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大好きな○○を離れて手に入れたモノ

このnoteは「書くとともに生きる」ひとたちのためのコミュニティ
『sentence』 のアドベントカレンダー4日目です。


去年の暮れ、職場を離れた。

大好きだった職場を
去年の12月で辞めた。

2020年の1月から
新しい職場でお世話になり
もう1年が経とうとしている。


新しい何かを手に入れるには
「まず手放すことが先」と言うけど
ほんとにその通りで

呼吸だって
まずは吐かないと吸えない。

出入口とはいうけど
入出口とは言わない。

離れたからこそ
見えたもの、手に入れたものが
たしかにある。


だから、今年の振り返りも兼ねて

以前の職場を離れた経緯
そこから考えたこと
そしてこれから目指したいもの

を書こうと思う。


これから立ち止まったときに
振り返るであろう

過去のわたしから
未来のわたしへのメッセージも兼ねて。


<大好きだった場所>

前の職場は
フェアトレード&オーガニック食品の店。
地方にしては、珍しくとんがったお店なので

「○○で働いている」というと
その辺りのことに興味がある人は

「えー、あそこで働いてるの!?」

という、若干羨望の眼差しを含んだ反応をもらえる。


産休と育休も含めると、8年近くお世話になったお店で

置いてある商品も
一緒に働く仲間たちも
ほんとにほんとに大好きで。

今でも、愛用してるものは多いし
(例えばコレ。ないと肌がパリパリする)

kune ローション

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今でも、会ってカフェでお茶したりしながら
近況報告する友人もいる。


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大人になっても、気の合う友人ってできるんだ!そう思えた。

そんなに大好きな場所だったのに
離れたのはなぜか。

いろいろあるけど

ひとつ言うとするなら

ありふれた、そして、ありきたりの
表現ではあるけど

「価値観の違い」

ってことになるんだと思う。


小さな個人店の場合
当たり前だけど
その経営者の考え方が色濃く反映された、経営の仕方になる。

当初はそれに惹かれたし

今までわたしが出会ったことのない視点や考え方は
興味深いことだらけで、新鮮だった。

それに影響されて、自分自身も変わった部分が多い。


*オーガニックという言葉の裏。

*フェアトレードという言葉が存在すること自体が
アンフェアな世の中であること。

*ローカルとグローバルの視点。


大きすぎる問題を前に
自分の無力さ、無知さに
やりきれなくなることもあったけど

それでも、ここに置いてある商品たちは
背景を語れる
ストーリーを背負ったモノたちで溢れてた。


誰が、どこで、どんな風に作ったのかを、伝えることができる。
お客さんと一緒に共有することができる。


何を正しいとするのか、何を信じるのかは人それぞれだけど

少なくとも、自分が「イイ」と感じられたモノを
心に偽りなく、勧められるのは楽しかった。


月に1回のバナナの日に
ボランティアの人たちとフェアトレードのバナナを仕分けしながら
お話をしたこと。


女子会のごとく、キャーキャー言いながら
夜の店で新作のフェアトレードの服の試着会をスタッフ同士でしたこと。


二階の店舗までヒーヒー言いながら
秋冬限定のフェアトレードチョコレートがギッシリ入った段ボール
(多分15キロくらい)を運んだこと。


毎日食べても飽きない、ランチで提供している玄米ご飯が
妊娠中のつわり中は匂いすらしんどかったこと。


書ききれないくらい、たくさんの思い出が詰まっていた場所だった。

だけど、お店は変わった。


<移転後の変化>

きっかけは、移転。

市の区画整理事業の一環で、お店が入ってるビルが取り壊されることになった。

そして、新店舗ができた。


お店は大きくなった。
広くなった。
キレイになった。
オシャレな若い人たちが、たくさん来てくれるようになった。

毎日お祭りみたいだった。
キラキラしていた。


だけど、今まで来てくれていた常連さんの足が
目に見えて、遠のいていた。


あの人も、この人も…
最近来てないな…。


広くなった分、人員は増えたけど、やることはそれ以上に増えた。


レジでついついお客さんと
話し込んでしまうような雰囲気は
なくなった。


やることが多すぎて
気ばかり焦ってしまって
久しぶりに会えたお客さんとも
ゆっくり話せなかった。


毎日、入荷してくる野菜を見て
その場で作るものを決めていた
ライブ感満載だったキッチンのやり方は
きっちりメニューを組み立てていくようになった。


そう、当然の流れ。

今までが変わっていたのだ。
今までが普通じゃなかったのだ。
大きくなったのだから、効率的にやらなきゃいけない。

***

あるとき、常連でもあった友人に聞いたことがある。

最近、あんまりみないね?って。

そしたら、こう言われた。


「悪いけど、あんまり足が向かなくなっちゃって…あのこじんまりした感じが好きだったんだ」

「いつも賑わってるよねー。すごく人気だよねー。でもなんか落ち着かなくて…」

「安く売るみたいなのが、前面に押し出されてる感じして、なんか変わったなぁって思った」


彼女の言葉は
わたしが日々、もやもやと感じていた
感情そのものだった。


大好きだったお店なのに、なんか、変わってきてる…?
違う場所になっている…?


ツイテイケテナイ、ワタシノキモチ。


自分のもやもやの正体が分かったら、スッキリするかと思いきや
余計、苦しくなった。


<お店を紹介する冊子をつくる>

もやもやを抱えて、仕事をする中
こんなプロジェクトが始動した。


毎月のおたよりを冊子形式にして
お店の想いをお客さんに伝えよう。

暮しの手帖をもじって
○○手帖と題して作ってみよう。


わたしはその担当者になった。

イラストやデザインは下手だけど
文章を書くのは好きだったし

毎月のおたよりの誤字脱字や
間違いをチェックする係だったので
面白そうと思ってやることにした。


何について書くか
どのスタッフに書いてもらうか
いつまでに仕上げるか
紙はどんな種類にするか
何部つくるか

考えることはいっぱいだった。
だけど、ものすごく楽しかった。


書いたものには個性がでる。

この人は、こんな風に書くんだ。
あの人は、こんな風に商品のこと思ってるんだ。
字がキレイだな。
まとめるの上手だな。

そんな風に「想いの詰まった言葉たち」を読むのは

お店の原点でもある

「お買い物は投票」という考え方を
お客さんにはもちろんのこと
一緒に働くスタッフたちも理解するための助けになる

そう感じることができたから。

好きを感じる言葉は、温度がある。
温もりがある。


同時に、自分が書くのも楽しかった。

モノの背景を掘り下げていく
見えてたようで見えてなかったこと

そこには物語がある。

書くことが好き
書くことって楽しい

その思えた仕事だった。

<もやもやを抱えた結果>

手帖作りは楽しかった。

でも、ココで働き続けるという
モチベーションを持続するには至らなかった。


それは、手帖作りを通して

経営者が進んでいこうとする道が

わたし自身が望む道とは違うことがわかったからだ。


わたしは、小さくても、常連さんに支えられていた
あのお店の雰囲気が好きだった。


オーガニックの裾野を広げること。

そのために、いわゆるふつうのスーパーのような雰囲気になっていく店を
なかなか受け入れることができなかった。


だけど、古くからのお客さんでもある美容師の方に
髪を切ってもらいながら、相談をした時に

「あのね、もう、違う店なんだよ」

って言われて
やっと、やっと
「そうか」って納得できた。


そして、髪を切ってもらいながら、泣いた。

分かってたはずなのに
ちっとも分かってなかった。

お店は変わった。

わたしは古い思い出にしがみついていただけ。

幻想を追い続けてた。

思い出に浸りすぎてた。

お店は変わった。

わたしはどうする?

結果、わたしが選んだのはお店を辞めることだった。


逃げ、と言うのかもしれない。

わがままなのかもしれない。

だけど、わたしのお店じゃないから
わたしは経営の仕方を変えることはできない。


ただの一従業員であって
責任も何もないから
好き勝手なことが言える。

ただただ甘っちょろい、理想を言ってるだけなのかもしれない。

利益を出し続けていかないと、お給料も出ないし
商品を仕入れることすらできない。

経営者のお二人は、尊敬できる夫婦だし

オーガニックの裾野を広げるという決意はかっこいいと思う。


それでも、わたしはそこに熱意を注ぎきれなかった。

小さくても、顔の見える関係がある
上を上を向いた成長ではなく

身の丈に合った成長といったら
おこがましいのかもしれないけど

働くスタッフがニコニコと意見を言い合える
そんな場所が心地よかった。


そして、大好きだったからこそ
嘘をついたまま働きたくなかった。

これ以上、嫌いになりたくなかった。

好きなままで、さよならしたかった。

間違いなく、わたしという人格を作ってくれた「あの場所」を嫌いになんかなりたくなかった。


だから、今のお店が目指す方向に賛同できないんです。

ごめんなさい。

そう言って離れたのです。

感謝の言葉を手紙にして。

<これから目指していきたいもの>

手帖作りを通して発見した感情。

新しく始まった慌ただしい日々の中で
”それ” はふと、顔を出しては引っ込んでいく。

書くって楽しい。
書くを仕事にしたい。

ひょこんと、ときおり顔をだす感情は

日に日に登場回数が多くなり

その想いは日に日に高まっていった。


書くことを、自分のもう一つの軸足にしたい。

書く人になりたい。


でも、仕事としてやるには、経験がなさすぎる。

だから、まずは自分でやってみよう。

そう思って
イイトコさがしマガジン
と、名付けてはじめてみた。


わたし自身が思う
イイモノ、イイヒト、イイトコを紹介するマガジン。

これを通して、小さな、だけど強い想いを持ったお店や人を紹介したい。
できることなら、応援したい。

初めは、自分の好きな本やお店について
自分の一方通行な想いを書いていたのだけど、

誰かもわからない、何者でもない
わたし個人の感想や想いを書いてもなぁ…と思って。
(食べログみたいなレビュー書いてもなぁーって)

そう思って
先月、初めてインタビューをした。


誰かの言葉を咀嚼する。
全部は書き留められないから
切り取る。

わたしの言葉で書き連ねていくけれど
わたしの言葉ではない。

はじめてのインタビューは
新鮮で、楽しくて、
でも同時に責任と怖さも感じた。

だけど、やってよかったし、
次もやってみようと思ってる。

「やらない後悔よりやる後悔」
がモットーのわたし。

やらなきゃ、見えない、感じられないものばかり。


大好きな職場を離れて、わたしが手に入れたもの。

それは、自分の「書く」を「核」にしていこうという決意。

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