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潮風で錆びた煙突を背景に 湾岸線が北へ南へと流れてゆく 運河を吹き抜けるつよい風が雲の背中…
街の音は遠く不明瞭で わたしは耳から髪の毛までが重く マリアナのような深い海溝に沈んでいる…
松の林の合間を縫って 花売りが花の市場をひらく 鮮やかな南国の赤から 深く落ち着いた緑まで…
詩を書いたころ 辺りは真っ暗だった 窓から見える世界は限定的で蒼白く 降り積もる雪も花びら…
たとえば想像のなかの雪 もしくは護岸に打ち付けて飛沫をあげる波のような 柔らかいものに包ま…
夜が好きだった 夜は自分に妙に馴染んで優しくあり ただそこに在って静かに受け容れてくれた …
ずぶ濡れになった白い化合繊のシャツと 青い血管のすっと通る絹のような肌を 残照は包み込むように洗い 寂れた改札の前にぽつねんと立つ少年の 買い損ねた切符のような感傷を 深く色めく風はひと月先へとさらって行く とおくで揺らめく蜃気楼は すっかりと色褪せておぼろげ かつてはぺトリコールの心地良い 鈴のような夏がありました
オリオンの渦状腕に抱かれて きみは眠っている シリウスが地平に隠され 代わりにベガが昇る季…
シリウスが綺麗だね ちらちらと輝いて工業地帯のよう 日本から観測できる地球は夜だけど それ…
最寄駅の改札を抜けてから玄関までの道のりを 昨日とおなじ歩数で帰る その繰り返しをあるい…
うつくしくも たよりなくもある とかく比類のないそのあかりは 芯にちかづくほどに濃く揺ら…
土産の弁当箱を手に提げて新幹線を待っている いちど発てば帰る足もないし 懐かしんで帰る故…
暗順応した瞳で ベッドの縁をぼうっと眺めている 火山のように脈を打つ心臓とひとりきりで相対…
坂道をめいっぱいの速度で駆け下り 両手でつよくブレーキを握りしめてみる 前輪は動力の減衰を一手に引き受けて そこかしこに大きな音と細い轍を残す あとにはスピードの残像がいつまでも残って 坂道の下までが大きな空白となっている I apriciate your brilliant photo, Greyerbaby. https://pixabay.com/ja/users/greyerbaby-2323/