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RX 4章3話 天命 ♪Crossing A Line



あらすじ

悪役レスラーRXの壮絶過去 17才の成長物語
1章 病弱な少年は、レスラーの強さに憧れる
2章 事件が起きて居場所を失い、独りで苦悩
3章 ストレスで絶望感に襲われ、精神病院へ
4章 退院後、うよ曲折を経て希望を見つける


前回はこちら ↓



RX 〜悩める若者への処方箋〜
🔵第4章 ライムライト 3話 天命




自身への殺意をむき出す、凶暴なカッター。

早く死ねよと問い詰める、自暴自棄の末路。

誰か僕を止めてくれ。


「自殺は命を粗末にしてる。

 生きたくても生きれない人がいるのに」


ふざけるな、この野郎。偉そうな評論家め。

テレビを蹴り倒し、焦げ臭い火花が飛んだ。


誰もお前を止められない。

 首を締めろ、動脈を切れ、飛び降りろ。

自分を殺す準備を始め、迎えた決行の日。


突然、電話が鳴り、死線をぶった切られる。

母から早口で伝えられた、父の深刻な病態。


僕の父は長い間、重病を患っている。

 手術、再発、進行。ついに山が来た。


自殺計画は中止だ。

緊迫する車内から木々を眺め、

 母と共に病院へ駆けつけた。



寝たきりの父は、うつろな意識。

 僕は哀れみ、記憶を逆のぼる。


天が与えた多難。報われない定め。

 不幸ばかりの、黒なる星に生まれた父。


相続された多額の借金を返すために、

何十年間も工場で、

 朝早くから夜遅くまで働きづめ。


楽な仕事は一つもない。それが父の口ぐせ。

肉体労働、劣悪な環境、過労で心身を酷使。


ある日、体が機械に挟まれ、手指を切断。

通勤中、交通事故で背骨が折れたことも。


子供には苦労させまいと、

塾や家庭教師など、出費を惜しまなかったが


当時の僕には苦痛でしかなく、

 ありがた迷惑、逆効果、成績は低迷。


食卓は険悪になり、夫婦ゲンカ。

 意見が対立、深まる確執、何度も衝突。

他人のように冷えきった二人は離婚の間近。


病床には、昔の家族写真が飾ってある。

 幸せそうな家庭。あどけない笑顔の僕。

いつしか笑えなくなってしまった。


誰にもSOSを気づいてもらえない僕は、

心を閉ざし、距離を置き、病んでいった。



「プロレスは、どうしたんだ?」

弱々しい声の父。意外な言葉に驚く僕。


レスラーになれる人間は一握りだ、

 と言って難色を示していたのに。


柔道で結果を残せたら、夢を目指していい。

その約束は成せずじまいだが、

 親はずっと近くで見てきた。

目を輝かせ、プロレスに夢中だった我が子を。


命の終わりに差しかかり、

 明日が来る保証のない父は、

運を悟り、世を達観していた。


今を生きて、本当に好きな事をやりなさい。

人生は
 一回きりのチャンスだから・・・



今にも消えそうなロウソクの静けさ、

切なさから目を背けた。


母は心労に耐えきれず、やつれた顔。

家族みんなズタボロだ。


別れ際。

闘病中の父へ気軽に、頑張ってとは言えず、

無言で立ち去ると横の患者が嫌味を吐いた。

「薄情な息子だな」


親から子へ、

 受け継がれた血が泣いていないか。

情けない、でき損ない。何がしたいんだ僕は。


(つづく)


♪イメージソング

マイク・シノダ「クロッシング・ア・ライン」
3-1で紹介したバンド リンキンパークのボーカル
が亡くなった翌年に、もう一人のボーカルが哀悼の意を込めて歌った追悼ソングです🎼


大切な人を失ったショック
その別れから立ち直れるようになるまでは、
たくさんの辛さ、苦しさ、悲しさ、寂しさ
時が経ってもなかなか闇は消化できないが、

やがて、
目の前の現実を昇華させる光が見えてくる。
ようやく気持ちの整理がついたとき、
明日へのスタートラインを越えてゆけ・・・



🔵次回は 4章 4話 破片
9/10(日)に投稿予定です🧢


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今週もご通読ありがとうございました🙌
これからもブログとSNSがんばります!


【重大予告】

3ヶ月後、自作小説 RX 💀
"メインイベント"開始…

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