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創作大賞2024|大阪・駅から徒歩5分・トイレと浴室別45000円の部屋から脱出を試みた話。

低収入、お金の知識ゼロ、一人暮らしの経験ゼロ……。

お金の不安を感じていたわたしが、お金の不安に打ち勝ち、やりたいことを実現するための8年間の試行錯誤をつづります。

辞令は突然に…

2016年、夏。入社2年目で転居を伴う辞令が出た夫(当時彼氏)が、一人暮らしすることになりました。

結婚も視野に入れて貯金もこれからしていこうと言っていた矢先のこと。

プルルルルルルル……

「あ、もしもし。大阪で駐車場込みで45000円くらいの物件を探しているんですけど」

「え!?45000円?そんな物件ないですよ?」

「一応探してみてくれませんか?」

「は、はい」

手取り17万で一人暮らししながら貯金するには家賃を下げるしかないと考えた夫は、不動産屋に無茶振りな電話をしていました。

ダメ元でも言うのはタダやんと言っていた夫もそんな物件見つかるわけないと笑っていた私も、この先起こることは想像もしていませんでした。

-後日-

「いい物件が見つかったんやって!!!」

聞いてみると、

大阪、駅から徒歩5分、トイレと浴室別、2階角部屋。水道代、共益費、駐車場込みで45,000円!!!

「ほらぁ!言ってみるもんやろー!」と大興奮の夫。

いや、誰が聞いても事故物件じゃ……。

こんな好条件の物件大阪にあるわけないと心の中がざわめくわたしの側で、内覧日がすでに決まっていました。

まぁ、実際見れば現実を見てくれるだろうと思っていたんです。

-内覧日当日-

この金額というだけあって、築古なのでキレイではないということと狭さは、想定内。

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ちなみに、冷蔵庫すらキッチンの横に置けない狭さでした。

築古と狭さ以外の気がかりは、床にあった大きなアザのような不気味なシミ。

恐る恐る前に住んでた人がどんな人か聞いてみましたが、普通の大学生の男の子が住んでたということ。

夫に他のアパートも見てもらうよう部屋を見まわしましたが、心がざわつくというふわっとしたことしか言えそうにありません。

「まだ一軒目やしもうちょっと違うところ探したら……?」と口から出かかったところで、

一度こんなところに住むのが憧れだったんだっ!!!

まるで、トトロに出てくるお父さんのようにキラキラした顔でそんなセリフを言うので、言葉を飲み込みました。

本人がこんなに気に入っているなら仕方がない。

まぁ、わたしが住むわけではないし。このざわつきは、勘違いかもしれないし。と言い聞かせることに。

「俺、ここで節約生活がんばるよ!」とキラキラした顔で言う夫に、
「が、が、がんばって…」としか言えなかった。

とんとん拍子でその日に契約まで進みました。

新生活に待ち受けていたのは悪夢の日々

ナガタでの新生活が始まった途端、夫は子どもと接することもないのに溶連菌にかかったり、流行ってもいない9月にインフルエンザに感染したり、腰をいわして歩けなくなったり、謎の災難に襲われました。

やっぱり呪われてるんじゃ…というわたしの中にあった疑念は一層深まっていきました。

ナガタでの暮らしが10か月ほど経ったころ、久しぶりに夫を見た私の母は、驚きが隠せなかったといいます。

「どうしたん!?ちゃんと食べてるか!?!?」

痩せてやつれた夫の姿を前に、突然そのときはやってきたのです。

一緒に住んだら?

結婚するまでは同棲反対の母の発言に、事態の深刻さを感じて、同棲することにしました。

とはいえ、月収17万円で結婚のために貯金もこれからしていこうという段階で、ナガタから引っ越す余裕はありませんでした。

憧れの同棲生活のはずが、呪いの館ナガタに住むことになるなんて。

呪いの館ナガタでの暮らしがスタートして、すぐ強烈にショッキングな出来事が起こりました。

夜中にものすごい数の消防車のサイレンが鳴り響いたのです。

翌朝見ると近所のスーパーが全焼していました。

全身の鳥肌が立ちました。

引っ越してから、ほぼ毎日行っていたスーパー。昨日まで普通に買い物していたのに。

しばらくしたら、スーパーの隣の不動産屋は引っ越しました。

災難はこれだけでは留まりません。

大阪にあの巨大地震がきたのです。

ゴォォォオオオオオ

という音の後すぐに感じた揺れで飛び起きました。

幸いナガタには、壊れて困るものは何もないですが、直感的に思ったのです。

ここにいてはいけない。

そんな気持ちから、なんの気休めにもならないけれど、ずっと気がかりだった床の大きなアザのようなシミをラグで隠しました。

そして、ナガタから脱出することを心に誓ったのです。

そのためにできることは、お金について真剣に考えること。

当時、ひとり暮らしの経験もないから、生活するのにどれくらいお金がかかるのかすらわからないレベル。

夢も希望もないナガタでの暮らしが身の丈にあっているという事実がとにかく悔しかった。

目標は300万。

なにがなんでもナガタから脱出してやる……!

当時、検索して出てきた最短で貯まる貯金の方法を徹底的に実践しました。

予算を決めて袋分け管理(カード払いなし)
夫の収入で生活(17万円)わたしの収入全額貯金(17万円)

同時に始めたのがFP2級の資格の勉強。

ライフプラン表とキャッシュフロー表を作成して、人生100年の見通しも立てました。

来る日も来る日もお金のことで頭がいっぱいでした。

(※現在の家計管理は少しずつアップデートして、キャッシュレス決済、積立投資を取り入れています。また、どんな仕事をどのくらいの収入で働くのかという視点も加わりました。)

お金と向き合って見つけた「お金」と「理想」のバランス

当時思い描いていた理想は、ナガタから脱出すること1択。

ほしいもの、やりたいことが出てきたら、すぐさまわたしの頭の中には、1つの問いが頭に浮かんでいました。

ナガタを脱出するのとどっちが先?

外食、衣服、趣味と、ナガタ脱出を天秤にかける日々を過ごしているわたしに、ナガタは容赦なく呪いをかけてきました。

足が痛痒い……!!!

ある日突然、足がパンパンに腫れて、歩くのすらままならない状態になってしまったのです。

「足が痛すぎて、歩けないので病院に行ってから仕事にいってもいいですか?」

と上司に連絡して翌日病院に駆け込んだ日のことを忘れもしません。

プリンセス天功のような皮膚科の先生が虫めがねのようなもので、わたしの足をじっくり見たあと、ゆっくり落ち着いた声で発した一言。

「水虫ですね……」

自慢ではないですが、わたしの足の指の間はめっちゃ開くし、ものだって自由自在に挟める。

もちろん人生で一度も水虫なんてなったことがない。

ナガタの呪いだと確信しました。

ナガタによって呪いをかけられたのは、わたしの足だけではありません。

カーテンも夫のスーツも白い不吉な模様で埋め尽くされました。

わたしたちは、ナガタで初めて温湿度計の湿度99%を目にすることになったのです。

それはもう毎日が闘いでした。

困難があればあるほど後から幸せになれるはず……!ここで諦めるわけにはいかない。
子どもができても広々と暮らせる夢のマイホームに住むんだ。
安心して浸かれるお風呂に入るんだ。
水切りバスケットをどかさなくてもコンロが使えて野菜を切るスペースがあるキッチンで料理するんだ。
シングルサイズのベッドに1人で広々と寝るんだ。
カーテンや服にカビができる心配をせずに暮らすんだ。

日々の心の中の声

小さな願望は全て捨てて、ナガタから脱出するというたった1つの希望を毎日祈りながら眠りについた1年4か月。

ついに、貯金残高が310万円に!

独身時代に2人で貯めたお金100万円とナガタに暮らし始めてからの1年4か月で310万円貯金することに成功。

310万円の内訳はこんな感じ。

手取り17万円✕16か月+ボーナス19万円✕2回分で310万円。

これで、やっとナガタとおさらばできる……!

わたしたちは無事に4LDKの新築戸建てに引っ越す日を迎えました。

2018年11月2日。ついに念願のナガタから脱出する日。

数々の災難を乗り越えたわたしたちは、ナガタを後にして一度も振り返ることはありませんでした。

色々あったけど、成長した千尋のような気持ちだった。

6年が経って今なら言える。

ナガタ、ありがとう。

心の底からいまの生活に感謝することができるのは、ナガタでの暮らしを経験したからだと胸を張って言えます。

そして、努力は報われることを知った。

ナガタのおかげで最強になった

ナガタでの暮らしでわたしは最強になったんです。

貯めた410万円を握りしめて、頭金と思い描いていた憧れの家具たちにお金を使いました。

2019年3月。FP2級の取得と第一子の誕生。

ナガタ生活で培った貯金のコツで、その後5年間でさらに1000万円の資産形成に成功もしました。

今では、この経験を活かして、FPライフコーチという仕事もスタート。

やりたいことを先送りにしないマネープランを立てるお手伝いをしています。

お金はやりたいことを叶える手段。

目先のお金のために、自分の大切なものを犠牲にしない選択を。

「お金」で「理想」を叶えるのです。

お金にしばられるのではなく、お金をコントロールしていく。

今のわたしは、子どもにおかえりが言える働き方を理想に掲げて、お金と向き合っています。毎日充実と感謝です。

おわりに

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事を読んでいるあなたのお金との向き合い方に少しでも変化があったら嬉しいです。

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