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142 医師が覗き見る「日本社会のイマ」

トランプ政権以来、世界の分断が深まった。当初は米中摩擦に始まった。現在はウクライナ戦争によりそれは鮮明となった。グローバル経済からブロック経済に推移していることが分かる。
この様な状況が将来も続くと考えがちだが、それは完全適応型期待形成かもしれない。ここで温故知新という事で過去のデータの学習をすると、世界大戦が起こらない限り、ブロック経済は深化するということになりそうだ。しかし、その様な、バックワード・ルッキング・モデルと言われる後ろ向きな考えから解き放されて、合理的期待形成(フォワード・ルッキング・モデル)をしたい。
そんな訳で、周りをキョロキョロ見回しながら、将来を見据えた、合理的に近づきたい。今回はキョロキョロ覗き見る。

日本は防衛力の強化を図る方針だ。強国の通貨は強くなるはずなので、経済にはプラス効果となるかも知れない。ここ10ヶ月の円安からの貿易赤字はそろそろ尻に火がついてくるかもしれない。経常収支黒字国と楽観視できなくなるかも知れない。
しかし、防衛力強化は経済面から見るのは片手落ちで安全保障の視点はより重要になる。
その財源論の手続き上の問題で揉めているわけだが、自民党の多くは、分断化を睨んで、将来の安全保障に備えるべきだという意見を持っているようだ。台湾有事が数年後に起こると日米で暗黙の了解が出来ているという噂もある。

エネルギー政策では常に他国に大きく依存しなくてはならないのは不利に働く。原発再稼働はやむおえない選択肢という意見は国民にも広がり始めた。また、一気にクリーンエネルギーの転換を模索するのは無理であるという認識が世界中に広まってきた。

現状の人口動態を考えると、将来のGDPの低下はやむおえないのいうことだが、そう考えると、インドネシアなど人口の多い国が日本のGDPを凌駕してゆくというストーリーとなる。受け入れ難い訳で、日本は生産性を上げ、経済の効率化に真剣に取り組まなくてはならない。現在は踊り場に差し掛かっているのだろう。そこではデジタル改革は喫緊の課題となるのであるが、同時にそれを妨げている、個人情報や知的所有権につき改めて行く必要がある。ケースバイケースでこの制限を撤廃できる様なきめ細かい議論が待たれる。例えば、教育の場では知的所有権は緩和されても良いはずだ。これらは政治家の仕事であるのだが、自覚が乏しいことには失望感を誘う。

医療に関しても『日本の皆保険制度は世界1素晴らしい』という概念は冷静に見直す必要が出てきた。コロナ禍は世界の健康保険制度の謂わば競争であったが、この制度は国民性とマリアージュしているようだ。日本の制度はヨーロッパや米国では多分、受け入れられないと思う。自国の医療制度は日本より効率的に機能していると考えている国の方が多いことにも気付かされた。医療制度に関しては、日本の常識は世界の常識ではない。世界各国の常識は日本の常識ではない。そんな事を見せつけられたコロナ禍でもあった。医療制度は日本医師会の言うような流れは捻じ曲げられ、見直されるのかも知れない。

世界中はインフレショックに見舞われている。
インフレとの戦いで、パウエル議長は今日未明のFOMC結果発表後の記者会見で、「なお幾分か道のりは残っている」と発言。今回の利上げでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは4.25-4.5%となった。政策金利は来年末に5.1%、24年に4.1%に低下との見通しが示された。長い道のりである。
パウエル議長は、来年1月31日-2月1日に開かれる次回FOMC会合での利上げ幅は今後入手するデータ次第だと発言。利上げペースについては0.5ポイント継続と0.25ポイントへの減速両方の可能性を残すとともに、FOMCが来年に政策を反転させるとの市場の見方を退けた。
しかし、どこまで市場はFRBを信用するのか?コロナショック当初の失敗の轍を踏みたくないのであろう、強烈な政策金利引き上げを進めて、FF金利は現在では最大4.5%になっている。だが、同時進行している量的引き締め策(QT)の効果も加味すると、市中金利は6%以上になっているというのが常識の様である。さらに政策金利を上げてゆくなら、市中金利を考えると、深刻なリセションに陥りかねない。インフレの分析は難しい様で、それを見誤まり、実際はそれ程のインフレでもないのに政策金利を上げ続けると見えてくる世界がある。そうなると、デフレスパイラルに陥る事も考えなくてはならないはずだ。これはインフレより回復することが難しい現象である事は日本が陥った過去から学べるのだ。
インフレの分析がキーになって来ている。これは賃金インフレに焦点が絞られたという事なのだろうが、これはFRBの金融政策では解決出来る問題ではなさそうだ。働きたくない人を働かせる力はFRBには無いから。アメリカ人はぬるま湯に浸かり、働かなくなったという事だ。このぬるま湯をもたらした張本人はコロナだと私は思っている。
このままでFRBが政策を頑なに変更しないとしたら、民間から無視され、信用されなくなるのかもしれない。本筋は政策金利を上げることより、バイデン政権に働きかけをするべきでは無いだろうか?
米国政府とFRBは視野をもっと広げるべきでは無いだろうか。米国の過剰なインフレ政策が深刻な世界不況をもたらす事を忘れてはならない。

ロシアや中国などの専制国家はグローバリズムの恩恵で、経済活動を活性化してきた。ところが、ブロック化が進んでいる現状では、そんな簡単には行きそうもない。そんなに甘いもんじゃないという事なのだろう。民主主義国家は世界ではまだ少数派であろう。それでは急速な政策変更が難しく、経済復興が喫緊の課題である新興国には向いていないのかもしれない。しかし、長い目で見ると、専制国家は淘汰されてゆくはずだ。ネット上での情報が溢れている訳で、その辺から民主主義は広がりを見せてゆくのだろう。民主化の波は止められないだろう。

これらを合理的期待形成とは言えないのかも知れないし、もっと取り上げろという意見もあるはず。今後情報を集めて、固めてゆきたいものだ。

コロナ禍は人間に色々と試練を与えている。

コロナに密着して行きます。

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