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ナウシカの世界をフラフラと…:読書録「ナウシカ考」

・ナウシカ考 風の谷の黙示録
著者:赤坂憲雄
出版:岩波書店

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歌舞伎「風の谷のナウシカ」をオンライン視聴するのと並行して見た番組(ナウシカ歌舞伎れんが“家“話)のなかで、鈴木敏夫さんがこの本のことを話してたんですよね。
この本の帯に、その内容が書かれています。


<この本を読んで
はじめて 原作を読みなほしました
よくも描いたものだと
あきれました 
宮崎駿>


それを聞いて、読んでみたくなって、購入。
歌舞伎と原作漫画を見終えてから、少しずつ読み進めました。
まあ、原作の世界を、赤坂さんの見方を通して、もう一度見返す感じかなぁ。
学者さんの著作なので、真摯に、論理的に分析・解析したことが書かれてるんですが、僕自身は赤坂さんの言葉を頼りに、フラフラと原作世界を歩き回った感じです。


だからまあ、「理解」と言う点については、チョット放ったらかしかな?w。
終盤(第4章、終章)作者は「黙示録」と「ドストエフスキー」を物差しとして漫画版について紐解いていくんですが、そこら辺は「まあなぁ」って感じでしたw。
宮崎駿の先行する作品(「シュナの旅」とかね)との比較や、ユーラシア大陸の歴史との関係、環境に対する施策なんかを参照にしながら、その世界の成立について考察する前半の方が僕は楽しく読めました。
(単に知力・体力が及ばなくなっただけかもしれませんがw。
個人的に「遊牧民国家」の歴史に今興味があって、それが「ナウシカ」や「シュナ」の世界観に繋がってるから、そこに興味が…ってのもあります)


「宮崎駿」は、作品を緻密に構成し、全体のストーリーを組み上げた上で作品を作ると言うよりは、先行きは決めつけずに、物語の赴くままに作品を作り上げていくタイプの創作者です。
ここら辺、長編をかく「村上春樹」にも似ている。
だから、物語が進むにつれて、作品やテーマの方向性が変わってくるようにも見えるし、自分が以前に記したことに引きずられるように、物語の行方が定まっていくようなことも起きる。
漫画版の「風の谷のナウシカ」は、連載期間が長かっただけに(12年かかってます)、そう言う傾向が強く出ている作品でしょうね。
それでいてこう言うところに落ち着いてるんだから、作者自身をして、
「よくも 描いたものだ」
ってのも分からんでもないかw。


「生きねば」
としめた漫画版「ナウシカ」を受けて、
「生きろ」
と断言した「もののけ姫」を作り上げ、宮崎駿は「先」へ行っています。
「ポニョ」や「風立ちぬ」なんかを思うと、「清浄と汚濁」を引き受けることが「人間」であり「生きる」ことなのだと言う思想は深化してるようにも思います。

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さて、今作られている「最後の作品」。
果たしてそれがどう言うものなのか。
楽しみでなりません。


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