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彼氏の浮気から立ち直れた理由

これは僕自身の経験ではなく、ゲイの知人から先日伺って、とても興味深かった話。

「最近、彼氏と別れたんだよね」
「そうなんだ……どうして別れちゃったの?」
「彼が浮気してたんだよ」
知人は、失恋の経緯を聞かせてくれた。


彼とは数年前に付き合い、昨年からは1LDKのマンションでいっしょに住み始め、当初はなんら問題のない仲睦まじいカップルだったのだけど、雲行きが怪しくなってきたのは今年の春。

彼がよく家を空けるようになった。

家事は任せっきり。
彼が飼いたいと言ったから飼い始めた犬の面倒も、任せっきり。
夜遅くに帰って来たと思えば、そのまま寝るだけ。朝帰りすることもあった。
あやしい。

浮気しているだろうことは容易に想像できた。
近頃はすれ違いばかりで、会話が無い。セックスなんてもちろん無い。
もう関係を終わらすべきだろうかと、最後の決定打のつもりで、彼のスマホを盗み見た。

案の定、SNSのDMでやりとりが見つかった。
“会いたい”
“今日は楽しかったね”
“またすぐに会おうね”
“好きだよ”
浮気の証拠として、充分すぎるほどの痕跡の数々。
こっちは一人でおとなしくステイホームして、犬の世話までしているのに。はらわたが煮えくり返るような怒りが込み上げてきた。
どんな奴にうつつを抜かしているのか、浮気相手の顔を見てやろうと、アイコンをタップしてみた。


「そしたらさ、その浮気相手が、すげぇブスだったんだよね

知人は神妙な面持ちだった。いたって真面目な話である。
でも、笑っちゃいけないけど、僕は耐えられなくてちょっと吹き出した。

問い詰めたところ、彼は素直に浮気を認め、「別れたくない」と心から謝罪したという。
けれど、関係が修復されることはなかった。
「浮気相手がブスだったのが、彼に未練を残さずに別れられるきっかけになった」とのことだった。


僕だったらどうだろう、と思った。
もしも自分の恋人の浮気相手が、容姿はさておき、「僕の方が魅力的だ!」と自信を持って思えるような相手だったら。
僕だったら、浮気自体を許してしまうかもしれない。
所詮、浮気は浮気。
「浮気相手が到達できない恋人という地位に僕はいる」という安心感と、浮気相手への優越感を、より強く得ることができるから。
(そうとでも思わないとやっていけない、ということでもあるけれど。)

逆に、浮気相手が僕なんかよりも遥かに魅力的な人だったら。
僕なら、そっちの方が未練なく別れてしまうかもしれない。
「あんな人には敵わない。僕はこれにて身を引きます」と。


「それは違うよ。もっと自分を大事にしなよ」と知人は言った。

「そもそも浮気の証拠が見つかった時点で、自分の中で彼への想いが失望に変わってた。
ああ、自分はなんてつまらない男と付き合ってたんだろう、って。
しかも相手がブスだったおかげで、心置きなく彼を蔑むことができた。
浮気相手がブスだったから別れたくなったんじゃなくて、それは彼との別れに踏み切るための後押しのひとつに過ぎなかった。
自分を大事にするために別れたんだよ」

ハッとさせられた。
確かに、僕だったらどうだろう、と想像したとき、僕は「浮気されたことは仕方がない」と既に諦めた上で考えていた。
でも、本当に仕方のないことなんだろうか。

もちろん、いろんな考え方があって良い。
浮気のひとつやふたつ、と黙認することで関係が上手くいっているカップルや夫婦は意外と多いんじゃないかと思う。
社会では、波風を立てないように見て見ぬふりをするのが良しとされる場面が多い。
けれど何事も、もっと自分のことを一番に考えて行動しても良いのかもしれない。


そう教えてくれた知人は、すっかり失恋から立ち直っているようだった。
自分を大事にできる人は強いな、と心から思った。

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