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6月最終便:言語化とちょっと距離をとる

Toマシュウさん

 1週間と1日空いてしまい、7月になってしまいました。(そして第2便を往復書簡に紐づけて公開できていなかったようです。)もう6月も終わってしまい、あっという間に夏ですね。
さて、最終便ですから、すこし振り返りつつ書いていきたいと思います。と言いつつ、ざっくりと今月は「言語化」の話をしていましたね。
そしてそれはちょっと暴力的というか、“カチコチ”しているものだというのが、お互いの認識だったように思います。その対症療法として、効率化を求めない姿勢、すきまに宿るおかしみということを、お互いに出し合ったという感じでしょうか。

 話はすこしかわって、先週仲間と読書会をしたのですが、その本の中で「フェラーリのふりをしていないか?」という投げかけが書かれていました。「そんなに速く走れないのに、あたかも自分はフェラーリのように走れるというふりをして生きていないか?」ということです。見栄もあるかもしれませんが、それ以上にフェラーリくらい速く強くスタイリッシュでなければ、そこに“いられない”と思ってしまうから、演じてしまうのではないかと、そこでは語られていました。
 


 「言語化」ってなんなのか。めちゃくちゃざっくりいうと、「説明すること」なんだと思います。「説明」は必要があるからすることです。曖昧な社会や、友だち、同僚や先輩、家族や企業など、自分のことを説明≒言語化し、自分の必要性や必然性を納得してもらうなり、認めてもらわないといけないとき、そう思ってしまうとき、説明しなければと思うはずです。つまり、自分がいかにフェラーリなのかを説明しないといけない感じがある、ということです。実際、就活における面接では自分のことを説明しなければいけないし、この前書いた支援の現場においても、個別の相談で支援員が結果的に求めているのは説明なわけです。(蛇足ですが研究なんていうのはその極地ですよね。)

 問題は、やはりその説明で示されるものに対して、一定の基準や有用性・有効性が示されなければならない、と、明確に定められていたり、実際にそう機能していたり、決まっていないけどそう思ってしまったりということなんじゃないでしょうか。例えば、就活の面接はわかりやすく、御社に対して自己の有用性を説明できないといけない“言語化”の場です。他には微妙な距離感の友人と話しているとき、相手が公私ともに順風満帆であると言っていたら、自分もある程度はやっているんだよと説明しないと思ってしまうことがあったりしませんか。(私はあります。)支援現場で聞くのは、自分は相談に値するほどの困っていないんじゃないか、自分程度は相談に乗ってもらうなんて申し訳ないという言葉で、彼/彼女らのなかには、相談するに値するような困難ということが想定されているようです。

 それぞれ内容や像は違いますが、自由に語るとか曖昧に喋ることが難しい「場」であると言えるでしょう。もちろん、そうではない「場」もたくさんあります。それは多く“雑談”と呼ばれるものでしょう。それはそれで重要です。ただ、「言語化」ということについて考えるならば、やはり雑談ではない場、説明を求められるような場や(ちゃんと)説明しなければならないと思ってしまうような空気を、どのようにほぐすことができるのか、を問題にしていきたい。むしろ、どうしたら自由に語ること、曖昧に喋ることが“雑談=意味のない散りゆく会話”に回収されずに、“かたい”説明的な「場」でもそう語ることができるようになるのかを考えていきたいと思います。


 では最後に、私が思うそのための手がかりを示して終わりたいと思います。ズバリ、「納得のハードルを下げて聴く」ことです。今まではどう語るのかについて話していましたが、着地点はどう聴くのかについてです。もう極めて個別的な小さな話ですが、まずはいろいろな人の話を受け入れて聴く、ということができたらいいのでは、と。いや、書いておいてこれで万事解決とは全然思っていません。我慢してきいていられない、とっ散らかった話とかもたくさんありますし、そもそも「自分の話を聴いてもらいたいのに…!」と思っているのに、なぜ人の話をきかにゃならんのか。けれど、もうそれくらいしか思いつかないのです。まずは自分から始めてみるということです。聴くのがしんどければ「フェラーリのふり」をやめてみるのもいいかもしれません。つまるところ、自身の鎧を脱いで、相手の構えのゆるさを許容していくというスタイルを持つことを目指す、ということです。そういうところからはじめて“すきま”が生じると思いますし、それが生じてこそ“おかしみ”も出てくるのではないでしょうか。

 そんな無理くりな結論ですが、6月はこれで締めくくります。それでは7月にまた会いましょう。ではでは。

from 片桐涼花


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