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悪夢の“意外な”効用と対処法

「健康に役立つエビデンス」マガジン

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悪夢はなぜみる?

睡眠のリズムやパターンが崩れると悪夢に限らず、夢をよく覚えているようになりやすいようです(※1)。睡眠に作用する種類の薬(抗不安剤、抗生物質、アレルギー性鼻炎薬など)を服用すると睡眠のリズムがいつもと異なり、レム睡眠(浅い眠り)の時間が長くなり、結果リアルな夢を見やすくなるのではないかと推測されています。薬の他にもアルコールなども睡眠のリズムを壊すので、夢を見やすくさせるでしょう。

睡眠の質をチェックするデバイス

睡眠の質は、近年さまざまなデバイスで計測することができるようになってきていますが、そのなかでもOura Ring(オーラリング)はかなり精度と(お値段も)高いようです。

最近ではApple Watchなども睡眠の質をチェックできる機能があるようですね。


悪夢の効用?

89人を対象とした小規模な研究ですが、悪夢をみた人のほうが、起きている間に体験する恐怖に対して強くなる傾向があることがわかりました(※3)。怖い夢をみるほど、夢のなかで起きるかもしれない怖い出来事に対しての経験値が増え、結果、心構えのようなのが形成されているようです。

これに近い研究結果があり、それは、

テストにまえに悪夢を見る人ほど成績が良かった

というもの(※6)。この研究は2014年フランスのソルボンヌ大学におけ700人の学生を対象としたもので、「テストに関する夢をみたかどうか」を調査したものでした。対象の70%の学生がテストに関する夢をみており、そのうち80%んぼ学生は遅刻したり、病気したり、忘れ物をするなどの悪夢をみていました。そして悪夢をみた結果、それらに対しての警戒心が強くなり、現実の世界で対処しようとしているのではないかと推測されています。つまり危機を夢で体験し、現実の世界で対処した結果、テストの成績が良くなった、ということです。こちらの研究でも夢での体験が予行練習になったと言えます。


悪夢を減らす対処法(1)

効用があっても怖いから悪夢はみたくない!という方には、悪夢をみなくなる方法をご紹介します。ドイツのドレスデン工科大学の研究で、トラウマ(PTSD)に苦しむ男女40人を対象にした研究があります(※3)。この研究では対象を(A)良い香りを嗅ぎながら寝るグループと(B)普通に寝るの2つのグループにわけて5日間の経過をみました。すると

良い香りを嗅いだグループは悪夢を見にくくなった

という結果になりました。このとき嗅いだ香りは、バラ、ラベンダー、オレンジ、ピーチ(の中から好きなものを選びました)。感情と嗅覚は脳的に近いものらしく、香りが感情に作用する影響力は強いようです。アロマに不安を減らす効果はそんな脳的な構造が背景にあるようです。またラベンダーなどの香りには、睡眠の質を向上する効果が2014年の系統的なレビューで明らかにされています(※4)。

ということでキャンドルなら火には気をつけて、寝室を良いに匂いにして、かつ室温を下げておくと睡眠の質があがり、悪夢がみづらくなるかもです。お試しあれ。


悪夢を減らす対処法(2)

もうひとつ悪夢対策があって、それは、

体の右側を下にして寝る

というもの(笑)。「ほんとー!?」と疑いたくなりますが、63人と小規模ながら実験(※6)による結果です。夢と寝相の関係を調べた実験で、それによると

  • 体の左側を下にして寝る人の40.9%が悪夢を見やすい傾向があった

  • 体の右側を下にして寝る人のほうが、やすらぎや安心感を抱く傾向があった

  • 体の右側を下にして寝るほうが睡眠の質が高かった

という結果になりました。お試しあれ!

夢って覚えておいて良いのか?

夢に点数をつけるだけでクリエイティブになる、という結論をだした研究があります(※7)。なぜかという夢は無意識の領域で、意識からはみ出した思考やアイデアを生み出す領域であり、そこと意識が繋がりやすくなるからだそうです。夢と現実の思考が混ざり合うことでクリエイティブになっていくようなので、夢日記などつけてみるとクリエイティブになっていくかもです。

まとめ

悪夢に苦しむことがあるなら、悪夢の効用を知るとけっこう救われるかもです。それでもみたくないときは、アロマで良い匂いにして、室温を16〜22度くらいまで下げた寝室で右を下にして寝ると良いでしょう。

参照

※1:Medication-induced sleep disturbances (2011)


※2:Fear in dreams and in wakefulness: Evidence for day/night affective homeostasis


※3:Nocturnal Olfactory Stimulation for Improvement of Sleep Quality in Patients With Posttraumatic Stress Disorder: A Randomized Exploratory Intervention Trial (2019)


※4:A systematic review of the effect of inhaled essential oils on sleep


※5:Efficacy of Modafinil for Dissociative Identity Disorder with Hypersomnia

http://www.sleepandhypnosis.org/ing/Pdf/6a3c859fe3ec41099b27bbaa1d6064de.pdf


※6:Will students pass a competitive exam that they failed in their dreams? (2014)


※7:Minding the Dreamer Within: An Experimental Study on the Effects of Enhanced Dream Recall on Creative Thinking (2014)

https://www.researchgate.net/publication/309596187_Minding_the_Dreamer_Within_An_Experimental_Study_on_the_Effects_of_Enhanced_Dream_Recall_on_Creative_Thinking


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