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🌙小説 月と眼鏡〖2〗


〖 眼鏡とオムライス 〗


眼鏡がいた。2人。
仕事終わりの飲み会の席。所謂合コンだ。


当時はお酒が大好きで、休みのたびに街へ繰り出しては沢山の飲み会に参加していた。
サラリーマンや公務員、
アパレル店員に大学生、、、
女性無料の相席居酒屋は常連であったし、
行きつけのラウンジや馴染みのバーがあった。


21の歳から働き始めた私たちはまだまだ遊びたい盛りで、金曜日の夜は毎週遊び惚けていた。
そんな時期の飲み会であったから、
出会いが欲しいというよりも楽しい場や雰囲気が好きな私は、それほど”男女のお付き合い”に価値を見出していなかった。そもそも恋愛経験が浅かったというのもあるが。


19:00。
駅前付近の少し小洒落たご飯屋さん。
到着して席に着く頃には男性陣はみな鎮座していた。さすが銀行員。お金だけでなく時間にも正確なのか…なんて考えたりして。


「遅れてすみません!」と隣で気合十分の彼女が言うので、慌てて私も一緒に
「すみません。」と一礼。(遅れてはいないが)
ちなみに女子メンバーは学生時代の気心知れた友人と、初めましてのクレープ屋さんの女の子。
今回は4-4らしい。

どこの誰だかも知らない子と一緒に合コン、
当時はよくあった。


自己紹介や他愛のない話が始まっていたが、
仕事終わりでお腹がぺっこぺこな私はみんなの話もどこか上の空で聞いていた。
横の彼女を見ると、今回ははずれであったらしい。あれだけお喋りの彼女の口数が減るのは、
"つまらない"という証拠だ。
まあ確かに、ぱっと見の初対面の印象は4人中4人、ぱっとしないだろう。(失礼極まりない)

私たちのテーブルには眼鏡が2人。
太フレームの黒縁眼鏡'sだ。
くるくる天然パーマの眼鏡くんが頑張って話題を振ってくれているが...少し挙動が気になる。
だんまり堅物眼鏡くんは両腕を組み静観している。(ちょっと怖い)

隣の席は盛り上がっているのに私たちの席は人選ミスと言うかなんというか。私もお喋りな方ではないので、マシンガントークの彼女が試合終了してしまえばお葬式ですか??というような雰囲気に。通路を挟んだ隣からは笑い声と盛り上がりが直に伝わるので一層そんな気がしてきた。通路を挟むというこの席がそもそもミスなのかもしれない。


くるくる眼鏡くんが話題を振ろうとしてくれているが、慣れていないのが伝わる。
緊張しているのだろうか・・・
申し訳ない・・・

と思ったものの、お腹がペコペコな私はとりあえず目の前の食にありつくことにした。
腹が減っては何とやら、と言うだろう。


この人たちともどうせ今日限りだ。
私たちに当たって残念だろうがこちらも残念だ。
早く終わらないかな・・・なんて考えていた時、だんまり堅物眼鏡の方が口を開いた。



「オムライスたべる?」


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