。

「スウェット」か「トレーナー」か分からない。

「野良猫」か「ドラ猫」か分からない。

「カラス」か「ワタシ」か分からないけど、何かがないた。

「明るい」か「明かるい」か分からない。

「怒られる」か「叱られる」か分からない。

「彼」なのか「彼だった」か分からない。

「私」なのか「ワタシ」なのか分からない。

私はリングを、外して
彼のリングと重ね合わせる。

第一関節で止まったリングは
まるで、私と彼の距離の様だった。

重ならないペアリングを
空になったポタージュスープの缶の
中に入れゴミ箱に入れた。

このままゴミ箱と
繋がってしまえばいいのに。

cover小説に
参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。


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