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それは一人旅ではない

ずっと前の秋、当時付き合っていた人と熱海に温泉旅行に行った。

あまり計画も立てず、泊まるホテルだけを決めて
のんびりな旅行だった。二人は楽しく過ごしていたと思う。

その次の日、私たちは別れた。
前兆なんて一ミリもなかった。
しかし、旅行の帰り道
千年の恋も冷めるようなことを私がしたため
相手の半年の恋を終わらせてしまった。
具体的なことは自分のために言わないでおく。

その気持ちを彼は「ピュー、パーン」と言った。
ん?どういうこと?と思ったが、
花火が散ったように、気持ちが散ったという。

その表現がこれ以上なく端的でわかりやすかったもんだから、
今もその言葉が夏の花火のように忘れられない。
そういえば一緒に花火も見に言ったことなかった。

そして一夜にして彼とは他人になってしまった。
つい3日前は「来年には籍入れたい」だなんて言っていたほどの人を
豹変させてしまうことも早々ない。
やはり私は相当なことをしたんだと思う。


別れてからしばらくして彼のインスタグラムが上がっていた。
見てみると、旅行の時の写真が上がっていて
気になって見てみると、「弾丸の最高の一人旅」と書いていた。

全部違う。

1ヶ月前から決めていたし、一人でもなければ、あれは最高ではない。

書かれていた文章が全部違うから、思わず笑ってしまった。

こんな嘘まみれの文章を、四葉のクローバーやニコニコマークの絵文字と
ともに書けるその人もどこかに闇を持っているんだろうなと思った。


写真撮らなさすぎた、とも書いていたけど
めちゃくちゃ撮っていたがな!全部私が映っているだけやん!


そう思うと少し悲しくなった。
なぜか別れる前日にたくさん二人の写真を撮っていたから
どんな思いで見ればいいんだと、やりきれない気持ちになった。


それでも散ってしまった花を想う時間はない。


この投稿が嘘だとわかるのは世界に二人しかいないんだなと思うと
それが私たちの最後の共通になった。

この物語はここまでだと私はインスタグラムを閉じた。




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