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いざ、5年ぶりの鳴子温泉郷へ。【宮城旅】

長距離ドライブはいつだってパンとコーヒーからスタートしたい。家を出て、まずは近所のカフェへ。焼き立てパンをいくつか選んでレジに行くと、店主のりんちゃんに「今日はおでかけですか?」と聞かれる。

「鳴子温泉に行くんです」と答える私。11月に宮城県の鳴子温泉郷へ一泊二日で出かけた時のこと。

夫が「なんだか浮かれた雰囲気出てました?」と添えていた。まだ日常の中にいるのに、いつもよりうきうきした旅の空気をまとっている。

久しぶりに晴れた、暖かい日。
店内は焼きたてクロワッサンの香り。

家から鳴子温泉までは2時間半程度の道のりで、比較的行きやすい場所だ。お気に入りの宿があって、温泉が恋しい季節になったら行こうと前々から考えていた。とはいえ雪が降ればたどり着くのはきびしく、今がベストシーズンとばかりに夫を巻き込み予約したのだった。道中、最上川沿いの白糸の滝ドライブインに立ち寄った。

木々の隙間を落ちる白糸の滝。
クレミアと昔ながらのソフト。みんなはどっち派?

ドライブインには立ち食い蕎麦屋さんがあって、メニューをみると中華そばが並んでいた。山形では年越しそばに、お蕎麦と中華麺の両方を食べるのだが、立ち食い蕎麦まで中華そばなのか。

そういえば、夫のお父さんはそばのことを「すば」と発音する。「すば け!」と言われて首を傾げていたら、「中華そばたべな」の意味だったことがある。訛りというのは、単なる言葉の違いじゃなくて、発音の仕方の違いだと思うと、そもそも話している言語そのものが違うように感じてしまう。移住4年目でもまだまだ新鮮だ。

最初の目的地は、近年では東北屈指のインスタ映えスポットになった鳴子峡。ほとんど終わりかけている紅葉も、これはこれできれい。私のパーソナルカラーはイエベ秋らしいので、茶色っぽい景色をみると親近感が湧くのかもしれないな。時おり残る、赤や黄色の葉が鮮やかな絵の具のようだった。

まだ葉の残る木もあった。世界が黄色く輝く季節。
ここが紅葉シーズンの映えスポットみたい。ドライブインで気軽に立ち寄れるから人気なのかも。
鳴子峡近くにあるカフェ「−峡 kyo− こけし堂」で休憩。
今年の紅葉は、夏の暑さの影響で、まだらだったり、千切れていたりするらしい。

鳴子温泉郷は、「鳴子温泉」「東鳴子温泉」「川渡温泉」「中山平温泉」「鬼首温泉」の5つの温泉地からなる大きな温泉郷で、源泉の数はなんと370本もあるという。(現在未利用の源泉を含む)

まずは鳴子温泉駅前に車を停めて、メイン通りへ。鳴子峡散策で冷えた身体を、きつね蕎麦で内側から温める。宮城のそばは、中華麺ではなくちゃんと蕎麦だった。

鳴子温泉駅の前には足湯があった。
メインストリート「こけし通り」
中でも目をひく「桜井こけし店」
つやつやの球形。職人さんの技術が光っている。
猫に招かれて。
こけしにはさまざまな顔があるんだと分かる、カフェのディスプレイ。
なぜか横浜の下町を思い出すような温泉街だった。

いくつかこけし屋さんを見て回った。鳴子峡で立ち寄ったカフェ「−峡− kyo こけし堂」の母体である、桜井こけし店でお土産を購入することに。関西風のイントネーションで話すお姉さんが、まるで青山のセレクトショップかのように丁寧で細かな接客をしてくれる。こけしの販売が天職なのではと思ってしまうほど、ぴったりと店の雰囲気に似合っていた。海外の方には流暢な英語で対応していて超クール。

こけしは決して安いものではないので、ただ店頭に置いてあるだけではなかなか買う気にならないけれど、購買意欲がわいた。お姉さんのおかげで、いい買い物ができました。

鳴子温泉駅から10分も走らないうちに、最終目的地である東鳴子温泉へ到着。ここは、20代の会社員時代、働きすぎてぼろぼろになり、どこか遠くへ逃げ出したいと訪れた思い出の温泉街だ。2泊3日の滞在で、折れた心と身体が回復していったことで大好きになった場所。実に5年ぶりの訪問である。

「鳴子御殿湯駅」は小さな無人駅。
ちゃんと理由を言ってくれる人、好。
版画家 大野 隆司さんの「猫こけし」をモチーフにした絵が飾られている。どれもいい言葉。
この看板も大野さんの作品。再会がとっても嬉しかった。
「なるまん」とは一体なんでしょう?気になった方は東鳴子温泉へ。
お土産屋さん「なるみストアー」にも大きなこけしが。
この旅では私が運転手。夫が飲んでいたビール「鳴子の風」はフルーティでおいしかったそう。

宿泊は東鳴子温泉にある「旅館大沼」。120年の歴史をもつ老舗の温泉宿で、和洋室の他に自炊もできる湯治館があり、8種のお風呂がたのしめるという温泉好きにはたまらないお宿。以前泊まりに来た時に、長期で滞在中の湯治客が自炊している姿を見て、どこか憧れのような気持ちを抱いた。

その記憶をもとに、今回は湯治館を予約した。たった一泊二日の滞在では湯治といえるかは疑問だが、気分だけでも味わいたかった。お部屋はこじんまりとして簡素だったけど、十分満足できた。

最近は、少し質素に感じるくらいの昔ながらの温泉宿が気分だ。お洒落できれいなものはこれからいくらでも作れるけれど、古き良きお宿は、今泊まらなければいつなくなってしまうかわからない。改装でぴかぴかに生まれ変わってしまうこともよくある。今しかできない経験がしたいという気持ちで、昔ながらを求めてしまう。

干し柿のシーズン。
目の湯。大浴場にも大きな目が描かれていて、もやの中で異様な存在感を放っている。
予約制の貸切露天風呂。入っているうちに日が暮れて真っ暗になった。
室内の貸切風呂もあって、こちらは空いていれば何度でも入浴できる。
やっぱり温泉はいいものだ。

大好きな東鳴子温泉。5年前に訪れた時は、雪が降り積もる2月だった。今回は秋の姿を見ることができたので、季節を変えてまた訪れたい。

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