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言葉にできないそんな夜。見てる?

これは番組のタイトルである。
NHKのEテレで放送されているのだけれど、
私が気づいた時はすでに
第2シーズンの20.ということだった。
テーマソングはラッキーキリマンジャロで、
今っぽさ全開である。
ああもっと早くに知りたかったよ。

どのような番組かというと、
日常の中で経験するモヤモヤや、
心が動いたあの瞬間を文章にしてみよう、
という内容だ。
こう記すと堅苦しい教養番組のように
思われるかもしれないけれど、
あくまでもどこまでもカジュアル。
スピードワゴンの小沢一敬が司会を務め、
レギュラーとして桐山照史が参加している。
2,3回ごとに変わるゲストは
作家、音楽家、映画監督、女優など、
普段から表現することを仕事にしている人達だ。
このゲスト陣がなかなかすごいのである。
私が見始めてからのゲストを挙げても、

橋口洋平(wacci)
増子直純(怒髪天)
金原ひとみ
吉澤嘉代子
松居大悟
アヴちゃん
高橋ひかる
町田その子
etc.

実に豪華だ。
なかでも動く金原ひとみさんを拝見したのは
初めてのことだったので、
とても感激した。


番組で取り上げられる
シチュエーションテーマの例はこうだ。

・恋人を初めて下の名前で呼んだとき
・推しを見つけてしまったとき
・会話が続かず気まずい沈黙が流れたとき
・燃えるような嫉妬を感じたとき
・笑いながら話しかけられたのに
  聞き取れなかったとき
・圧倒的片思い
・美しい夕焼け
・美味しい以上に美味しいとき
・大丈夫じゃないのに大丈夫と言ってしまうとき
・人と比べて焦りを感じるとき

などなど。  
普段はわざわざ文章にして
表したりはしない感情だろうと思う。
それらをゲスト陣が言葉として表現し合ったり、
文豪や最近の作家、音楽家らが、
自らの作品の中でその気持ちをどう描写したかを
紐解いてゆくのだ。
太宰治、三島由紀夫、萩原朔太郎、
西加奈子、朝井リョウ、恩田陸、ジェーンスー、
どの作家をとっても
巧みな言葉選びが光っている。
なんとかして自分の中にある思いや感情を
言葉にしてみようとする試みに、
胸が高鳴るのだ。
ああそうそうそうなんだよ!
それが言いたかったんだよ!の
アハ体験目白押しである。


そしてレギュラーとして毎回登場する
桐山照史さんが素晴らしく良い。
某アイドルグループに属する彼なのだが、
思いを言葉にする能力は並大抵のものではない。
『推しを見つけてしまった瞬間』が
テーマだった時、
現役アイドルである桐山さんが
『推されている時はどんな感覚なのか』と
問われた時の答えに、私は唸った。
彼はこう言った。

「たぶん僕は
(ファンの人達が)
追いつけないように走ってるんです」

背を向けて走るのではなく、
ファンの方を向いたまま、
タッチされることなく
後ろに下がりながら走る感覚。
ということだった。
そんなことを言語化したアイドルが
今までいただろうか。
素晴らしいよ、桐山さん。
その洞察力、尊敬するよ。

大丈夫じゃないのに大丈夫といってしまうとき
がテーマの際の、桐山さんの発言。

「人間、嘘つく時って2回言うんですよね。
(大丈夫?って聞かれた時)
大丈夫じゃないのに『大丈夫大丈夫』とか
やってないのに『やったやった』とか。
それは人間が出す信号なんでしょうね」




毎日たくさんの感情が
心の中に沸き起こっている。
とても大きなものから
ほんの一瞬の微細なものまで、
今日だけでも一体幾つの感情や思いが
胸をよぎっただろう。
心の底に沈めたまま
なんでもないような顔をして
日々を過ごしているけれど、
それを思い切って形にしてみるのは
気持ちの整理に役立ちそうだ。
言葉にしづらいけれど
ばん!と目の前に書き表し、
ああ私はこんな気持ちだったよね、と
俯瞰することは、
自分を知ることに繋がるのだろう。
感情や思いを
心の抽斗の中にきちんと畳んでしまい込んで、
自分の一部として正しく保管できるのだと思う。


自分の気持ちを言葉にできたとき。

あなたなら。
こんなとき、なんて言う?


文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。