ソナチネ・・・ダイ・ハードのようなアクション作品だった。
1993年公開
映像と音楽による「緊張と緩和」が体感できる作品。
公開当時、国内では短期間で終わり興行成績も伸びなかった。しかしカンヌ国際映画祭「ある視点」部門での高評価により特にヨーロッパ、映画発祥地フランスでは北野映画マニア「キタニスト」が生まれた。評価は国内へ逆輸入する。浜辺で無邪気に遊んでいると思えば密室の銃撃戦。殺し屋(南方師匠)の不気味さ、灰色かがった「青」が特徴的。 ファンの間では「キタノブルーの完成形」、「北野映画の最高傑作」と言われている。
🔫ソナチネは「ダイ・ハード」のようなアクション作品だった。
この作品のプロデューサーであった奥山和由氏がインタビューにてこう明かしていた。監督が「ダイ・ハード」みたいな作品をやりたいと言ってきたんので、本当にやりたいの?と聞くと最後はビルからマシンガンで銃撃戦して人が落ちたりと・・製作費は5億円。
しかし、「家を建てたので6千万かりました・・」「道を作ったので8千万円・・・」と製作費がかさみ、松竹側は監督を訴える‥とおおモメになった。これ以上の予算はかけられないのでアート系に移行した。
2人の俳優人生を変えたソナチネ出演のエピソード
〇大杉漣のエピソード「数秒で決まった人生転換劇」
今作品では北野組の常連となる大杉漣が初出演。
出演を巡り、オーディションからドラマのような話があった。大杉がオーディションへ向かうとすでに終わっている雰囲気を感じ、片付けをするスタッフに「オーディションは何時頃からでしたか?」と聞き「1時間前からです!」との返答。開始時間を約1時間、間違えていた事を知る。
北野監督の姿を見て、近づくがほんの数秒の認識しただけで「もう結構です」と言われ、オーディションが終了した。帰り道「絶対落ちた!」と思った。しかし数日後マネージャーから「合格」ですと聞き、嘘だろう!と半信半疑の状態だった。現場に行くとほぼセリフの無い役で「そこに立っていて」といわれ劇団「転形劇場」で沈黙劇を経験した大杉も困惑していた。事務所の電話で債務者を恫喝するシーンはセリフが無く、記録から渡された紙には「電話番」としか書いていなく、監督からは「セリフはアドリブで」で演じた。この演技を北野監督がとても気に入り、役を変え、次の撮影場所の沖縄へ行くことになる。この作品をきっかけに映画、テレビドラマなどで大活躍をする。大杉漣氏を起用した北野監督は「成功」と後日語っていた。
大杉連のほか、寺島進、渡辺哲、津田寛治、勝村政信の名バイプレーヤーが出演する。
〇津田寛治のエピソード「ママの激怒がきっかけ」
もう一人、ドラマのようなエピソードを持つ津田寛治もソナチネで北野監督作品に参加。大杉と違い津田はオーディションも受けていないにも関わらず映画出演をする珍しい経緯。津田は無類の映画好きで映画監督になることが夢だった。息子が大変な映画監督への道のりを暗示して親からは「映画監督は東大京大でのどちらかを卒業しないと無理」と聞かされて俳優になることを決意する。上京し、映画の録音スタジオ近くにある喫茶店「カフェテラスアオイ現:閉業」のウェイターをしながら、自身のプロフィールをオフィス北野へ持ち込むなど俳優デビューを目指していたが、チャンスがつかめない状態だった。いつものようにウェイターをしていると北野監督が来店し、持参しているプロフィールを監督に渡し「わかりました」と返答があった。渡せただけで成功したと感激していた。プロフィールを渡してから1年後くらいに再び監督が来店をする。津田を見かけた監督が「あんちゃん、まだ俳優はやってのか~頑張ってなぁ」と言われ感激した瞬間にさとみママが突然、監督のもとへ行き、ママ「監督!ひどいじゃないですか!うちの子(津田)、1年間もねぇ、一生懸命、監督からお声がかかるの待ってたんですよ!なんでオーディションすら呼んでくれないんですか?オーディション終わってるらしいじゃないですか!あしたからクランクインだって(北野組のスタッフ)に聞きましたよ!」とまるでわが子の事のように北野監督へ猛抗議をした。ママさんの勢いに押された北野監督は困惑しながらも「え?え?ごめんね、知らなかった」と謝罪をするも、さとみママの怒りは収まらず炎上した。「寛ちゃん(津田)もう!いいわよ~!(監督の作品へ)もう出なくって!」とものすごい剣幕だった。当の津田は「終わった」と心の中でつぶやく。事のなりゆきを感じた北野監督はここで江戸っ子らしい粋な計らいをする。「あんちゃん(津田)ちょっとおいで。出番だから」と津田を呼つける、津田本人は「オーダー(注文)と思ってたいた」監督が一緒にいる映画のスタッフへ北野「このあんちゃんがさ、オレがよく行ってる喫茶店でウエイターやってんの。だけど、こんな(ツンツン)頭して派手な服着てるからおいらが“おめー、ウエイターだったらウエイターらしい格好して働けよ~この野郎~言って。このあんちゃん、これぐらいのアップで“すんません”って謝るの。これ、ひとつ増やすから」と急きょ設定した追加シーンを説明。津田の北野映画デビューがその場で決まった。
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