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出る杭は打たない

「出る杭は打たれる」ということわざがある。頭角を現す人は、何かと人から憎まれたり妬まれたりすることの例えである。

しかしお笑い芸人という立場においては、しばしば「出る杭」である方が功を奏す場面は少なくない。新しい笑いを生み出し、世間がアッと驚く発明をする芸人さんはいつだって「出る杭」であるはずだ。そもそもお笑い芸人という職業が世間一般から見れば「出る杭」だから、芸人たるもの「出る杭は打たれる」ということわざは念頭に置きながらも「出る杭は打たない」、むしろ自ら出る杭となるべしという姿勢を持ち合わせていなければ、時代の寵児にはなれないのだ。

~序~

先日、イタリア料理屋さんでのお笑いライブに、人力舎同期のトリオ・オールドトムと共に参加した。週刊少年ヴィーナスとして名高い貴女が「アルバイト先でお笑いイベントを主催したい」とのことで、僕は二つ返事でお茶の子さいさいと馳せ参じたのである。

女子大生がバイト先のイタリア料理屋でお笑いライブを主催するというのは、良い意味でなかなかの「出る杭」である。「出る杭」が「出る杭」を集めると、すべての杭が出ているから相対的に「出る杭」は無くなる。そのようなハイスタンダードの場でこそ、壁をぶち破る「もっと出る杭」が生まれる。

「もっと出る杭」を目指した僕たちの『出る杭エピソード』に興味がある方には、本稿をぜひ最後までお読みいただきたい。

~本~

会場は高田馬場のイタリア料理屋さん。入り時間より10分ほど早く到着すると、前の団体さんがまだ宴会をしていた。

年の頃は50代であろうか、ロマンスグレイの髪がつややかな紳士淑女たちが10名ほど、テーブルを囲んでにこやかに談笑していらっしゃった。世代が統一されていることから、彼らはおそらく学生時代の友人であろうと僕は推察した。アノ頃を思い出して、久しぶりに聖地高田馬場で一杯やろうじゃないかといった雰囲気だった。

彼らはしきりに「当時はうんぬん、今はかんぬん」と二つの時代を比較しては「アノ頃は良かった」と結論づけていた。こうしてアノ頃と同じ面々で集まることができている今も十分良かろうと、僕は若造らしい生意気な感想を持ちながら盗み聞いていた。

彼らにとっては聖地巡礼の夜、思い出話に大きな花が咲いていた。ロマンスグレイの彼らの頬は、熟した桃のようにほのかに赤かった。その赤色はほのかでありながら、オレたちゃ人生100年まだまだ旬、ここは若者だけの聖地にあらずということを、生意気な青い若造に痛感させるに十分な赤色だった。

ワインがたくさん開いていた。僕は下戸なのでわからないが、思い出にはどうやら赤が合うらしい。

~告~

①同期ライブ。来てほしいランキング1位です。

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『バカ爆走!』26期同期ライブ!!
日時:12月1日(日) 17:00~
会場:新宿Fu-
料金:前売1000円

②何やら爆破するライブです。新しいもの好きなあなたに。

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『裏笑いが起きた瞬間爆破ライブ』
日時:12月11日(水) 20:00~
会場:中野Vスタジオ
料金:1000円

③また歌います。笑いは一切ありません。

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『どっきん!』年末恒例!紅白歌うま合戦!
日時:12月21日(土) 17:30~
会場:新宿バティオス
料金:前売1000円

④日曜の昼。下北沢。ゲストは笑撃戦隊さん。たくさんネタが見られます。

『E-3セレクションバトル』
日時:12月22日(日) 12:30~
会場:下北沢シアターミネルヴァ
料金:前売1000円

~結~

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ライブ終わりに写真を撮った。店長さんと、観に来てくれた僕の大学時代の友人と共に。

オールドトムは本来トリオだが、なぜか真ん中の六くんがいない。

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一説によると、六は「旅行の帰りの便が遅れて欠席」とのことだった。旅行でライブを欠席するというのはなかなかの「出る杭」だが、それが彼なりの時代の寵児を目指しての行動だとしたら、むしろ褒められるべきことである。だから、出る杭は打たない。

そして相方の丸山くんであるが、一説によるとこの日はライブ前に送別会があったらしく、酒気帯びでライブに出演していた。これもかなりの「出る杭」だが、酒気帯びパフォーマンスによる新しい笑いを求めての事前準備、そして彼なりの出演者たちへのサプライズ演出だとしたらそのサービス精神はむしろ賞賛されるべきものである。だからやはり、出る杭は打たない。

そんな酒気帯び丸山くんは、店長さんが同い年だと分かるなり態度を急変し、

「なんだよ!先に言えよ!ほら、喋ってないで早くハイボール作れ!」

と『本来決して言うべきではないが同い年であるならもしかしたら許されるかもしれない冗談』で笑いを誘って(?)いた。周囲のメンバーで店長さんに謝罪をすると店長さんは、

「全然いいんです!むしろ緊張を解いて接してくださって嬉しいです!」

と、同い年とは思えないオトナな対応で事を収めてくださった。

帰り際、オトナな店長さんに「またよろしくお願いします!」と笑顔で見送っていただいた。顔をあげた店長さんの目にイタリアン・マフィアの影が見えたという説があるが、真相は藪の中である。

出る杭は打たない、時と場合に応じて。

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