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自転車ピラピラなんじゃらホイ?昭和のピラピラの謎を追え!

世田谷クロニクル『子供No.4』 1965年(昭和39年)の中で気になるモノを発見してしまった。

女の子がカメラに向かって三輪車を走らせてくる。映像の中で繰り返し登場する三輪車。ハンドルに長く垂れさがってついているピラピラした飾りが気になってしまった。なんという名称なのだろう。

三輪車のハンドルにピラピラした飾りが!

ちなみにこれはオシャレなのだろうか? 
このピラピラはどこかにひっかかったりして危険ではないのか? なんて疑問もわいてくる。

そして、映像後半になると、この三輪車のピラピラ飾りは消えていた。

ハンドルにピラピラはついていない

邪魔になって取ったのだろうか、劣化して取れてしまったのだろうか。

『子供No.4』のフィルムの続編である『子供No.5』では、女の子は成長し、三輪車から子供用の補助輪自転車へ乗り換えている。でも、よく見ると補助輪自転車のハンドルには再び、ピラピラ飾りがついていた!

世田谷クロニクル「子供No.5」
成長した女の子の補助輪付き自転車にもピラピラが!

当時、子ども用自転車のハドルにピラピラをつけるのは、流行っていたのだろうか。

謎だな~

◆調べてみた!

現在も、ハンドルにピラピラ飾りのついている子供用自転車は売られているのだろうか。疑問に思ったので、まずは、ホームセンターの子供用の自転車売り場へ見に行ってみることにした。

色とりどりのおしゃれな子供用自転車。可愛い自転車はたくさん売られていたけれど、ピラピラ付き自転車はなかった。

次にネットショップを調べてみたら、ピラピラの付いている自転車は売られており、ピラピラのパーツも単体で売られていた。子供用自転車のピラピラ飾りは健在のようだ。

ネットショップを見てみると、ピラピラ飾りの呼び方は、「自転車吹き流し」「自転車リボン」「タッセル」などあり、さまざまだった。決まった名称はないのだろう。わたしのように、「自転車のピラピラ」と呼んでいるひともいた。

スクーターリボンズとも呼ばれている

では、いつ頃、この自転車のピラピラ飾りは流行ったのだろう。ルーツはどこなのか、と思って調べていたら、友人から「アメリカの映画に出てきたのを見たことがある。アメリカの文化を真似たのでは?」というヒントをもらった。確かに、アメリカ映画で見たことがあるような気がする。

アメリカ映画で子供が自転車に乗ってそうな映画と言えば、『ET』(1982年公開)や『グーニーズ』(1985年公開)が思い浮んだので期待してチェックしてみた。しかし、子供たちの乗る自転車のハンドルにピラピラはなかった。

なかなか見つからないな、と思っていたとき、マコーレ・カルキンが出ている映画『マイガール』にたどり着いた。ネットのスチール写真を見てみたら、なんと主役の女の子の自転車のハンドルにピラピラがついている!

映画「マイガール」のピラピラはブルー

公開は1992年だが、物語は1972年の話である。だとしたら、総合的に考えて、1965年~1970年代(日本だと昭和40年〜50年代)に流行り、1980年代に入ると下火になったのか、と勝手に推測。

映画「マイガール」は、見事に1972年の世界を創り出せていると映像美術が評価されている。隅々まで観るこの眼差しを持って映画「マイガール」を再び観てみたくなった。

今回、色々と調べていて感じたのは、8ミリで撮影したものの中には、当時は見慣れたものでも今となっては珍しいものがたまたま映り込んでいたりするんだな、ということ。一方で、フィクションである映画は、描かれる物語の時代考証をして、衣装や髪型、持ち物や乗り物を当時のモノで再現する。
ふたつの映像の成り立ちは全く違うけれど、このふたつに共通しているのは、映像の細部を注意深く見ることで、本筋とは別の、面白い発見ができるというところだ。

◆「じぶん」を参照してみた!

わたしの子供の頃は、どんな自転車に乗っていたのだろうか。そんな好奇心で、子どもの頃の写真を探してみたら、大笑いしてしまった。
なんと、なんと、わたしの乗っていた三輪車のハンドルにもピラピラがついていた! 

少し豪華さに欠けるピラピラ

まさに灯台下暗し。子供だったわたしは、被写体としての記憶は全くない。『子供No.4』の被写体の女の子も同じように8ミリフィルムが回されていた当時のことは、しっかりと覚えていないだろう。残された記録からじぶんの過去と出会い直すのは感慨深かった。

わたしの三輪車の写真は昭和50年代と思われる。間違いなく、この時代、自転車のピラピラは流行っていたようだ。なお、この写真はお正月の写真のようで、わたしはウールの着物の上にセーターを着ている。着物を着て三輪車に乗っている!これこそ今の感覚で言うと、かなり危ないと言える。

三輪車がやたら錆びているのも気になってしまった。こんなに数年で錆びてしまうものなのだろうか。もしかしたら誰かからもらったお古の三輪車の可能性もある。

母に写真に写っている三輪車について聞いてみたら「記憶にございません」とにべもなく言われてしまった。母が結婚当初からつけている家計簿を探しても三輪車購入の記録は見つからなかった(母の家計簿は空白も多いからあてにならないけど)

そのくせ、わたしの写真を見て「昭和のむかしの子の顔してるね、こんな顔をしていたんだね」としみじみ言われた。昭和のむかしの子の顔で悪かったわね、と思いつつ、母も久しぶりに家族アルバムを見て子供のわたしと出会い直してるのか、と思うとそれはそれで不思議な気がした。

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