米大統領選;ハリス氏の経済政策公約
米大統領選に絡んで、8/16に民主党のハリス候補が打ち出した経済政策について共有します。ハリス氏は[機会の経済]と自身の政策を評しており、機会均等/機会平等をベースとした経済政策を掲げています。
今回のメインターゲットは[物価安定][中間層支援]で、バイデン政権下での物価高騰に対する改善/弥縫策であり、民主党への逆風/ラストベルトでの得票に向けたものとしては妥当と。
1;全体概観
経済政策の詳細を見ていくと、[物価統制(制限)][法人税引上げ][弱者層への配分強化]といった面が目立っており、左派的な色合いが強いきらいが。
トランプ氏もハリス氏への政策に対しては[価格統制色の強さ]や[市場メカニズムの歪曲]と批判するとともに、昨今の経済情勢を鑑みるとが米国物価上昇率は落ち着いてきている…。また、財源/議会承認/財政赤字といった懸念点も多く、実現可能性には疑問が大きいところであります。
今後想定される政策綱領の発表に先立って、大統領選で出遅れたハリス氏の印象付けともみることができます…
2;経済政策
2-1;物価安定化
大統領就任後の最初の100日で物価を引き下げると宣言、特に大企業による不当な価格釣上げを阻止する。
食品企業による不当な値付けを禁じたり、アルゴリズムを用いた不当な賃料調整を禁止する連邦法の成立を促すとともに、FTCの権限強化を通じた企業の過大利益の抑制や、企業結合審査の強化を制定
2-2;住宅促進策
任期4年間で300万戸の新規住宅建設を目指し、実需促進に向けて下記施策を進める
(建設会社向け) Starter住宅の建設会社に税優遇&補助金を提供することで建設費用の低減を目指す。予算規模は400億ドルを想定
(住宅購入者向け) 初めての住宅購入者に頭金2.5万ドルを支給し、在任期間4年間で推定400万世帯が対象になり得る試算
一方で住宅価格の過熱抑制に向けて下記制限を施行
(住宅投資家向け) 住宅を大量購入する投資家への税制優遇を撤廃する法案の成立も目指す。ハリス氏は[何百もの住宅を購入し、極端に高い値段で貸し出している企業があり、アメリカンドリームを阻害している]と批判
2-3;児童/低所得層税控除
児童家庭及び低所得者層に対する減税により広範な疑似セーフティネットを整備することを目指す
最大3,600ドルの児童税額控除の復活及び、新しく子供が生まれた家庭へ1年間で最大6,000ドルの税控除を実施。また、低所得層の所得税控除を最大1,500ドルとする
2-4;予算源たる税対策
法人税の引上げを検討しており、現状に21%から28%への引上げで予算確保を行う方針。一方で[チップ課税の禁止][年収40万ドル未満の人への税据え置き]を掲げる
3;社会政策
中絶問題に関しては[人工妊娠中絶は女性の権利]であるとして、議会に対して1973年の[Roe v. Wade]の保護/成文化する法案を可決するよう議会に求める。22年に連邦最高裁は上記判決を棄却しており、連邦レベルでの人工妊娠中絶への姿勢は禁止認識に振れている
医療政策ではメディケア制度強化と製薬企業への規制強化を軸に展開する方針。メディケアに加入する高齢者向けの処方薬価格引き下げ交渉に向け、バイデン政権の方向性を維持して製薬企業との交渉を加速。加えて、[全国民に対してインスリン価格を35ドルに制限][全国民に対して処方薬の自己負担額を年間2,000ドルに制限]といったこと掲げる
移民政策では[市民権獲得への道]を伴う包括的な移民改革を支持するスタンスだが、詳細は不明。国境警備法案(一定条件下での国境閉鎖&亡命承認権限を副大統領に付与)の復活を促すと共に、国境警備に絡む雇用促進を訴える(選挙広告では[数千人の国境警備員雇用][フェンニタル取締りへのTech活用][人身売買を阻止]への予算計上を喧伝)
4;外交政策
ほとんど触れられないが、現状の中東情勢については中立の立場か?
24/07にイスラエル;ネタニヤフ首相訪米時の会談で[イスラエルの自衛権は支持する]と明言、一方で[イスラエルのハマス攻撃に拠る民間人被害は看過しえない]とも
5;他国内政策
投票方法の選択肢を維持する[投票の自由法][ジョン・ルイス投票権促進法]の可決を議会に促す。
銃規制は強化方針で、[保有者の身元調査][攻撃用武器の禁止]等を定めるレッドフラッグ法の可決を促す