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【ヒデコ日記③】 離婚は遺伝だでね

facebookで、ヒデコ(母、でぶ)のことを「ヒデコ日記」というタイトルでたまに書いている。ヒデコにまつわるコラムも電子書籍で書いたことがある。その原稿を時系列もバラバラながら、ここに少しずつアップして残していこうと思う。ヒデコがこの世を去った時、読んで思い出すために。

僕の母、ヒデコ(でぶ)が僕によく言っていた口癖、「離婚は遺伝だでね」。
「〜だで」は静岡県西部の方言(遠州弁)で、「〜だから」を意味する。
僕の父、正幸(メガネ)の家系は、離婚した人ばかりだ。正幸の兄姉6人、正幸以外、全員が離婚している。その娘たち(父方の僕のいとこ)も離婚している。
そのことを、ヒデコは僕らにあるごとに僕ら息子にこう言った。

「お父さんとこは離婚の家系だで。離婚は遺伝だでね、おっかないに。
 目も悪い。お母さんらはメガネなんか誰一人いないのに、
 新城(正幸の実家。愛知県新城市)に親戚集まると全員メガネだら?
 ありゃ近眼の家系だに。飲んべの家系だしね。兄貴もアル中。
 ほんで離婚の家系だら?どうしようもないに」

よくもそこまで馬鹿にするなっていうぐらい、ヒデコは自分が結婚した相手(正幸)の実家のことをボロクソ言った。父の威厳がなくなるという意味で、ヒデコの教えは間違っている。だが、そんなヒデコ式考え方は、僕が結婚して15年以上たつ今、実はそれなりに「なるほど」と思うようになった。
「離婚は遺伝だでね」
ヒデコ曰く、親が離婚してると、その子供も離婚しやすい。親が離婚していると、我が子の離婚を親が阻止できないから。だから離婚してる家は親子そろって離婚してることが多い。だがら遺伝なのだと。確かにヒデコ家系は離婚者がいない。
わからなくもないが、偏見といえば偏見のような気もする。
そしてもう1つ、ヒデコの離婚論を思い出した。
「離婚するひとは、くそマジメすぎだに」
まじめで何が悪い、とも思うが、まじめすぎる性格は、逆に結婚生活をギクシャクさせるという。ある程度の鈍感力を備えていれば、ある程度のことは、許せてしまうという。

「人間、誰にだって腹たつし、誰にだって許せないことがある。
 ただ、それを許せないほど己は立派なのか、と自分を問いただしたとき、
 自分だって、そんなに出来た人間じゃない。
 だったら、相手を許してあげたっていいら?」というのがヒデコ式らしい。

そんなヒデコの教えは、僕の結婚生活で、ことあるごとに、壁を乗り越えさせてくれている。そして、ヒデコのその教えを、知らず知らずのうちに僕の妻(怖い)にも洗脳したことで、乗り越えてくれているような気がしている。

「誰と結婚したって、うまくいくし、うまくいかないこともあるでね。
 そんなら乗り越える工夫をする、
 そこを楽しむにはどうしたらいいか考える。それが結婚だに~。」

とよく言っていたヒデコ。正幸の悪口ばかりを言いながら、なんだかんだいって今も別れず続いている。正幸をほったらかして、一人原チャリを飛ばし、美味しいと噂のとんかつを食べに出かけるヒデコの後ろ姿は、何だか動物みたいで幸せそうだ。そんなヒデコの結婚論で、この世に1組でも結婚したくなるカップルが増え、またこの世から1組でも離婚する夫婦が減ったら本望だ。
と言いながら、ある日、僕が離婚してたら笑ってください。
(2013年の電子書籍「離婚は遺伝だでね」より)



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