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警察の登場 | 虐待を疑われて子供を一時保護された夫婦の話

はじめに

病院から、次男がけいれんの再発もなく、順調に回復してきてくれているという説明をうけ、まもなく一般病棟に移れることを夫婦で喜んでいました。しかしそれも束の間、児童相談所と警察に通報したと告げられてしまいます。
虐待を疑われたのであろうことはショックでしたが、その瞬間はまだ「警察からは事情聴取、児童相談所からも話を聞かれるんだろうな…」くらいにしか思っていませんでした。
なお、すずもまことも逮捕はされておらず、この記事でまとめている事以外に警察から追加の捜査協力依頼はありません。

記事の概要

今回の記事では、児童相談所に子どもたちが一時保護されてしまった後、警察に事情聴取等をされた事や、その後の警察とのコミュニケーションの内容を整理・共有しています。

※私たちが経験したことや警察の担当者等とのやりとりを整理し、共有する趣旨で執筆していますので、警察に対する批判をするものではありません。

この記事を読んでほしい方

✅子どもが硬膜下血腫等の怪我をしてしまった方
✅揺さぶられっこ症候群を疑われている方
✅子どもが一時保護されてしまった方
✅警察から連絡がきた方(連絡が来る可能性がある方)

私たちと同じような経験をしている方の焦りや不安等を少しでも緩和できればという想いで記事を書いています。


警察の登場

病院から児童相談所と警察に情報共有をしたという話があったため、いずれ警察からも連絡があり、怪我の経緯等の事情聴取があるかもしれないと考えていました。
子どもたちが一時保護をされてしまい、家族がバラバラになってしまったというショックで気が滅入ってしまったため、入院費用の会計を済ませ、病院の外の空気を吸いに行こうとしました。すると、出口に背広を着た男女8名程が立っていました。要人が入院でもしているのかなと思って通り過ぎようとした時、背広を着た人の1人から名前を呼ばれ、周りから見えないようにこっそり警察手帳を提示されました。

「事情を伺いたいので、車に乗ってもらえますか?」と尋ねられ、これに応じると、すずとまことはそれぞれ別の車(黒いワゴン)の中に誘導されました。
想像していたよりも早い展開で正直驚きましたが、すずもまことも後ろめたいことややましいことは一切ありませんでしたし、子どもたちが一時保護されて家族がバラバラになってしまった絶望感と虚無感で無気力になってしまったため、捜査員に言われるがまま車に乗りました。

捜索差押え

・概要

黒いワゴンに乗ると、一番奥の席に誘導され、外に出られないように出口との間に捜査員が座りました。そして、別の捜査員から捜索差押許可状を提示され、身につけているものを全て見せるよう求められました。

ちなみに、捜索差押許可状は、身体の捜索差押えと場所の捜索差押えをすることができ、それぞれ別個に司法審査を経て発行されます。

車に乗り込んだ時は知らなかったのですが、次男の怪我を被疑事件として、すずとまことの身体の捜索差押許可状と自宅の捜索差押許可状が発行されていました。

なお、捜索差押許可状には「被疑者不明」とあったので、警察は誰が虐待をしたのかわからないという状態で捜索を実施していたようです。(すずとまことは被疑者ではなく、重要参考人という位置付けになります)

・身体の捜索差押え

まことは仕事柄法律の知識があるため、少し専門的な話もさせていただきます。
身体の捜索というのは、平たく言うとボディチェックとなります。よく映画とかドラマでもあるシーンです。実際に対象者の体に触れて、対象物を探したり、対象者が拒んだとしても強制的に捜索を実施できます。

ちなみに、道端で警官に声をかけられる職務質問(いわゆる職質)の一環で対象者の荷物をチェックする場合は、捜索差押えとは異なり強制力がないので、法律上は強制的に対象者の体に触れたり、荷物をチェックすることはできません。あくまで、対象者の同意を得た上で実施します。(実務上はグレーな部分が多い領域ではありますが、この記事では割愛します)

車の中で捜索差押許可状の提示を受けたため、荷物を全て捜査員に渡しました。そして、以下のものが差押え(警察が対象物を押収する事)られました。

・スマートフォン(プライベート)
・家の鍵
・免許証、クレジットカード

家の鍵を差押えたのは、家の捜索をするために必要であるためだと思われます。
また、免許証とクレジットカードを差押えたのは、捜索差押えの対象者に実施したことを確認する目的でしょう。(間違えて赤の他人に捜索差押えをしてしまったとなると、違法捜査となってしまうためです)

ちなみに、捜索差押許可状には身体拘束をする効力はありません。
なので、対象者が捜索を拒んで逃走したとしても、捜査員が無理やり対象者を押さえつけて捜索を実施することはできません。
しかし、捜索時に対象者を車の奥に座らせ、出口との間に捜査員が座ることで、対象者が逃走しようとした場合に公務執行妨害となる状況を作り出すことで、事実上対象者は逃走できないことになります。(対象者が逃走しようとすると、公務執行妨害の現行犯逮捕(身体拘束をする効力あり)できるため)

いずれにせよ、捜査員の指示には素直に従った方が良いので、すずもまことも全面的に捜査に協力しました。

・場所(自宅)の捜索差押え

すずとまことの身体の捜索差押えが完了した後、自宅の捜索も行われました。場所の捜索差押えは法律上居住者の立ち合いは認められていないので、実際に捜索されている様子は確認していませんが、以下の物が差押えられました。

・PC(社用、プライベート)
・スマートフォン(社用)
・タブレット端末
・ベビーベッド
・ベビーカー

PC、スマートフォン、タブレット端末が差押えられたのは、すずとまことのLINEやメールのやりとり、検索履歴、写真や動画などから、虐待をしたことが推認できる証拠がないかを確認するためだと思われます。

ベビーベッドについては、普段次男が使っていた物なのですが、差押えられた趣旨はいまいちわかりません。想像ですが、衛生状況を確認したり、不審な点がないかを調べたかったのだと思われます。

・差押物の還付

差押物は、捜査に必要がある期間は差押えが可能なので、こちらが催促したとしても早く戻ってくることはありません。とはいえ、警察が還付できる状態であるのに連絡を忘れていることもあるようなので、週1で担当者に電話をして還付可能か問い合わせをしていました。

全てが還付されたわけではありませんが、以下のスケジュールで差押物が還付されました。

【即日還付されたもの】
・家の鍵
・免許証、クレジットカード
・ベビーカー

【1ヶ月後に還付されたもの】
・スマートフォン(プライベート)
・PC(社用、プライベート)
・スマートフォン(社用)
・タブレット端末

【まだ還付されていないもの(記事公開時)】
・ベビーベッド

警察からは、PC、スマートフォン、タブレット端末は1週間くらいで還付できると言われましたが、結局1ヶ月後に還付されました。ネットで調べると、1ヶ月還付されないというのは良くあることのようなので、代機を用意してしまった方が良いかもしれません。

すずとまことは、親戚からスマートフォンを借りることができたので、1ヶ月間はこれを使って児童相談所や警察と連絡をとっていました。

1ヶ月という期間は長かったですが、スマートフォン等が還付されたという事は、おそらく虐待を推認するような証拠は見つからなかったという事なのだと思われます。(虐待をしていないので、すずとまことからすると当たり前ではあるのですが、日常生活には大きな支障がありました。)

ちなみに、スマートフォン等のデータは差押え時の状態でコピーされているので、還付されたとしても警察はその時のデータを改めて調べることが可能です。


もっとも、還付したスマートフォン等を利用した通信は、別途、通信傍受法に基づく令状等がない限り警察が内容を確認することはできません。(捜査員がいじったスマートフォン等をそのまま使うことに若干の抵抗感はありますが…)

ベビーベッドが未だに還付されない理由はいまいちわかりませんが、警察からは鑑識等で調べている訳ではなく、念の為保管しているだけだと言われています。次男が家庭復帰するまでは使用する予定がないのですが、家庭復帰する際には還付して欲しいものです。

ポリオグラフ検査

上記捜索差押えの後、すずとまことはそれぞれポリオグラフ検査というものを受けました。初めて聞く方も多いと思いますので、どのようなものか簡単にお伝えします。

【ポリオグラフ検査】
俗にウソ発見と言われていれるが、実際は記憶検査の一種。犯人しか知り得ない事件内容についての記憶を、生理反応の変化を基に判定する科学的鑑定法。

科学警察研究所HP

血圧、皮膚血流量、規準化脈波容積などの心臓血管系反応等を調べて、特定の質問に対して通常と異なる生理反応があるかを調べるもののようです。

具体的には、「次男に暴行したのはリビングですか?」「次男に暴行したのは寝室ですか?」のような、5W1Hの要素を少しずつ変えた質問を繰り返され、全て「いいえ」と回答するというものでした。
例えば、リビングについての質問のみ生理反応が異なると、リビングで虐待があった可能性が高いということで、次の捜査に繋げるといった使われ方をされるようです。

他の記事にも繰り返し書いていますが、すずもまことも次男を虐待した事はありません。しかしこの検査は、「虐待をした」と断定されているような質問形式でした。私たちはひたすら否定をするだけですが、「虐待した」と暗示をかけるような言葉を1時間半程繰り返して浴びせられるのは、精神的にかなり大きなダメージがありました。

捜査機関としては、「いいえ」という形で暴行を否定する回答をさせているだけなので、強制的に自白をさせている訳ではありません。また本人の同意を得た上で実施しているものなので、任意捜査として問題ないという事なのだと思いますが、検査を受けた身としてはトラウマになる位のストレスを感じてしまいました。

ポリオグラフ検査

後々、調べてわかったのですが、ポリオグラフ検査は、検査結果そのものに証拠としての価値が高いわけではなく、他に証拠がない場合に対象者にプレッシャーをかける目的で実施されることがあるようです。(事情聴取の前にポリオグラフ検査を実施したのは、プレッシャーをかけて自白しやすい状況にすることが目的なのかもしれません)

事情聴取

ポリオグラフ検査の後、すずとまことは別個に4時間程事情聴取を受けました。
細かいですが、すずとまことが受けたのは「取り調べ」ではなく、「事情聴取」となります。
すずとまことは、被疑者ではなく、重要参考人であるためです。

・取り調べ:被疑者(事件の犯人であることが疑われている者)から話を聞くこと
・事情聴取:重要参考人(事件について何か知っている可能性がある者)から話を聞くこと

事情聴取では、以下の事項を警察から尋ねられました。

・次男が怪我をした理由
・普段家事や育児をどのように分担していたか
・普段の生活パターン
・まことが次男に心臓マッサージをした際の流れ

これに加え、まことは次男に心臓マッサージをした際の再現をするよう求められました。捜査員10名程に囲まれて、赤ちゃんの人形を使って具体的な再現をし、その様子をビデオカメラで撮影されました。

まことが次男に心臓マッサージをした時の次男の様子は、目に焼きついているので再現自体は難しくはなかったのですが、動かない赤ちゃんの人形を使って再現した際、無呼吸になって脱力してしまった次男の様子と重なってしまい、気持ち悪くなってしまいました。

事情聴取が始まったのは午前11時ごとでしたが、このような事情聴取や心臓マッサージの再現等が終わると、あっという間に午後20時ごろになってしまっていました。
家の鍵は還付されていたので、家に帰る事はできたのですが、子どもたちがいない静かな家で一晩過ごす気持ちにはなれなかったため、家の近くの公衆電話(スマートフォンは全て差押えられてしまっていたため)からまことの実家に電話をかけ、そのまま実家に泊まりに行くことにしました。

スマートフォンがないと、電話ができないのはもちろんですが、電車にも乗れませんし、明日の天気さえわかりません。
子どもがいないと、家は静かで活気がないのはもちろんですが、時間の流れが遅く重く感じてしまいます。

間違いなく、この日がすずとまことにとって今までの人生で一番辛い日でした。
不安や恐怖で押しつぶされそうな状況ではありますが、押しつぶされてしまうと子どもたちが更に寂しい思いをしてしまう…

「再び家族全員が集まり、幸せな家庭を取り戻せるよう、やれる事はなんでもやろう。」すずとまことは、この気持ちを胸に電車に乗り、まことの実家に向かいました。


児童相談所に「一時保護」を告げられる話はこちら↓


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