その病気、あなたの腸内細菌のせいかも【理研プレスリリース】
その病気、あなたの腸内細菌のせいで発症するかも。
理化学研究所(以下、理研)により、「ある腸内細菌」が多発性硬化症を発症させたり、病気の進行を促したりするしくみが発見された。
近年、腸内細菌は健康の要として注目されており、「腸活」「美腸」などという言葉もよく聞くようになった。
もしかすると、今これを読んでいるあなたも、腸を起点とした健康法について興味を持っているかもしれない。
過去に腸内細菌を研究していた経験のある私が、理研の小難しい発表を噛み砕いてお伝えできたらと思いこの記事を綴る。
多発性硬化症とは
多発性硬化症とは、神経の絶縁体が壊れる病気だ。
脳や脊髄のあちこちが硬くなる病変が見られるため、多発性硬化症という名前がついた。
症状としては、
・視力障害(視界がぼやける、かすむ、中央視界の視力が低下)
・運動障害(歩行やバランス感覚の乱れ、めまい)
・感覚障害(顔や手足のチクチク感、しびれ、かゆみ、ほてり)
・排尿障害(便秘、頻尿、尿失禁)
・認知症
などと様々である。
主に若い人がかかる病気で、男性よりも女性に多い傾向がある。
多発性硬化症の原因
実のところ、多発性硬化症の原因はまだ十分に解明されていない。
しかし現時点で、多発性硬化症は自己免疫疾患であると考えられている。
自己免疫とは、自分で自分を攻撃してしまう免疫反応だ。
免疫自体は、ウイルスや細菌などの外敵から身を守るために必要な生体反応である。
通常は外敵を攻撃するのだが、自分自身を敵だと誤認して攻撃してしまうこともある。これが自己免疫反応である。
この自己免疫反応により、脳や脊髄といった中枢神経が炎症を起こすことで、多発性硬化症が引き起こされるとされている。
多発性硬化症と腸内細菌の関係
腸内細菌は、私たちに健康をもたらしてくれるものも多い。
悪玉菌の増殖を抑えたり、腸の運動を活発化させたり、食中毒菌などの感染を防いでくれたり。
しかし一方で、自己免疫反応を促進してしまう腸内細菌がいることが理研の研究により発見された。
理研の発表
理研のプレスリリースによると、腸内細菌の一種である乳酸菌「ロイテリ」が、多発性硬化症の発症や促進に関わっているとのことだ。
腸内では、免疫反応を担う細胞たち(T細胞)が多く作り出されている。これら自体には悪性はなく、外敵から守ってくれる頼もしい存在。
T細胞の中には、神経の絶縁体(ミエリン)にくっつく特性を持つものもある。
ロイテリ菌が作る小さいタンパク質(ペプチド)は、ミエリンにくっつく特性のT細胞と反応し、この種のT細胞がたくさん産生されるようになる。
さらに、別の菌(OTU0002)が、産生されたT細胞に作用して病原性をアップさせる。
こうして、ミエリンにくっつく&病原性をもつT細胞ができあがり。こいつが神経の絶縁体を壊すことで、多発性硬化症が発症・促進されてしまうとのことだ。
(2020.8.27 理研プレスリリースより)
まとめと私見
この理研プレスリリースでは、2種類の腸内細菌が多発性硬化症に関係すると判明したとのことだった。
この発見により、腸内細菌をターゲットとした疾病研究や、予防・治療方法の開発に繋がることが期待されていた。
私個人的には、腸内細菌と疾病の研究はぜひ発展していってほしい分野だ。
また、理研の発表は、今後に繋がる素晴らしい研究だと思う(そうじゃなきゃここで書こうと思わないしね)。
あと、自分も過去に多発性硬化症の症状っぽいのがあった時期があってちょっと怖い笑
一点心配なのは、メディアの餌食にならないかということだ。
「乳酸菌が病気を促す!」みたいなキャッチーなタイトルつけて誤認を促しそう。実際のところ、乳酸菌のロイテリよりも、OTU0002菌の方が悪性な動きしてるよね。
正しい情報を、生のデータを、ちゃんと見極められる人が増えますように。
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