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ショートショート 170【Mっ気ランニング】

キレイに整備された遊歩道で軽快に跳ねる。

緊急事態宣言の影響もあるだろうか。色とりどりに着飾ったランナーで溢れている。

天気も良いし空気も良い。最近は湿度が高いため吹き出す汗の量は多めだがそれはそれで体内の悪いものが流れ出てていくようで心地いい。


コロナ禍で在宅ワークが増え、山本は定期的に走ることを自らに課していた。
気が付けば30代も後半。仕事帰りに飲み歩いてきたツケが腹部のあたりに歴史的事実として刻まれている。


その昔アウトレットで買ったランニングシューズがようやく日の目を見て喜んでいる。山本の自戒ともいえるランニングは過去のことを想えば奇跡的に続いていた。


「3kg」

ランニングを始めて1か月。調子の出てきた山本は自分自身の体に3キロの錘(おもり)を付けて走っていた。

いうほどの負荷は感じない。山本はさして気にすることも無く継続していた。



「5kg」

3か月後にはその負荷は5キロに増えていた。
ふうーっと深く息をついた山本は今日もランニングに出る。まだまだ。まだまだだ。さらに自分を追い込む必要があった。



「10kg」

半年後、いよいよ山本はここまで来ていた。5kgの米袋を二つ抱えながら走っていると考えればその負荷は想像に難くないだろう。

山本は足首や膝に不安を抱えながらもランニングを続けていた。



「あなた、大丈夫?」

最近では妻が心配そうに声を掛けてくる。大丈夫だ。


「それ、止めたら?」

妻はそう言って制止を促すがもうやめられなくなっていた。

深夜0時。空腹に任せて即席ラーメンを頬張る山本に向かって苦言を呈す。


ランニングを続けて6か月。一方で不摂生の止まらない山本は10kgも増量していた。




**完**


本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!


走ってますけどあんまり痩せねーっす!

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