【読後感】天才はあきらめた
前回オードリー若林さんが書いた「ナナメの夕暮れ」を読んでいたら、要所要所で山里さんのことが書かれていたので続けてこちらの本も読むことにした。
若林さんは山里さん(山ちゃん)を天才と呼び、その山ちゃんは天才を諦めたと言う。
一体どういうことなんだ。
■意外
と言ったら怒られてしまうかもしれないけれど、山ちゃんは実は学もあり超真面目な男だった。
風貌や周囲の取り扱いから、いわゆる”ガサツ”の部類の人間なのかと思っていたけれど実は正反対で、真面目ゆえのストイックさとネガティブさを両方持っており、つまりそれらを足して2で割らなかった感じにみえる(笑)。
要は極度な心配性なんだと思うけど、でもそれに対して怯えず立ち向かえるという才能を持っていた。
当然悩みながらだけど、それでも自分を奮い立たせている。なぜそうやってトップまで上り詰めることが出来たのか。
答えはシンプルだけど、強烈。
少し整理しながら振り返ってみたい。
■マネジメント
この本は言い換えればアンガーマネジメントのHow to本なのかもしれない。数々の難局(仕打ち)を燃料と割り切って、その怒りを利用して発奮していた。
若林さん曰く、山ちゃんは99%の良かった事より1%の良くなかった事に気が向いてしまうネガティブシンキングの持ち主で(つまりこれがストイックの正体なんだけど)、逆にそれが理由で生き辛さを感じている。
もしかしたらそういう性格で悩んでいる人も世の中にはたくさんいると思うけど、山ちゃんは悩んだついでにこの負の部分の使い方がとても上手い人なんだなという印象を受けた。
個人的にはアンガーマネジメントについてその効果は認めるものの、万能ではないという意見を持っている。
つまり怒りに任せた行動は、どこかでガス欠が来たり、結局はまた不幸(怒り)に逆戻りすることが多いからだ。
しかし、この本を拝読して少し意見が変わった。
やるせない怒りや負の感情は、こうして処理していくしかないじゃない(笑)。特に若い頃なんて。
そしてそれが当時の自分を支えて、少し高いところに連れていくことを(この本が)証明しているのなら、それはもう正当手段なんだと。
■親の存在
この本の中で特に手厚く描かれているわけではないけれど、僕が最も好きなくだりがある。それはお母さんの言葉。
山ちゃんは不自由ない(破天荒でない)自分の生い立ちに芸人としてのコンプレックスを感じていたようだけど、このお母さんが素晴らしい。
恐らく明記はしていないだけでご本人もそう思っているはず。
例えば、
真面目で、考えすぎで、ネガティブで、怒りをコントロールすることに長けていたけどそれはつまり、いつも何かに怒っている証拠なわけで。
しかしそんな自分に悩みつつも前を向ける元となったのは間違いなく、親から受け取っていた「すごいねぇ」という肯定。
これには痺れた。
親という立場から見て、ダメだしなんて百害あって一利なし。褒め言葉は、将来その子を強くして、何度でも蘇らせる。
この本には、そう明言はされていないのだけれど、そう書いてあった。
お母さん凄い。
■そして大人になる
アンガーマネジメントなんてのは放っておけば疎遠になるものなのかもしれない。つまり大人になれば怒りの熱量も、悩みの熱量も、体力と共に劣って来るから。
よく巷で「あの人も丸くなった」なんて言葉をよく聞くけど、恐らくそれは本当で、手に取って扱えるだけの技量と懐の深さを得ているのであって、つまり大人になったのだ。
この本を読んでいると悩みや怒りがあること自体が幸せなことに感じられるから不思議だ。
成功したければこうしよう!みたいな意識高い系のビジネス書とは違って、魂の叫びとその処理方法がとにかく綴られているが、それは前者よりものすごく説得力がある。
つまり若いうちは、いっぱい悩んでいっぱい怒ればいい。なんだかそんな気がしてきた。
そんな山ちゃんもお子さんが産まれて親に。
これからはどんな人としての味が出てくるのか、ますます楽しみです。
本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!
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